レムレースは特殊な魔物
「……リク、レムレースを利用しているのは他の魔物も利用しているのよ? その魔物を使えば……」
「そうか、魔物を使って人に対する感情を利用して、ってとこか」
「もちろん、その魔物の意思を伝えるには声を掛けるなんて方法じゃ駄目なの。多分レムレースに取り込ませているの」
「核から復元した魔物を、さらに意思を強化させるかどうかして取り込ませたんでしょうね」
要は魔物を生贄にってとこか。
ワイバーン達の事があるからか、その方法に嫌悪感が沸く。
俺自身、散々魔物を倒して来ているし今もそうだけど、それでも生贄になんて……例えそれで強い力が手に入ると言われても、やりたくない。
「まぁ、魔物を生贄にってだけなら別にいいのだけど……」
「いや良くないとは思うよ?」
「リク、生贄にする事の善悪だけじゃなくて、レムレースには厄介な性質があるの」
「厄介な性質?」
「リクも見た通り、レムレースは不定形で黒い霧の魔物よ。その黒い霧はどこにでも入り込む。それこそ、魔物や人の中にもね」
魔物だけじゃなく、人の中にも……?
あの黒い霧、思い出すのは気持ち悪いギョロっとした目だけど、とにかくあれが体内に入ると考えると、吐き気すら感じる。
「体に入り込むって聞くと、入り込んでその魔物や人を操るとか?」
ゲームや物語なんかでは、他人の体に入り込んで操る……って事もよくある話だ。
もしかして、レムレースにはそういった事もできたのだろうかと思い、聞いてみる。
「いえ違うわ。やろうと思えばできるのかもしれないけど……魔力と思念の塊だから。でも、そもそもレムレースがそれをしようとは考えない。意思の統一ができていないから、そんな細かい事は考えられないわ」
「レムレースが負の感情を元にした思念だから、体に入り込むとその攻撃性や負の感情が刺激されるの」
「つまり、あの黒い霧が入り込んだ何者かは、正気じゃなくなる……とか?」
「近いわね。つまり……」
正気を失う、というわけではないみたいだけど……レムレースが入り込んだら、魔物や人に関わらず攻撃性が増し、理性が薄まるとか。
ロジーナが言うには、どちらが先かはわからないけど、今センテに向かって来ている魔物の大半がレムレースによって刺激されたため、攻撃的になって人がいる方を向かっているのかもしれないと。
核から復元した魔物もいるだろうけど、レムレースを誘導して大量の魔物を集めたか、大量の魔物にレムレースを使って目標をセンテに定めさせたか……という事が考えられるらしい。
「それじゃ、もしレムレースを倒さないままセンテに来させていたら……?」
「魔物も人間も暴れ始めて、お互いの攻防どころか入り乱れての殺し合いになりそうね……多分だけど」
「じゃあもしかしたら、もうレムレースの一部がセンテに行っていてもおかしくないし、誰かの中に入り込んでいたりとか?」
「それはないの。レムレースは必ず黒い霧が一つ薙ぎになっているの。切り離したりしたら、その部分は別の思念と魔力になるの」
最悪の想像をしたけど、それはユノによって否定された。
欠片でも勝手に復活するレムレースだけど、一部を切り離したらもうレムレースにはならないって事か。
うん、よくわからないね。
「それが唯一の救いね。レムレースだった黒い霧はもうないって事は、魔物にしろ人にしろ、何かに入っている事もないってわけよ」
体内に入るとしても、絶対レムレース一体に対して全ての黒い霧は繋がっているから、俺が消滅させた時点で他の何者かに入っている事は絶対にないのか。
それなら、一度に全体を焼き払うんじゃなくて、魔力を吸収させて小さくしてからってのは、正しい倒し方と言えるかもしれない……一番いいのは、完全に全ての魔力を吸収する事だろうけど。
「だから、今こうして話していても魔物達が積極的にこちらへ向かって来ないんでしょうね。まぁ、リクが何か空から降らしていたとんでもない魔法の影響でもあるでしょうけど」
「多分、これまでは一部の魔物に入り込んでいたの。それがリクによって除去されたから……戸惑ってどうしていいかわからないってところなの」
「そういう事か……」
魔物の進行速度……ヒュドラーとレムレースを一気に倒し、俺からの攻撃もあったからと思っていたけど、レムレースがいなくなった影響だったのか。
ロジーナが言うには俺からの攻撃も意味はあったっぽいけど。
考えてみれば、北側からこちらに来るまでの間、ある程度足止めするためにマルチプルアイスバレットをばら撒いていたけど、予想より魔物が到達していた場所がセンテの防衛線から離れていた気がする。
北から中央にかけては、魔物達の中を突き進んでいたからよくわからなかったけど。
思った以上に時間がかかったにもかかわらず、中央から南にかけては進行位置が遠かった。
「もしかしたら北にいたレムレースを倒したから、その影響だったのかも? いやでも、距離が離れ過ぎているかもしれないから……」
よくよく考えてみると、誤差かもしんない。
それよりは、俺が魔法をばら撒いたり輝く剣を振り回している事や、北だけでなく中央のヒュドラーがいなくなった事の方が影響しているかもね。
魔物達がどう考えているかはわからないけど、センテ側から見るとそれぞれのヒュドラーが旗頭のようにも見えたし。
「とにかく今は、少しだけ魔物がおとなしくなっているって事なの。こちらから打って出るチャンスでもあるの」
「ユノの言う通りかもね。今のうちにこちらから大打撃を与えておけば……」
あーだこーだと細かい事を考えているよりも、行動に移した方がいい。
無策で無謀はいけないけど、ヒュドラーやレムレースはいなくなった……まだレムレースが残っている可能性がないとは言えないけど、前に出て来ないのならその可能性は低そうだ。
さすがに一気に殲滅を……というのは無理だとしても、大きく魔物達の戦力を削るくらいはできるはず。
「私は、疲れたから下がって休みたいわ」
ヒュドラーやレムレースと戦って、ユノとロジーナは疲れているから少し休んだ方がいいだろうね。
こちらから魔物達に攻撃を加える時に、ユノもロジーナもいないのは痛いけど……その分ヒュドラーからの被害がほとんどなかったわけだからね。
「そうだね、ユノもロジーナも頑張ってたし……あ、そうだった。ヒーリング……ユノにも……」
「ありがとうなの!」
ふと改めてユノとロジーナをみて、傷だらけな事に気付いて治癒魔法をかける。
大きな怪我とか致命傷は避けていたんだろうけど、さすがにさっきのヒュドラーの首に囲まれた時、完全に魔法を避けられなかったんだろう。
一部、服の端だけど酸で溶けているような部分もあったし、破れている所もあるから……戻って着替えた方がいいとも思う。
「ほんと、跡形もなく傷を治す治癒魔法なんて……まぁリクだし、考えるだけ無駄ね」
手を握ったり開いたり、俺の治癒魔法を受けて怪我が治った事を確かめながら、ロジーナが呟く。
結局、俺だからって理由で納得するんだ……いいけどね――。
大体の事は、リクだからで多くの人を納得させられるようになってしまったのかもしれません。
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