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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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貫くは力を集めし者



 結界……エルサちゃん自身の魔力も少なくなっているのに、吹き荒れる力から私やソフィー達を守ってくれているみたい。

 離れている三人を包み込むために、それなりに大きめに作ってあるのでしょうね。


 けど、狙いを定めている結界の一点……特に薄くなっている場所へ流行りが通るように、隙間が空けてある。

 そこから、スピリット達の吹き荒れる力は流れ込んできているけれど、今更その程度に負けたりはしないわ!


「ソフィー、フィネ、投げるのだわー! モニカが狙う先、槍の先へだわ!!」

「「っっ!!」」


 一緒に結界内へと入れ込んだソフィー達……翻弄されているはずの力がなくなったため、武器から手を離せるようになったと思われる二人から、クォンツァイタが私左右から投げ込まれた。

 真っ直ぐ勢いよく投げ込まれたクォンツァイタは、少しだけ前後にズレて……。


「今っ!!」


 槍を突く軌道に前後で一致した瞬間、素早く突き込む!

 穂先に勢いよく疲れクォンツァイタは、穴が開くのではなくバラバラに崩れ、破片をまき散らして地面へ落ちていく。


「マルクスさんは……」


 距離はあったけれど目に焼き付いている。

 マルクスさんがショートソード折ってから、マインゴーシュを回して魔力の回収をするまで。

 折れた剣先が、地面に落ちて音を立てるかどうかくらいだったはず……それで少し遅めという事は……ここ!!


「っ! はっ!」


 二つのクォンツァイタを突いた槍を引き戻し、霧散したはずの魔力が、周囲の魔力。

 スピリット達それぞれの力、抉れ、破壊された結界の魔力、それから自然の魔力……それらを集める核になっているはずのリクさんの魔力!

 私んいはフィリーナみたいな可視化されていない魔力見る目はないけれど、吹き荒れる魔力は見えるわ。

 それだけ濃い魔力が、赤、青、緑、茶とそれぞれのスピリット達の魔力が目安になってくれて、ふわりと広がりながらも塊になっているのがわかる。


 それらを逃さないよう、霧散したまま溶けないよう、槍を縦に振り、横に振り、そして再び引き戻して構える……。

 集中しているせいか、まるで自分が演舞をしているような感覚。

 そこから、槍の穂先にとんでもない魔力を纏っているのがわかる……並みの武器や魔法具じゃ、自壊していてもおかしくない程。

 青い刃のワイバーン素材を使った武器、それは今様々な色を混ぜ合って黒く染まっている。


 何かを成すための力、だけれどそれを成す目的を待つばかりではない力。

 だからこそ、力の方向性、魔法などへと変換される前の白や透明ではない魔力が宿った照明の黒。

 夜よりも深く、リクさんへと流れて行った負の感情よりも濃い黒は、見る者全てを魅了する程美しい……。


「全てを、リクさんと私達を隔てるこの結界を貫けっ!! せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」


 足を出し、地面を踏みしめ、全力で構えた槍を結界へと突き出す!!

 もはや外と内側との境目がまったくわからない程、薄く透明で目に見えなくなっている結界はしかし、確かな手応えを私に感じさせた。

 けどその手応えは、突き出した私の槍を阻む事はできず貫かれる……。


「……やった、の?」


 耳をつんざくような、いくつものガラスが割れる音。

 それと共に、槍の手応えががなくなる。

 ……結界を貫き、突き破ったのだろう……伸ばした腕、突き出した槍はそのまま何にも取り込まれる事なく停止していた。

 だが次の瞬間……。


「槍が……!?」

「やっぱりまだ名残があったのだわ! ちぃ……多重結界なのだわ!!」


 まるで魔物達が消失した時のように、黒かった穂先は消え、破った結界の先から霧散していくようになくなって行った。

 私の頭にくっ付いているエルサちゃんが叫び、握っている部分から少しだけ槍の柄を残し、消失は止まったわ。


「一体、何が……?」

「はぁ……だわ。穂先は多分、とてつもない力がかかって壊れたのだわ。けど、その後外に残っていた力の残滓……さっきの赤い光の名残が、外から入って来ようとしていたのだわ」


 槍は私の手元へ向かって消失して行っていた……まるで、力の流れが入り込んで私へと迫るように。

 エルサちゃんが多重結界とやらで私を包んで、なんとかしてくれたみたいだけど、それがなかったら今頃私の手は失われていた……かも。


「……っ!」


 お腹の底から、冷たい何かが込み上げてくる気がして、思わず握っていた槍の柄を離す。

 カラン……乾いた音を立てる、短く残った柄。

 それと耳に届いた音だけが、自分が無事である事を証明している気がした……。


「安心するのだわ。この結界に守られていれば、赤い光の名残は届かないのだわ」

「で、でももう赤い光なんてないのに……それに、エルサちゃんの多重結界? はリクさんのと違って、目には見えないわ」


 今見える外の景色……いえ、分厚いリクさんの張っていた結界からも少しだけ見えていた外には、赤い光は完全に収まっていたはず。

 なのにその名残って。

 内側から見ている限りでは、赤い光が照らされた魔物が消滅していたように見えていたのだけれど。


「あの赤い光はただ瞬間的に燃えていたから、そう見えているだけなのだわ。力の名残はまだ残っているのだわ。多分、もう少しでなくなるはずだけどだわ。槍が消失するのも、魔物より遅かったのだわ」

「そ、そうなの……?」


 あの光は燃えている炎だったって事なのかしら? そういえば、エルサちゃんは燃えていると言っていたっけ。

 よくわからないけど、とにかくもう少しでその名残とやらもなくなって、安全になるって事みたいね。


「モニカ、エルサ!」

「結界はどうなりましたか!?」

「ソフィー、フィネさん」

「結界は突き破ったのだわ。外に出られるようにはなったけどだわ、少し待つのだわ。今すぐ出ると、さっき見た魔物のように消えるのだわ」

「「っ!?」」


 後ろから聞こえる声と共に、私へと駆けて来るソフィーとフィネさん。

 どうなったかを確かめるためでしょうね。

 二人共、エルサちゃんが突き破ったと言った瞬間に沸き立ちそうになったけれど、魔物のように消えると言われて、目を見張っていたわ。

 多分、間近で槍の先が消失した私程じゃなくても、背筋が凍るような思いになってのでしょうね。


 とりあえず、エルサちゃんが残りの魔力で多重結界を張っているから今は安全だという事、しばらく待つ必要がある事も伝えたわ。

 そして、他の人達……結界を破るために全力を尽くしてくれた人達にも同じ事を伝え、力の残滓とやらがなくなれば外に出られるようになった事が伝えられた。


「我々の勝利だ!! 勝ち鬨を上げろ!!」

「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」


 シュットラウル様が叫び、荒れ狂う力に翻弄されていた結界付近の人達、父さん達、それからアマリーラさん達も雄叫びと勘違いしそうな程、勝利を祝う声が上げられたわ。

 それは波のように広がり、結界を破る事に成功したという情報と共に、全ての人達へと伝播していった。

 まぁ、まだ結界を貫いただけで、リクさんの所へは辿り着いていないし、勝利とは言えないんだけれど……千人を越える人達、スピリットという強力な存在、エルサちゃんや私達が協力してようやくなのだから、喜びが溢れるのは当然のように思えるわね――。



全員が全力を尽くして、目的の結界を破れたので喜びもひとしおなのかもしれません。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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