そのまま植物を消したら危険
「……魔力の質が、ほんの少しだけいつものリクと違うのだわ。けど、体も中身も間違いなくリクなのだわ。どうしてなのだわ?」
「んー、多分それは負の感情も取り込んだから、かなぁ?」
自分へと植物の力を誘導し、取り込みながら俺の顔を見上げて尋ねるエルサに答えた。
鼻の先から、鼻水が垂れているのはご愛嬌……ってまぁ、俺の服に擦り付けて拭き取られるんだけど。
「あれも取り込んだのだわ!? 全部、リクの体から抜け出たんじゃないのだわ!?」
「まぁそこはね、なんというか……」
俺が体を取り戻すための仮定で、モニカさん達の言葉のおかげで俺自身の意識と負の感情の意識のバランスが、俺の意識へと偏った。
その際、大半の負の感情が一つの体に収まりきらず、出て行って霧散したみたいなんだけど……なんというか、残っていたのもあったわけで。
要は、空いていた部分に残っていた別の意識を、俺の意識が体を満たす際に一緒に取り込んだというか、混ざり合ったというか。
「もちろん、向こうからの影響というのはほとんどなくて、一つになって統一されたってとこかな。だから、ほんの少しだけ魔力とかの質が変わっているかもしれないけど……特に影響はないはずだよ」
「……ほんと、リクは予想外どころか斜め上に飛び出しているのだわ」
飛び出しているって……よくわからない表現、なんとなくエルサの言いたい事がわかる気もする。
自分の事ながら、どうしてそんな事になっているのか、わからない事も多々あるし。
「だ、大丈夫なのリクさん? その、また意識を支配されたりとか……」
心配そうな面持ちでこちらを窺うモニカさん。
「一切影響がない……と断言はできないけど、大丈夫だよモニカさん。なんていうか、モニカさんが散々統一しろって言っていたから、元々意識が一つになりたがっていたんだ」
エルサが言うように、魔力の質が少しだけ変わったみたいに絶対影響がないとは言えない。
もしかしたら、俺が激情に駆られたら取り込んだ意識が反応して表層に出て来る事だってあるかもしれない……かも、だけど。
「え、私が?……そ、そういえば、そんな事も言ったわね」
再び恥ずかしそうに視線を逸らすモニカさんだけど、多分言っていた内容はほとんど覚えているんだろう。
追及すると俺まで怒られてしまいそうだから、気付かないふりをしておく。
俺の体を支配していた、大量の意識はそれぞれ憎しみなどの強い感情の欠片が集まったもの。
だから、一つ一つが強い意識を持っていたから完全に一つにまとまれなかった……と体を取り戻して、一部を取り込んだ今ならわかる。
どういう状況だったのか、意識の濁流に飲まれていた俺にはわからないけど、モニカさんが何度も一つに統一しろとかって叫んでいたのは知っている。
その時、特に濁流になっていた意識が反応していたみたいで……要は一つになれないのが、悔しかったんだと思う。
それぞれがそれぞれを取り込もうとして、相反してできなかったみたいだから、微妙に皮肉っぽいよね。
エルサもモニカさんも、俺の意識に対して呼びかけをしてくれていたおかげで、俺は濁流に全て飲み込まれて溶け合わないで済んだ。
統一云々のおかげで負の感情の意識達が動揺したおかげで、バラバラになった意識達を追い出す要因の一つになってくれたのは間違いない。
それが全てじゃないけど、確実に助けになってくれたんだ。
「おっと、そんな事を話している間に……そろそろ、力の吸収も終わりそうだね」
手を広げて、あらゆる方向から植物のために使っていた俺の力を取り戻していく。
とはいっても、今は鞘に収まっている白い剣のように、俺の魔力に追加されるのではくただ体に入って循環して、昇華される感じかな。
さすがに、自分の魔力に関してこれまで以上に理解が進んだとはいえ、一度別の事に使われた魔力を吸収して再利用なんて、俺にはできない。
……もしかしたら、何か方法があるかもしれないけど。
「もう少ししたら、植物が全部消えるから……捕まっているユノ達も解放されると思うよ」
「巨大で、斬ってもすぐ再生していた植物が消えるなんて、あまり想像できないけど。でもリクさんがそう言うならそうなんでしょうね。って……あ、ちょ、ちょっと待ってリクさん!」
「ん?」
大分力を吸い取って、あと少しで植物から俺の力を全部引き剥がせそう……となった時に、何故か焦ったモニカさんから止められた。
どうしたんだろう?
「この場は大丈夫だけど、植物の外側はものすごく暑くなっているの。えっと……エルサちゃんがサウナって言っていたかしら?」
「サウナ?」
「あの赤い光のせいなのだわ。影響がまだ残っているのだわ。ズビー! ぐず……だわぁ」
あー、赤い光かぁ……俺の意識が残り少ないながら、魔物を一掃しようとした力だったはず。
半分以上どころか、大半は俺の意識を飲み込んだ負の感情がやった事だけど、世界だの門だのを魔力で無理矢理こじ開けて顕現させた力だっていうのは、なんとなくわかる。
その影響が残って外はサウナ状態って言う事なんだろう。
うーん、サウナなら十分程度ならなんとかなりそうだけど……。
それはともかく、エルサには俺の服で鼻をかむのはやめて欲しい。
もうべしょべしょになっていて、冷たく濡れている感触が服越しに感じられるし、ほとんど水分を吸収しなくなっているから。
鼻をかんだティッシュが乾いてすらないのに、再利用するようなものだ。
エルサきちゃない。
「それに、地面は灼熱よ。ソフィーが隔離結界から踏み出したら、すぐに靴を溶かされて火傷していたの」
「ソフィーが!? 大丈夫だったの?」
「幸い、すぐに戻ったから大事には至らなかったわ」
「ズビズビ……もし、あのまま地面に立っていたら、今頃ソフィーの足の裏はドロドロなのだわ……サウナ状態だったのも、ワイバーンに乗って空を飛んでいたからなのだわ」
「それは、想像したくないね……」
丈夫な靴底を溶かすくらいだから、人が直に触れたらどうなるかなんて考えたくない。
靴がすぐに溶けてしまう程の熱か……まぁ、あの赤い光の力をなんとなくでもわかってしまっている俺からすると、それで済んでいるだけでも安心ではあるけど。
あれは、光に触れた存在の魔力を強制的にエネルギーへと変えてしまう力。
エネルギーになる際、ものすごい熱量が発生するために触れた存在の体などは消滅してしまう……だったと思う。
だから、その熱量が地面に残って影響を残しているんだろう。
ちなみに、魔力が強制的に使われて消費されているため、その後に魔力が滞留して魔力溜まりができたりはしない……と思う、きっと。
「うーん、植物が消えた瞬間に結界を張る? いやでも、落ちてくるはずの皆を受け止めなきゃいけないし……」
一旦力の吸収を完了寸前で止めて考える。
植物が消えた瞬間、外からとんでもない熱気が襲って来るだろう……空を飛んでいてもサウナ状態というなら、灼熱の地面のすぐ近くは危険過ぎる。
とはいえ、落ちて来る皆を受け止めつつ熱気を遮断するための結界を使うのは、俺には難しい。
落ちて来るのが一人二人ならともかくね――。
さすがに落ちてくる人達を全員リクとモニカさんが受け止めるのは厳しいようです。
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