本物の証明と飛びついて来るエルサ
流れる魔力がわかるのは負の感情に飲み込まれたからなのか、それとも意識が体と切り離されて取り込まれかけるという、貴重な体験をしたからかはわからないけど。
とにかく、魔力が流れているという事は俺の記憶とかそういうのも一緒に流れているはずで……それに気付ければ本物だってわかってくれるはずだ。
「リクの魔力……記憶、感情……契約の繋がりから流れて来るのだわ。ほ、本物のリクなのだわ」
俺の体を負の感情が支配している時、エルサへの魔力を堰き止めていたんだろう……俺自身の意識じゃない事を恐れたのか、それとも他の事に魔力を使いたくなかったからなのかはわからない。
そもそも、俺の意識じゃないと流れていかないのかもしれないけど。
とにかくエルサに魔力が流れて行けば、俺が本物なのか偽物なのかは一緒に流れていく記憶だとかでわかるからね。
「ん、エルサ?」
「エルサちゃん? ちょっとくすぐったいのだけど……」
流れている魔力に意識を移して、俺が本物なのだと理解したエルサは、モニカさんの手の上でプルプルと震えている。
どうしたのだろうと首を傾げる俺と、手の平をモフモフによってくすぐられているような状態になり、モニカさんは笑顔ながら堪えるようになった。
「リ、リク……だわ……」
「え?」
プルプルと震えながら、小さく何かを呟くエルサ。
俺を呼んだように聞こえたけど……?
「リクなのだわぁぁぁ!!」
「エルサちゃん!?」
「うぉ……っと!」
モニカさんの手の平の上からジャンプ……というより、小さな翼を広げて羽ばたき、俺の胸に向かって飛びついてきた。
驚くモニカさんの声を聞きながら、仄かな光を放って段々と大きくなりつつ、ドスッと結構な勢いでぶつかってきたエルサを受け止める。
生まれたばかりの子犬くらい小さかったエルサが、見慣れたいつも俺の頭にくっ付くくらいの大きさになっていた。
「リクなのだわ、リクなのだわ! お帰りなのだわぁぁぁ!!」
「ははは、うんうん。ただいまエルサ」
「まったくリクは、心配と面倒をかけ過ぎなのだわ! モニカもだけど私も、どれだけ心配したかわかっているのだわ!?」
「あー、うん。ごめん。心配かけちゃったね」
受け止めたエルサが、顔を押し付けてグリグリとしながら叫ぶのを宥めるように、背中を撫でて謝る。
本当に心配をかけてしまっていたみたいだ。
いつもは内心で誰かを心配したりしていても、素直に口に出す事はしなかったし、なんとなく雰囲気で俺が察するくらいしかなかったけど……。
よっぽどだったみたいだなぁ。
それにしても、やっぱりエルサのモフモフは極上で至高だと思うんだ。
何故だか物凄く久々に堪能できている気がするけど、おかしいな……対ヒュドラーや魔物相手の作戦を開始する前に離れてから、あまり経っていない気がするのに。
「ふふ、エルサちゃんは何度も取り乱しかけて……実際に取り乱していたわね。一時期リクさんとの契約の繋がりが切れてもいたみたいだし」
「え!? 契約の繋がりが切れていたって!? ってちょ、エルサ! 俺の服で鼻水を!」
「ズビー! だわ……ぐしゅ……私やモニカ達を散々心配させて、面倒な事をさせた罰なのだわ。甘んじて受けるのだわ……」
モニカさんが俺達を微笑ましそうに見つつ、溜め息交じりに言った言葉に驚いていると、エルサが鼻先を押し付けて思いっ切り鼻をかんだ、俺の服で。
じんわりと、服が濡れて広がっていくのを感じながら、鼻だけでなく顔を埋めてぐずっているエルサに苦笑した。
こんなエルサは今まで見た事がないけど、それだけ心配させたって事だから仕方ないか。
「はぁ……まぁいいけど。――それでモニカさん、契約が一時期切れていたっていうのはどういう事?」
エルサと俺の契約に関してなので、モニカさんに聞くのは筋違いかもしれないけど……エルサは今まともに話ができる状態じゃないっぽいから。
「リクさんが隔離結界だったっけ? あれで皆を覆ったから……」
ぐずるエルサを撫でて、モフモフを堪能しつつ話を聞く。
なんでも、俺の張った隔離結界のせいでエルサと繋がりが完全に途絶えてしまったらしい。
考えてみれば、魔力を流す繋がりでもあるわけで……結界は魔力すら通さないから、隔離結界じゃなくても俺かエルサかどちらか片方を完全に覆ってしまえばそうなるのか。
結界の出入り口とか空気穴とか、多少なりとも外との繋がりがあればそんな事はないんだろうけど。
それから、その隔離結界の中にいたモニカさん達は、俺とエルサがロジーナに隔離された時と同じように、半日程度しか経っていないにもかかわらず、外では……つまり俺がいるこの場所では十日くらいが経っていたんだとか。
まぁ、その情報も偽物で俺の体を支配していた負の感情が言っていた事だから、信憑性が怪しいけど。
でもだからか……エルサが飛びついて来た時、モフモフを撫でて妙に久しぶりな気がしたのは。
この極上のモフモフは、一日でも触れられなかったら喪失感に支配されそうだし、ある意味意識が支配されていて良かったのかもしれない。
……体が支配されていた時に負の感情がやろうとしていた事は、良かったとはとても言えないけどね。
とにかく隔離結界。
あれは、意識が乗っ取られる前に、俺の意識の欠片が混ざり合ってとにかく皆を守らなければ……これからする事に巻き込まないようにしなければ、という考えで使ったはず。
今の俺というより、意識の欠片だからはっきりとはわからないけど、多分ロジーナの隔離を真似するとか、結界を重ねて絶対に影響が出ないように、被害が出てしまわないようにと考えていた、と思う。
「それでエルサちゃんが取り乱しちゃって……キューを上げて落ち着かせたわ」
キューで落ち着くのは、なんともエルサらしい。
話しながら、目が潤んでいる様子のモニカさん……エルサだけでなく、こっちも心配をかけてしまっていたみたいだ。
「それから結界を破るために色々やったけど、まぁこれは後でゆっくりね」
「うん、そうだね」
十分に話し込んでしまっていたけど、俺が体を支配されてから何があったのかは今話すべき事でもなかったね。
「まずはここから出なきゃいけないんだけど……」
そう言って、潤んでいた目を擦って拭い、周囲を見渡すモニカさん。
今俺達がいるのは、植物らしきでっかい茎や葉が絡み合ってできた壁の中……みたいな感じだね。
成る程、これが緑の光かぁ。
頭で考えるんじゃなく感覚でそうわかった、考えるな感じろってとこかな? 負の意識は緑の力って言っていたらしいというのも、頭の中に浮かんだ。
「リーバーも絡め捕られているし、エルサちゃんは……まだ無理そうね。そもそも、覆われている植物をどうにかしないと」
「ぐす……だわぁ」
「あはは、まぁエルサが落ち着いても、まだ俺達を乗せられるくらい大きくなって飛ぶのは、ちょっと難しいかな」
完全に覆われて塞がれている頭上を仰ぎ見て、さらにこちらというよりまだぐずっているエルサを見たモニカさんが、眉根を寄せて考え込む。
エルサの大きさはいつも通りくらいにはなっているけど、俺から魔力が流れているとはいえまだまだ不十分。
誰かを乗せて空を飛べるようになるのは、もうしばらくかかりそうだね。
ぐずぐずエルサの復帰はまだまだかかりそうです。
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