表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1336/1950

エルサの魔法



「んっ! ここ、ここを狙うのエルサ!」


 エルサちゃんの声を聞いたユノちゃんが、数度結界に向けて剣を振るう。

 左袈裟斬りから袈裟斬り、そして左から右へ一文字斬り……だったかしら? 

 エアラハールさんが言っていた斬撃の動作に名前を付けた物らしいけれど……エルサちゃんとリクさんは妙に納得していたわ、私やソフィーは、聞いた事のない言葉に首を傾げてばかりだったけれど。流れるような動作で結界を斬り付ける。


 それに加えて最初の一撃、縦の真っ向斬り。

 最善の一手で斬った場所全てで印をつけるように、そしてすべてを交差するように斬り付けた箇所を、エルサちゃんに示す。

 そこは……ヤンさんの武器の刃が埋め込まれていた部分でもある。

 全ての中心として狙いを定めて、寸分違わず交差させられるなんて……さすがユノちゃんとしか言いようがないわ……。


「行っけー、なのだわ!! ヴィブラチオン・ブレイズ・ボルテクスだわー!!」


 ユノちゃんの示す先へ、叫びと共に、エルサちゃんの魔法が出現。

 それは、炎の渦巻き。

 フィリーナやカイツさんが放った魔法に似ているけれど、どこか違うもの。

 威力とか込められた魔力だけでなく、炎を纏っているだけでもなく……もしかして、振動している?


「貫いて破壊するのだ、わわー!!」

「きゃ!」

「思わず、自分も飛ばされてしまったのだわー」


 渦巻く炎を撃ち出したエルサちゃんだけど、その瞬間後方の私がいる所へと弾かれた。

 思わず悲鳴を上げながら受け止めた……エルサちゃんを受け止められて良かったけれど、おかげで私も足を止めてしまったわ。

 まぁ、今あそこに勢いのまま突っ込むのは、私も巻き込まれそうでちょうど良かったかもしれないけれど。


「ソフィーもフィネも離れるの!」

「言われずとも! これは巻き込まれかねん!」

「了解ですっ!」


 ユノちゃんの言葉で、突き刺していた武器を抜いて慌てて離れるソフィーとフィネさん……いつの間にかユノちゃんも、横に飛びのいて結構な距離を取っていたわ。

 エルサちゃんの撃ち出した魔法……ヴィブラチオンなんたらは、炎が渦を巻きさらにこちらに響く食う気すら振動させてながら進み、ユノちゃんが示した箇所へと直撃。

 ……渦の太さが、元ギルドマスターが持っているハンマーくらいだったから、狙う箇所を指定しなくても良かったんじゃないか、とは思うけれど。

 いえ、きっと魔法の中心部を当てた方が威力があるのよね、きっと、そう思っておきましょう。


 ともかくその魔法は、結界に当たり、周囲に炎を振動をまき散らしながらも、徐々に前へと進む。

 マルクスさんが剣を突き込み、ヤンさんが武器の刃を埋め込み、アマリーラさんが穴を広げて深め、ユノちゃんが刻んで弱らせた結界部分。

 そこを抉り、割り、少しずつ進んでいく……。


「結界が……!」

「振動は結界を伝わるのだわ。ヒビ割れた部分も破壊して突き進む……のだわ。はぁ……疲れたのだわぁ」


 魔法は結界の内部に入り込み、各所へと走っていたヒビ割れにも入り込んでそこから炎を吐き出す。

 結界が割れた音、魔法による炎が渦巻く音、そして振動……それらが混じり合い、よくわからない激しい音が周囲を満たす。


「けど……やっぱり結界を破るまでには至らないのだわ……」

「エルサちゃん?」


 激しい音が鳴り響く中で、私の頭へと再び場所を移したエルサちゃんの声は、いつもと違って元気がない。


「魔力が、残り少なくなって来たのだわ。やっぱり、リクとの繋がりがないと魔力の回復が間に合わないのだわ……ここで少し休むのだわ。もう結界をどうにかする魔力はないし、何かのために温存しておくのだわ」


 あらゆる音が鳴り響く中、妙に鮮明に聞こえるエルサちゃんの声。

 まぁ、頭にくっ付ているから、物理的に距離が近いせいね。

 とにかく、ヒュドラーや魔物達相手に、遠距離攻撃の威力増強を続け、さらに結界相手にも同じ事をしたうえで、強力な魔法……。

 どれにどれだけの魔力を使っているのか、私にはわからないけれど、一度の威力増強の輪だけでもフィリーナの魔法より魔力が込められていたらしいし、疲れるのも当然よね。


「……お疲れ様、エルサちゃん。後は任せて……」

「絶対、結界を破るのだわ。そして、キューをたらふく食べさせるのだわ」


 エルサちゃんの頑張りを労い、相変わらずキューに関する要求だけは忘れない言葉に、少しだけ笑みが漏れるわ。

 いよいよ次は私の番……けど、エルサちゃんのおかげで肩に入っていた余計な力が抜けちゃったわね。


「魔法が、消えていくわ……」


 そんな中、ゆっくりと結界を抉って進んでいたエルサちゃんの魔法……それが、纏う炎が薄れ、渦が小さくなり、振動が感じられなくなっていく。

 エルサちゃんの言う通り、突き破るには力が足りなかったみたい。

 それでも、これまでのどんな攻撃よりも、分厚い結界を抉り取っているのはわかったわ。

 あまり考えたくないけれど、あれが人に向けられたら……どれだけ頑丈な鎧を着ていても、それこそワイバーンの鎧を着ていても、鎧ごとバラバラになっていたでしょうね。


 いえ、炎も纏っているから、灰になっていたかしら?

 恐怖すら感じるはずの想像なのだけれど、使ったのがエルサちゃんだっていうだけで、怖さはないわ……エルサちゃんがその魔法を、なんの罪もない人に向ける事なんてないって、わかるから。

 リクさんがどれだけとんでもない魔法を使っても、どこか安心感があるのと一緒ね。

 ……リクさんの場合は、近くにいて巻き込まれないかの心配もあるけれど。


 そんな事を考えている間に、エルサちゃんの放った魔法は消滅。

 結界はなおも維持されているし、外へ出られるような穴は開いていない。

 けれど、皆が攻撃を加えていた箇所、それからヒビが走っていた箇所は全て割れており、外がはっきりと見える程薄くなっているのがわかった。

 そして……一番攻撃を加えていた場所……そこはもう、薄っすらと結界が存在する事を示すのがわかる程度で、注視しなければ何も見えないくらいに結界が薄くなっていたわ。


 本来不可視の透明な結界……とんでもない数を重ねて、エルサちゃん曰くさらに歪めたりもして、それで白っぽく外がぼんやりとしか見えなかったけれど。

 でも、外がよく見えるようになって、結界の薄まりと共にリクさんへと着実に近付いているという実感が湧く。

 それは他の人も同じようで、外がよく見えるようになった事で、沸き立つ声が聞こえてきたわ。


「行くわ……!」


 聞こえてきた声は、父さんの声かしら? それとも、シュットラウル様の? アマリーラさんの声だったかもしれないし、ソフィー達の声だったかもしれない。

 誰ともわからない、沸き立つ声を聞きながら、深く集中して持っている槍に自分の魔力をできる限りは這わせ、纏わせる。

 ワイバーンの素材を使った武器は凄い……これまでの魔法具でもあった槍とは違って、魔力がどこかに引っかかって無駄にするような事は一切なく、まるで水が流れるかのように、全体へと行き渡った――。




多くの協力を経て、モニカ渾身の次善の一手が放たれる……?


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はページ下部から評価の方をお願いします。

また、ブックマークも是非お願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ