とりあえず剣が便利だとわかれば十分
「魔力を吸収したら、魔法が消えるのかな? まぁ、今は深く考えている場合じゃないし、とにかく急ごう!」
魔物を斬り裂き、時には魔法で一掃しながら、飛来する魔法はどうしてもの時以外結界で防御する事はせず、剣で魔物も魔法も関係なく切り裂きながら進む。
途中、ふと気付いて一部の魔法を避けるようにしたら、別の魔物に当たってくれたりもして……やっぱり、魔物は種族が入り混じっているせいで連携とかは考えていないんだと、確信を深めた。
あとほとんどが剣を振るう事にしたため、魔力放出モードと魔力吸収モードの切り替えに、少しだけ戸惑ってもたついたけど。
まぁ、結界を張って防御しながらよりは、かなり早く進めたかなと思う。
「ヒュドラー……こっちのは、首が六つか。本当に、個体によって首の数が違うんだなぁ」
魔物ひしめく集団の中、巨体のおかげで遠目にも確認できたヒュドラ―。
俺が北側で戦ったのと違って、こちらは六つの首のようだ。
遠目で確認しただけだから詳細はわからないけど、首が少ない分、それぞれの首が連携しているようにも感じる。
一部は、同じく遠目で確認したエルサによって威力が増された遠距離攻撃を警戒して、石壁の方を見ているようだけど。
「地面を見つめて、そちらに魔法を使っているのもいるから……そこでマックスさん達が戦ってくれているんだろうね……抜けた!」
少し方向を変え、センテ側に進んで魔物の集団から抜け出す。
俺を追って来ようとした魔物には、規模を小さくして集中する時間を減らしたマルチプルアイスバレットを、後方に絞って発動。
死骸になった魔物が邪魔になり、さらに後方からの魔物は俺を追いかけられなくなり、さらにセンテへの進行も少しだけ遅くなる……まぁ、こちらは気休めだけどね。
魔物達は、自分以外の死骸なんて気にせず乗り越えようとしているから。
その後も、マックスさんが戦っているであろう場所を見つけ、そこへ向かって走るついでに、一定間隔で魔物の集団へ向かってマルチプルアイスバレットを使って行く。
魔物の死骸で、小さな壁を作っていく感覚だね。
これまでにも何度か、全方位に向けて使ったりもしていたから、北から中央にかけては魔物の進行が遅くなってくれるはず。
一部、強めにやり過ぎて魔物の群れの中にありながら、半径数十メートルくらいぽっかりと空白地のような場所ができたけども……まぁ、空白と言っても魔物ん死骸で埋め尽くされているんだけどね、生きているのもいたし。
「見えた! マックスさん達だ! 魔法鎧は目立つなぁ……」
魔法を使いながら、足を止める事なく走り続けた俺の目に、大きな魔法鎧を着た人物の姿三つ。
一つは同じくらい大きな盾……さっきモニカさん達の所で見た、タワーシールドをヒュドラーに向けて構えているから、あれがマックスさんだろう。
盾の後ろに他の魔法鎧を着た人物、ヤンさんと元ギルドマスターだろう姿があった。
良かった、三人共無事みたいだ。
「って、あれは危険な気がする!」
戦闘中ではあるけど、無事な姿にホッとしたのも束の間……ヒュドラーの各首から、魔法が吐き出すようにマックスたちへと向けられる。
鉄や地面すら融かす熱量を持つ溶岩石、さらに勢いと大きさの物量で押す岩石。
「波状攻撃みたいなものかな……っ!」
マックスさん達のいる場所へと向かう足を、さらに速める。
ヒュドラーが、さらに氷の塊と酸を吐き出すのが見えたから。
マックスさん達なら、盾と魔法鎧で岩石類や氷の塊は耐えてくれるとは思うし、酸も避けてくれると思う……けど、頭の中で危険という警鐘が鳴っている気がしたんだ。
横から見ている俺にはわかるけど、岩石類の後ろに氷の塊と酸が隠されるように吐き出されていて、正面にいるマックスさん達からは見えていない可能性もあるし。
「……マックスさん! くぉのぉ!!」
ヒュドラーから吐き出される攻撃と、マックスさんの構えている盾の間に割り込み、輝く剣を振るう。
岩石、溶岩石、氷、酸、それぞれを順番に斬るようにして剣身を触れさせ、消失させていく。
襲い掛かる魔法がなくなり、ほんの少しの間があった後、盾の向こう側からマックスさんの声が聞こえた――。
――ヒュドラーやガルグイユなどから、散発的に襲い掛かる魔法での攻撃を、輝く剣で消しながら待っ屈さんと話す。
マックスさんやヤンさん、元ギルドマスターの三人は魔法を消失させられる事に驚いていた。
魔力を全て吸収したから単純に魔法その物が消えているんだと思っていたけど、どうやらちょっと違うみたい。
ただ、今ここでどうしてそんな事ができるのかを話し合っている暇はないので、とりあえずそういうものと考えるようにして話を切り、ヒュドラーへと向かう。
元ギルドマスターが怪我をしているようだったし、レムレースの事もあって結構時間が経っちゃっているから、早く片付けないと。
幸いにも、こちらにはレムレースやそれに匹敵するような、ヒュドラー以外のSランクの魔物はいないようだから、ヒュドラーさえ倒せば落ち着くはずだ。
後ろには、一番数が多い王軍やエルサが控えているからね。
「さてと……んっ! 何度やっても無駄だから、諦めて帰ってくれないかな……ってのは、言っても無駄かぁ」
ヒュドラーへ近付く俺を、魔法を消失させた事もあって脅威と認識したのか、ヒュドラーが六つの首を俺に向けて攻撃を仕掛ける。
ヒュドラーの巨大な体の向こうからは、ガルグイユの魔法が複数降り注ぐけど、それらすべてを輝く剣で振り払った。
呟きながら、少し足を速めてヒュドラーに向かって逆手に持った剣を、位置的にお腹っぽい場所へと突き刺す。
「ギギャ、ギギャー!!」
北側のヒュドラーと同じく、魔力吸収モードの剣が突き刺さったヒュドラーは、六つの首を振り回し、悶えて苦しみ始める。
「っとと。結界! ついでに、俺の周りにも結界……っと」
苦しみか痛みか、首を振り回し、体も暴れさせるヒュドラー。
突き刺さった剣ごと俺を振り回すので、剣を離さないよう地面と平行にいくつかの結界を張り、部分的に足が付ける状態にしておく。
さらに、ヒュドラー後方から放たれるガルグイユの魔法を防御するため、俺自身の周りも結界で覆って動きに合わせるようにしておいた。
剣がヒュドラーの魔力を吸収している間は、突き刺したままにしておかないといけないし、防御には使えないからね。
「フシャー!!」
「グギャー!!」
「……あんまり、俺を守る結界はいらなかったかも」
暴れ回るヒュドラーは、魔力が吸収されているのがわかっていて節約みたいな感覚なのか、魔法を使う事はない。
けどその代わり、ドシドシと足で地団駄を踏むようにしながら、首と体を暴れ回させる。
当然、周囲に集まっていた魔物達……北の時と同じように、正面に魔法を吐き出すためマックスさん達との間にはほとんどいないが、その後方。
ガルグイユや他の魔物がひしめいている場所すら、踏み潰していく――。
多少なりともヒュドラーが他の魔物を巻き込んで潰してくれているようです。
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