出入り口を塞ぐ氷の確認
「ゆっくり、そうゆっくりね。うーん、やっぱり穴その物が凍り付いて塞がれちゃっているね」
「ぽっかり空いていたはずなのに、おかしいのだわ」
リーバーに少しずつ降下してもらい、隔離結界の出入り口……というか、凍り付いている場所を観察。
ワイバーン達を囲んでいる結果に阻まれて、地面の氷から発生している白い煙が押しのけられて、よく見えるようになっていた。
「穴が開いているだけだったら、地面ならまだしも穴が塞がる程凍る事なんてないはずなのになぁ」
「リクの魔法のイメージが失敗したから、というわけでもないのだわ。ここ以外は凍っていないのだわ」
分厚い氷が塞いでしまっている穴を見て、エルサと話しながら考える。
ブリザードの魔法は、空から冷気を降り注がせて地面などの物質に触れる事で、凍てつかせる魔法……というようにイメージした。
隔離結界の出入り口以外で地面意外に凍っている部分がないので、失敗という事はないと思う。
もしそうだったら、空気中の他の部分も凍っていたり、そこら中に漂っていたりしているはずだから。
「隔離結界の方は、何も影響していなみたいなのだわ」
「そりゃね、空間をずらすようになっているから……穴を開けて外と通じたから、内部はもう戻っているはずだけど、その性質の結界自体はまだそのままだよ」
まぁ、その隔離結界の性質も半分以上は狙ってやったわけじゃないんだけど。
とにかく、外部からの影響を遮断しようと考えていただけだし、あの時細かい事を考えながら結界を作るなんて無理だったから。
ドーム状の結界は、近付いて見ても表面にさっき俺が使った魔法の影響は一切見られない。
凍り付いているわけでもなし、それこそ赤い光による影響すらない。
ただモニカさん達が開けたという穴の部分だけ、ぴっちりと隙間を埋めるように凍り付いている。
どうしてだろう……?
「うーん、考えてもわからないから、とりあえず割って中に入るしかないよね。中にいる皆の様子も見たいし、確かめたり報せなきゃいけない事がある」
「……そうするしかないのだわ」
どうしてそうなっているのか、見ていてもエルサと考えてもわからないし、観察しているだけだと寒いだけだからとにかく中に入るしかない。
考えるのは後回しにする事にした。
「リーバー、ゆっくりあの凍っている穴に近付いて。結界を張り直すから、また寒くなるけど我慢して欲しい」
「ガァ~」
リーバーにお願いして、凍り付いている穴に少しずつ近付く。
その際、ワイバーン達を包んでいる結界を一旦解除し、形を変えて再度発動。
隔離結界のドームの表面から、俺達やワイバーン達を包むように……すぐに張り替えないと内側に白い煙が入って来るし、冷気も押し寄せるから迅速に……。
「っ……」
「リク、だわ?」
「いや、なんでもないよ。よし、結界!」
イメージに走るノイズと、微かな痛み。
少しだけ顔をしかめた俺に気付いたらしいエルサから、声をかけられるけどなんでもない風を装って彩度結界を発動。
うん、イメージ通りの結界ができたようだ。
結界はコの字のような形で氷で塞がれている隔離結界の出入り口に対して、口を開けている。
一瞬だけとはいえ結界を解除した事で、凍てついた地面の冷気からの寒さが強くなり、さらに近くに出入口に張られた氷があるためか、移動中よりも温度が下がっているけど、仕方ない。
それにしても、さっきから魔法を使う時に生じるノイズのような物はなんだろう?
何かが干渉しているというか、負の感情とかではないとなんとなくわかるんだけど。
赤熱した地面の熱から守るため、植物を囲む結界を張る時から……というより意識が復活してから、魔法を使う時に必ずそのノイズが走って痛みを伴っていた。
その時点で、ある意味負の感情の影響のような気がするけど、そうではないと感覚的にわかる。
ブリザードの魔法の時は、深く集中していたから痛みやノイズはあまり気にならなかったけど……それでも同じ事があったのは間違いない。
エルサも含めて皆には、悟られないように気を付けているけど。
……すぐ近くにある隔離結界の出入り口を塞ぐ氷のように、わからないんだから今は考えても仕方ないんだろう、まずはやらなきゃいけない事をだ。
「リーバー、見えないけど結界を張って地面からは離れているから、大丈夫だよ」
「ガ、ガァ……ガァゥ!」
「うん、立っていられるよ。まぁ、さすがに危ないからできるだけ衝撃を与えないでね」
改めて張った結界にリーバー達ワイバーンに着陸してもらい、その背中から降りる。
結界下部は地面から数十センチ離して平行に作ってあるので、その上に立っても氷の上に直接立つのとは違うので大丈夫だ。
リーバーもそうだけど、他のワイバーン達も俺の言葉を聞いて恐る恐る着陸していき、背中からモニカさん達も降りていた。
寝ているユノ達は、ワイバーンの背中にから落ちないよう括り付けているようだけど。
「なんだか、不思議な感じね。土の上とは違うのね……」
結界の上に立つモニカさん達は、少し戸惑うようにしながら歩いて氷の前に立つ俺の所へと来る。
俺はヒュドラーとの戦闘中、咄嗟に結界を足場にしていたから何度も上に立った事があるけど、初めてだと足から伝わる感覚が少し不思議なのかもしれない。
地面を踏みしめるような柔らかさはなく、しかも数十センチとはいえ高い位置……そのうえ結界は透明で目に見えないから、傍から見れば空中に立っているように見える。
「結界の方はすぐになれるけど、とにかく今はこの氷をやっつけないとね。中に入れないし……」
「そうね。まぁ、リクさんの結界ならこれまで随分と助けてもらっているし、不思議な感覚なだけで問題ないわ」
そう言って頷くモニカさんには、俺の不安は心の奥底にしまって口に出さないようにしておこう。
結界が丈夫なのは間違いないけど、ワイバーン五体にモニカさん達が乗っていると、結界を維持する魔力を伝って軋むような感覚がさっきからある。
もしかすると、ちょっと強めに衝撃を与えたり暴れたら、あっさり割れるかもしれない、という不安。
こんな事なら多重結界にしておけばと思ったけど、今更考えても遅い。
イメージにノイズが走るようになって、魔法の発動が少し遅れる感じもするし、やるなら上部の空気穴から魔力を通して……とさらに時間がかかってしまう。
内側に張るには、もう皆結界に立っているからもう一度リーバー達に飛んでもらわなきゃいけないし……それなら、氷を割って中に入ってしまった方が早そうだからね。
「んー、かなり硬いけど、割れない程じゃないかな?」
「……これを割れない程と言えるリクさんが少し怖いわ。岩どころか金属のような硬さよ? 削るとかならともかく、私には割れそうにないわね」
「次善の一手で、削れるくらいだと思うのだわ。全力ならともかく、リク以外は割るのは難しそうなのだわ」
コンコンと、冷たく出入り口を塞いでいる氷を軽く叩きながら観察。
絶対零度、という言葉が頭に浮かぶくらい硬い氷……さすがに本当に絶対零度の氷というわけじゃないけど、あらゆるものが凝縮して固まっているような硬さ。
触れてみた感じ、次善の一手でならエルサの言う通り削れそうだけど、割るのは難しそうだね――。
無理矢理割るのはリク以外だと難しそうな程分厚く硬いようです。
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