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神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移  作者: 龍央


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ワイバーン達も戦闘中



「結界が解けるまでに、下がって下さいね! あまり長くはもたないと思うので……!」


 それだけ伝えて、残り一体のヒュドラーを目指して駆けた。

 走る俺の後ろでは、エルサたちが放ったんだろう……音が聞こえてチラリと見てみると、魔物達にミスリルの矢が降り注ぐのが見えた。

 考えていたよりもエグイ威力になっているけど、あれはエルサの魔法のおかげなのか、ミスリルの矢が何か特別な力を持っているからか。

 ……エルサの魔法の影響だろうね、土を固めただけのミスリルの矢に硬さ以外の特徴があるようには思えないから――。



 ――マックスさん達と合流する前のように、ひしめく魔物達の切れ目付近で集団に向かってマルチプルアイスバレットを、限定的な方向に射出しつつ南下。

 少しでも、魔物達の足止めをするためだ……これくらいなら、俺の走る速度は特に変わらないからね。

 結界を使って防御するとかなら、速度を落とすか足を止めた方がいいけど、近付く魔物や飛んで来る魔法は輝く剣のおかげで簡単い振り払える。


「ん? あれは……?」


 南下している途中、そろそろ飛び抜けて大きいヒュドラーの首が見えるかな? と思い始めた頃、魔物のと戦う魔物の姿を見た。


「ワイバーン達か。頑張っているんだな」


 空からキマイラを強襲するワイバーンは、二体同時に噛み付き、別の固体は体当たりなどで攻撃していた。

 ちゃんと、複数で魔物に当たるというのを実行しているようだ。

 よく見ると、ボスワイバーンが空で滞空しながら指示をするように声を出していた。

 しかも、途中途中で援護するように魔法を吐き出している……ちゃんとボスをやっているんだなぁ。


「おぉ、キマイラを倒した。数で勝っているとはいえ、Cランクの魔物がAランクの魔物を倒すのは、ちょっと驚きだね。まぁ、やって欲しいとお願いしたのは俺なんだけど……」


 数体が群がり、一体のキマイラを倒す。

 徐々に近付いていく中で、キマイラの全身に無数の傷が刻まれているのが見えた……複数で戦った成果だろう。

 とはいえ、何体かのワイバーンも傷を負ってしまったらしく、動かなくなったのを無傷のワイバーンに連れられて空へ浮かんで治癒している様子。

 そりゃ、ランクが違えば強さも違うわけで、いくらワイバーンが空からで複数といえど怪我くらいはするか。


「まぁ、俺が治療する必要はないんだろうけど……さすがの再生能力だ。っと……危ない!」


 おそらくガルグイユだろう、空に向かって風の刃が二つ、ほぼ同時に発動して向かうのがかすかに見えた。

 足を速めてジャンプし、その風の刃目掛けて剣を振るって消失させる。

 ついでに、着地する際にガルグイユも剣で斬り裂く……石像のガルグイユは、全身を破壊しなければ倒せないんだけど、そこはそれ、剣の魔力吸収のおかげで簡単に倒せてしまう。

 やっぱりこの剣、かなり便利だ。


「ガァゥ、ガァガァ~」

「大丈夫か~?」

「ガァ~」


 空からボスワイバーンの声が聞こえ、頭上を見上げて手を振りながら様子を聞く。

 エルサがいないから通訳はできないけど、頷くような仕草などから大丈夫な事は伝わって来る。

 他のワイバーン達も、俺に顔を向けてそれぞれに鳴いたり動いたりと、問題ない事をアピールしているようだ。

 と、一体のワイバーンが俺の近くに降り立った。


「どうしたんだ……?」

「GAU、GA~?」


 首を傾げる俺を見て、体を丸めるワイバーン。

 楽しそうな様子もあるから、以前のワイバーンボウリングのように撃って転がせと言っているようだ。


「いや、あれはそれなりに効果的な攻撃だとは思うけど……相手が相手だし、向こうの方が数が多いから、今回は止めておいた方がいいと思うよ」

「GAA!? GAU~……」


 苦笑しながらの俺の言葉に、残念そうな声で鳴きながら再び空へと戻るワイバーン。

 そんなに転がりたかったのか……。

 でも、向こうは文字通り石頭のガルグイユや、AランクやBランクの魔物がひしめき合っている。

 ボウリングの球のように、勢いよくワイバーンを転がすのは攻撃方法として悪くはないと思うけど……以前のように転がる限り魔物全てを蹴散らせる、なんて事はないだろう。


 最悪の場合、受け止められて捕まって……なんて事もあり得る。

 それがなくても、途中で止まってしまえば魔物達のひしめく中にワイバーンが一体だけ。

 同じ魔物なのでどうなるかはわからないけど、敵対視されていたら袋叩きだ。

 弱い魔物達ならいざ知らず、強力な魔物の中に転がっていくのは自殺行為とも言えるだろうからね。


「ふっ……はぁ! っと、よし。俺はこのまま南に行くから、注意して戦うんだぞー!」

「ガァウ、ガァー!」


 近付いてきた魔物を剣で屠り、ボスワイバーンに手を振って再び南側へ向かう。

 ボスワイバーン達のいるここは、南と中央の間……センテ側の人達が手薄な場所でもあり、南のヒュドラーと中央のヒュドラーの間地点で、集団行動からはぐれた魔物が突出しやすい場所になっているようだ。

 特に南側は、冒険者さん達が守る場所なだけあって、攻撃の手が薄い……というか攻撃に参加する人数が少ない。

 だからワイバーンに任せたんだろう。


 ボスワイバーンも、ちゃんと複数のワイバーンで一体の魔物を相手にするようちゃんと指示しているみたいだし、味方に引き入れていて良かった。

 ボスワイバーンからの声を背に、南へと向かいながら再び足止めをしつつ走った。



「リク様ー!」

「ん……?」


 頭上から俺を呼ぶ声……思わず足を止めて……あ、注意が一瞬だけ逸れたからか、魔物達の方へ撃とうとしていた、限定方向マルチプルアイスバレット……限定アイスの威力というか弾数が多くなってしまった。

 まぁ、多くの魔物を倒せるのは悪い事じゃないか。

 輝く剣の魔力吸収と、センテ周辺を渦巻く負の感情で魔力回復量増加が合わさって、俺自身の魔力量は北のヒュドラーと戦っていた時より多いくらいだし。

 ……むしろ、ほとんど魔力が満ちている状態に近いか。


「リク様!」

「あぁ、リネルトさんでしたか」


 空から降り立つワイバーンの背から、リネルトさん。

 上空監視をしていて、俺を見つけたんだろう。


「空から確認しておりましたが、北と中央のヒュドラーの討伐を確認し、その後魔物達の勢いが衰えています」

「成る程……ヒュドラーがいたから、強気に進行していたのかもしれないですね。報告ありがとうございます」

「いえ、リク様を見つけたら報告しろとアマリーラ様からの指示ですので」

「俺よりも、軍を指揮している人達に報告した方がいいんじゃないかと思いますけど……」

「そちらは、別の者がやっておりますから。私は、全体を行き来してリク様を空から探し、発見するごとに報告しようかと」


 俺に対して、厳密に報告する必要はそこまでないと思うけど……でも情報がもらえるのはありがたい。

 空に散らばっている、ワイバーンに乗った兵士さんが上空監視の報告をしているのなら、俺以外にもちゃんと情報が行っているんだろう――。




リネルトさんが報告に来てくれたようです。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


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