不審な空間
「南側のヒュドラーに向かっていますけど、あっちはまだ持ち堪えられていますか?」
「そちらは、アマリーラ様が援護に行きました。何やら南側はヒュドラーと周辺の魔物の連携する様子が見られたようで……ユノ様やロジーナ様の露払いにと。アマリーラ様、リク様の作戦を邪魔するのはどんな相手であろうと許さない! と息巻いていましたから。今頃、ワイバーンと一緒に戦っているんじゃないですかね?」
途中、苦笑交じりになるリネルトさん。
アマリーラさん、上空監視から戦闘に参加したんだ……まぁ、あの人の性格からしておとなしく空から監視、偵察だけをしているのは難しかったのかもしれないけど。
だからこそ、以前にセンテの南側でリネルトさんを連れて、魔物達へと突撃してたんだろうから。
それにしても、ヒュドラーと周囲の魔物との連携か……。
同種族ならともかく、種族が違う魔物が連携するのはこれまで見た事がない……それは王都でもルジナウムでも同様だ。
ヘルサルの時は全部ゴブリン系統だったから、連携というか集団行動はしていたけどね。
それはともかく、ヒュドラーなんて魔法をまき散らして他の魔物を巻き込んでいたのを、俺は何度も見ている。
なのに、南では周囲の魔物と連携していると聞けば、何か理由があるようにしか思えない。
「魔物達が種族を越えての連携、というのはここまでで見ていないですけど……南側で他に変わった事は? だれか、指示を出しているような人物……人以外にも、司令塔になっている何かがいたりとか」
「いえ、空から見ていてもそのような存在は確認されていません。ただ……」
「ただ?」
リネルトさんに聞いてみるも、今のところそういった存在は確認されていないらしい。
けど、何か気になる事があるようだ。
「魔物ひしめく地上にあって、一部分だけ地面が見えるくらい魔物が少ない場所があるんです」
「魔物が少ない?」
「はい。その……」
リネルトさん曰く、空から見た際に魔物達は地面が見えないくらいにひしめき合っていて、場合によっては別種族の魔物とぶつかり合いながらセンテに向かっているのだそうだ。
それでもはっきりと敵対して攻撃し合う事はなく、誰かの意思の介在を疑えるのはこれまでと同様として……そんな中に、他にはない一部だけ地面の土が見える場所があるらしい。
大体、数メートル四方でそこだけ空間があり、だけど魔物の進行と共に空間も移動しているとの事だ。
そこに何があるのか、というのはヒュドラー後方で危険が伴うため近付いて調べる事はできなかったようだけど……。
あと、ヒュドラーの視界に入らないよう別方向からコッソリ近付いて高度を落とそうとすると、ガルグイユなどから大量の魔法攻撃を向けられて慌てて逃げたとか。
何か重要そうな事柄を隠して、守っている感じがするなぁ……リネルトさんも同じような事を感じているみたいだけど、厳重なため近付けず調査もできないと。
「そこに何かがあるか、何かがいるか……ってとこでしょうか」
「断定はできませんが、私もそう感じます」
「わかりました、ありがとうございます。ヒュドラー討伐後は一度そこを目指してみます。ユノやロジーナの足止めは上手くいっていますか?」
「当初、キマイラやガルグイユなどの妨害に合い、思うように行かなかったようで危険な場面も何度かありましたが、今は問題なく。長く続く事ではないかもしれませんが、アマリーラ様と他の冒険者が周辺の魔物を受け持つ事で、足止めに成功しています。後方からは、多様な魔法援護もされていますから」
「そうですか……」
いくらユノやロジーナが強いと言っても、ヒュドラー以外からの妨害があり、しかも連携しているとまでなれば手こずるのも無理はない。
けどそれを見ていたからこそ、アマリーラさんが乱入したんだろうな……結果的にはアマリーラさんの無茶が良かったという事だろう。
南側は軍の兵士ではなく冒険者のため、遊撃隊のように動く人達が多く、アマリーラさんと協力してくれているのだと思う。
あと、数は少なくても兵士より魔法に長けた人が多いため、遠距離からの援護も期待できると。
数では他の場所より少ない南側だけど、局所的な戦いでは冒険者さん達の力を発揮できる。
北と中央と南、戦力を分散させて広い範囲を守る事になったけど……バランスが取れているみたいだ。
当然、一番守らなくちゃいけない中央に戦力が集中しているのは間違いないんだけど。
「あ、そうだ。中央はさっき見たけど、北側はどうなっていますか?」
一旦下がるように言って離れたから、その後どうなったのかわからないからね。
リネルトさんが見てきたかどうかはわからないけど、一応聞いてみた。
「先ほどお話した空白の箇所の発見から、魔物達の奥を偵察後、北に回り南下しましたので確認しております。ヒュドラー討伐後、魔物の進行は遅々として進んでおりません……これはおそらく、リク様が圧倒的な力を見せつけたからだと」
「俺が? ヒュドラーやレムレースは倒したけど、圧倒的な力なんて……まぁ、軽々と魔物を倒していたりはしたけど、広く見せつけるような事はしていないはずだけどなぁ」
「いえ、あの氷をすさまじい勢いで飛ばす魔法です。先程もあちらの魔物達へと使っていました」
「あぁ、マルチプルアイスバレットね……そういえば、レムレースを倒した後に使ったっけ」
最初に使ったのがレムレース後だったし、モニカさん達が下がる時間を稼ぐためだったから、一番威力と弾数が多かったのは間違いない。
俺の悪い癖だけど、初めて使った魔法は後の方が慣れて調整ができるため、一度目が一番威力が高い。
まぁ、あの時はあれで良かったんだと思っているけど。
「ヒュドラーなどを倒した影響もあるのでしょうが……あの魔法があってから、魔物達が怯え始める者多数、といったところでしょうか。そのため、石壁まで下がる兵士達を追う魔物はほとんどおらず、いてもすぐに討伐されているのを確認しました」
「怯えて……そういう効果は期待していなかったんですけど、結果的に良かったって事ですね」
ヒュドラー、レムレースといった明らかに次元が違く強力な魔物が倒された。
そのうえあっさり多数の魔物を屠る魔法を見たら、怯える魔物だっているのも頷ける。
本能で行動する事が多い魔物だからこそ、怯えの感情には素直なんだろうから。
特に、自らの感情ではなく指示されて進行していたと思われるから、尚更そういう感情に支配されやすいのかもしれない……なんてもっともらしい事を考えるけど、とにかく結果オーライという事で。
「なら、しばらく北側は魔物に攻撃を加えながら、持ち堪えられますね」
「はい。もしも南と同じようにヒュドラーと魔物が連携していたら……と考え、遊撃部隊だった……多様な色の髪を持つ者達に向かうよう頼みましたが……」
「多様な色の髪……もしかして、ルギネさん達リリーフラワーの事かな?」
信号機さんと俺が内心で呼んでしまうくらい、パーティメンバー内での色的な統一感がない人達だ――。
ルギネさん達がモニカさんを助けられたのは、リネルトさんの指示のおかげだったようです。
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