到着する応援
「はぁ……ふぅ……助かった。こ、これでもうしばらく持ち堪える事ができるな」
「せやぁっ! っと。……何を言っているのソフィー、持ち堪える必要なんかないわ」
「何?」
ソフィーの言葉は、フィネさんや母さん、何より私の心からの声だったのだけど、マンティコラースを斬り伏せるルギネさんからは、否定にも取れる言葉が出た。
持ち堪えなくていいって、どういう事だろう?
「盾隊、前へ! 魔物を抑えてくれていたマリー殿達を守れ!」
「「「はっ!」」」
「え? あ、え……?」
ルギネさんの言葉にどういう事かと聞き返すより早く、私達の後ろから鋭く号令を出す誰かの声。
それと同時、大きな盾を構えた人達が私達の横を通過し、前面に展開。
大きな盾……タワーシールドと呼ばれる、人よりも大きな物、確かカイツさんがワイバーンの皮を使って改良していたのよね。
「私達が四人だけで来たと思っていたの? そんなわけないじゃない。ちゃんと、応援を連れて来ていたのよ」
「それでも、早くいかないと危険だからってルギネが言うから、私達が先に来たのよねぇ」
「よ、余計な事は言わなくていいのよ、アンリ!」
ルギネさん、私達の危機を察知して急いで助けに来てくれたんだ……。
リクさんとの事はライバルというか、油断できない相手として見ていたけど。
「っ! 隊長、魔物圧が強く、長くはもちません!」
大きなタワーシールドは、カイツさんの想定通り丈夫なためか壊されていないけど、魔物の突進や魔法攻撃などを防いでいるため、強烈な圧がかかっている様子。
そのため、じわじわと押されて一列に並んだ盾隊は少しずつ崩されつつあるようだ。
盾だけが丈夫でも、それを使うのは人間だから……父さんが指揮していた弱い魔物相手のようにはいかないみたいね。
見ているだけじゃ駄目、私もルギネさんや母さん達と協力して、援護しないと……。
「わかっている! 一番から五番小隊前へ! 盾隊を支えろ!」
「「「「「はっ!!」」」」」
「六番から十番小隊、盾隊の向こうにいる魔物に対し一斉攻撃! 近くから思いっ切りぶちかましてやれ!!」
「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
少しだけ余裕ができたおかげで、働き始めた頭と体を動かし、魔法攻撃を盾の向こう側に加えよう……と準備したその時、再び先程と同じ声の号令が響いた。
その瞬間、後ろか駆け込んできた兵士さん達が、盾を持った兵士さんを支えて魔物達の圧を抑え、さらに後方からは私達だけでなく、盾を越えるような山なりになった魔法の数々が放たれる。
様々な音が、盾隊の向こう側から聞こえて来る……大量の魔法が魔物に当たったのね。
魔物のものと思われる、人ならざる悲鳴のような声? 音? なども聞こえてきたわ。
「しばらくは持ち堪えられそうね。今のうちに、私達は下がるわよ」
「そうね……母さんが一人残る事にならなくて、良かったわ……」
侯爵軍の様子を見て、体の力を抜いた母さん。
私も、母さんを残して逃げる事にならなくて、安どの息をもらした。
「リクの影響かしら? 無茶するんだから……でも、助かったわ。娘に助けられるなんて、私も衰えたもんだわよ」
「何を言っているの、母さん。父さんもここにいたら母さんを一人残すなんて、しないんじゃない?」
「あの人は……むしろ自分が残るって言うんじゃないかしら?」
「……それもそうね」
母さんと話しつつ、ある程度の警戒と緊張感を残して、ソフィーやフィネさんと一緒に一旦後ろに下がる準備。
二人は、安心感から力が抜けたのか、武器を杖代わりにして立つのがやっとの様子ね。
私や母さんの前に出て、剣や斧を振り続けてくれていたから、身体的な疲労が凄いんだろう。
母さんと手分けして、二人それぞれに肩を貸す。
侯爵軍が前に出てきた時点で、ここで私達が戦い続ける意味は少なくなっている……援護とか、協力とかはしなきゃいけないけど、消耗した今の状態じゃ邪魔になるだけだからね。
盾隊が魔物を抑えている今は、一度下がって休んでからまた戦いに参加しなくちゃ。
「ぐっ……あぁぁぁ!!」
「うあぁぁぁぁぁ!!」
「っ!?」
魔物達のいる方へ背を向けて歩き出そうとした時、急に辺りに響く悲鳴。
驚いて振り返ると、地面が何か……おそらく魔法によって爆発し、盾隊がタワーシールドごと吹き飛ばされていた。
……いかに頑丈な盾だとしても、地面を爆発させて浮かせば防ぎようがないってわけね。
地中深くまで盾を埋めるなんてできないから、仕方ないけど……でも、そんな考えを巡らせて魔法を使うなんて、ここまででなかったのに。
私達が戦っている時は、ただ目標に向かって魔法を放つだけしかしてこなかったはず……。
「……どうやら、頭の切れる魔物も中にはいるみたいね」
フィネさんを支えながら呟く母さん。
その視線は、盾隊よりも向こう側を見ていた。
「怯むな! 十一番予備隊、吹き飛ばされた盾を持ち、隊列を組み直せ! 十五番隊、怪我をした者を回収しろ! 六番から十番魔法部隊、攻撃の手を緩めるな! 力を出し尽くせ!!」
「「「「「はっ!!」」」」」
号令によって前に出た兵士達は、吹き飛ばされた人から盾を受け取り、代わりに空いた穴にまで持って行って隊列を元に戻す。
怪我をした人は、また別の兵士達に回収されすぐさま後ろに連れて行かれる。
さらに私達よりも後ろに陣取った、数十人の兵士達……魔法部隊からは、数多くの魔法が途切れることなく撃ち続けられ、魔物のいる所へ降り注ぐ。
「さっきの様子を考えると、あれじゃ駄目ね。魔物を少しずつ倒しては行っていると思うけど、さっきの盾隊の一部を吹き飛ばした魔法の使用者……使用させた者かしら? は捉えられないと思うわ」
足を止め、兵士達に守られながら盾隊の向こうを見つめる母さん。
その母さんが言った通り、横一列に並んだ盾隊のあちこちで地面が破裂、また数人の兵士が吹き飛ばされた。
空いた穴には、また別の兵士が盾を受け取ってすぐさま埋めるよう動いているけど……このまま続けばいずれは盾隊を魔物が突破されるような気がする。
「……母さんは、わかるの?」
「地面を爆破……炸裂させている魔法。その使い手を知っているわ。相対する存在の隙を突いて魔法を扱う厄介な魔物よ。ガルグイユのように魔法の同時発動はできないはずだけど、威力や種類が桁違いなの。私やあの人がまだ冒険者だった時に遭遇して……命からがら逃げだしたわ」
悔しそうに歯を噛みしめ、遠くを睨む母さんは昔の事を思い出しているのか、吹き飛ぶ盾隊の兵士達に何もしてやれないのが悔しいのか……どちらなのだろう。
「母さんと父さんが!?」
驚く私の声を遮るように、再び並ぶ盾隊の足下が爆発して数人がタワーシールドと共に吹き飛ばされる。
幸い、まだ吹き飛ばされている兵士達は怪我だけで済んでいるようだけど……このまま続けば魔物に突破されて私達ごと、魔物に飲み込まれる。
「あれは、私達だとかは関係なく……人間に倒せるような魔物じゃないわ。死霊の集合体……洞窟なんかの暗く日の光が一切届かない場所で漂っているだけのはずなのだけど……」
いるはずがないと思っていた魔物が現れたようです。
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