激情のモニカ劇場
「ははははははは! あはははははは! 何をしようとしても無駄だよ! この体も力も、私達の物なのよ! 俺達が支配している以上、何も届かない! この体が、僕達の殻となって守ってくれるんだよ!」
私とエルサちゃんの話が耳に入っているのかいないのか、狂ったように笑い続ける偽物。
でも、その体はリクさんで、本当のリクさんの意識じゃないわ! 殻なんて言っていても、力があるとか守ってくれると言っても、それは全てリクさんの物なのよ!
「ほんと……いい加減うるさいわね!! あはは、あははと馬鹿みたいに!! 俺? 僕? 私? いい加減一つに固まったとか膨れたとか言っているなら、統一しなさいよ紛らわしい!!」
やる事を決め、言葉によって相手を感情を揺さぶるために、恐怖からか震える足の片方を上げて地面にダンッ! と、踏みしめて思いっ切り叫ぶ!
怖いとか、まともに向き合っちゃいけないとか……それらからの根源的なものなのでしょうね、勝手に震えってしまうのは足だけでなく全身。
だけど、腹に据えかねていた偽物に対する怒りをぶつけるように叫んで、それらをすべて弾き飛ばす!
「モ、モニカが怖いのだわ……」
「エルサちゃん!」
「ひゃい! だわ!」
両方の手……前足? で頭を抱えるようにしていたエルサちゃんにも強く呼びかける。
エルサちゃんに関しては私と違って、偽物相手ではなく私の吐き出す怒りに対して怯えているようだけど……心外ね。
ドラゴンのエルサちゃんを怯えさせるなんて、人間の私にできるわけないじゃない、リクさんじゃあるまいし。
「エルサちゃんもエルサちゃんよ! わかった風な事を言って……いえ、実際に私より色んな事がわかっているんでしょうけど。でも! リクさんの相棒でしょ!? 契約相手でしょ!? いつものリクさんが返ってくるように、もっと頑張りなさいよ!!」
「わ、私に言われてもだわ……」
私の手の上で、頭を抱えながら丸くなるように身を縮めるエルサちゃん。
あら? これじゃまるで私がエルサちゃんに怖がられているみたいじゃない?
「何をしているの! あなたはドラゴンでしょう! 私のような人間に怯えてどうするのよ!」
私がドラゴンを怖がらせるなんてあるわけないじゃない。
そうよね、きっと雰囲気とか、リクさんの力とか、なんかそんな感じのよくわからないものに対して怯えているだけよね? それとも、そうする事で何か考えがあるのかもしれないわ。
「エルサちゃんがリクさんの事大好きだって、私は知っているんだから!」
「わ、私はそんな事、ないのだわ……」
「嘘おっしゃい! 素直になれない気持ちはわからないでもないけど、今否定するような状況じゃないでしょ!!」
「それを言うなら、今そんな事をいう状況でも……ないのだわ?」
「いいのよそんな事は! 私だけじゃなく、皆知っているわよ! いっつもリクさんの頭にくっ付いて、リクさんに撫でられて……羨ましい!!」
「モニカ……? ちょっと願望が漏れている、のだわ?」
あら、ちょっと熱くなり過ぎたかしら?
自分でも、口を突いて出る言葉が制御できないというか……まぁ、色々溜まっていたって事でいいわよね。
私だってリクさんに……いえ、そのリクさんを取り戻すのが先決よ!
「く、あはははは!! 何を言うかと思えば仲間割れか!? 馬鹿なのはそっちだったようだな……俺、僕、私……そして我を止めるのは諦め……」
「うるさいって言っているでしょ!! あんたは喋るんじゃないわよ、鬱陶しい!!」
「んなっ!?」
「大体何よ、統一しなさいって言ったのにまだできていないじゃない! しかも我なんてのも追加して偉そうに! なんなの、自分の事もちゃんとわかっていないのに、なんでもできるように考えているの!? でもそれは、あんたの力じゃなくてリクさんの力でしょ!! なんの力もない無力のくせに、人の体を借りて借り物の力でなんでもできるつもり、馬鹿馬鹿しい! 勝ち誇って笑っていたけど、こっちからしたら失笑ものよ!!」
「ぐっ……!!」
馬鹿の一つ覚えみたいに、また笑い始めた偽物を睨み、怒りをぶつけるために叫ぶと怯んだみたい。
なんだかもう、自分の呼び方も統一できない相手に恐怖を覚えていた事自体が、どうでもよくなって来るわね。
それは、怒りに任せて叫んで、勢いに乗っているからなのでしょうけど……そもそも何よ我って、俺とか僕とか私とか、複数の感情が集まっているのかなんなのか知らないけど、ちゃんと一つに統一されていないのに、我も何もないじゃない!
自我もわからないようなのに、あれこれ言われたくないわよ、まったく!
「ど、どうしたのだわモニカ……? もしかしてモニカまで、負の感情に飲み込まれたのだわ?」
「これが負の感情なら確かに飲み込まれたかもしれないわね! でもそれは、あんな我だのなんだの自分がないのに、自分が存在していると勘違いしている馬鹿にじゃないわ! ただただ私自身の怒りよ!!」
「そ、そうなの、だわ? こ、怖いのだわ……」
頭を抱える前足の隙間から、チラッとこちらを見上げて窺うエルサちゃんにも、叫ぶ。
怒りが負の感情と言われればそうなのかもしれないけど、あんな偽物なんかに飲み込まれたりしないわよ。
これは、さっきまで堪えて抑えていた爆発しそうな怒りを、腹の底から勢いよく出しているだけなんだから。
誰かの感情じゃない、自分自身の感情よ!
「大体エルサちゃんはね、もっと素直になるべきなのよ!」
叫び続けて、そろそろ喉に痛みを感じるわ。
けれど、私は止まれない……。
「しまったのだわ、こっちに矛先が向いてしまったのだわ……」
「そりゃ向くわよ! 照れ臭いのかなんなのか知らないけど、大好きなリクさんなのに隠そうとしてそっぽを向いて! いつもリクさん苦笑いよ!? それに、リクさん以外の人間を時折見下すような尊大な振りをしているけど、人間も大好きよね!? じゃなきゃ、リクさんに頼まれたからって私達だけでなく街の人達を助けるのに協力なんてしないものね!!」
もう誰に何に怒りをぶつけているのかも、よくわからなくなっている気がするけど……これまで溜め込んでいた物を吐き出すように、叫び続けた。
「そ、そんな事はないのだわ。リクはただの契約相手で……人間なんてただの小さき者なのだわ……」
「今はエルサちゃんが小さいけどね! 私の手の平の上に乗るくらいよ!? 例えでもなんでもなく、そのまま手の平で踊らせればいいのかしら!? なんなのよ……」
「なんなのは、こっちが言いたいのだわ……私はドラゴンなのだわ。リクも人間も、どうとも思っていないのだわ。ただ私の気の向くままに利用しているだけなのだわ」
「そう、そうなのね……エルサちゃん、そんな事言っちゃうんだ……」
いい加減、叫び続けて息が苦しくなったので、少しだけ叫ぶのを止めて語り掛けるようにしながら、呼吸を整える。
それと同時に、エルサちゃんに向かって目を細めた。
こちらを見ていたエルサちゃんの表情が、恐怖に染まって行っているように見える……人とは違うけど、それでもエルサちゃんの表情がよくわかるのは、長く一緒にいるからかしら――。
モニカさんは決して怒らせてはいけない人なのかもしれません。
読んで下さった方、皆様に感謝を。
別作品も連載投稿しております。
作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。
面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。
また、ブックマークも是非お願い致します。






