遊撃隊と伝説
「ようやく、私達の事を気にしたか。まぁ、他の話ばかりで言っていなかったせいでもあるが」
「それもリクさんらしいというかなんというかね。でもリクさんは、侯爵様達と全体の作戦とかを話していたから、仕方ないわ。私達の事は、些細な事だもの」
「いや……さすがに些細な事とは思っていないけど……大事な仲間だから」
常に気にしていたか、と問われると首を振るう事にはなるけどね。
でもさすがに、これまでずっと一緒にやってきた仲間たちの事を一切考えなかったって事はない。
それよりも、シュットラウルさん達と全体の動きだとか、ヒュドラーの対応やら、考える事や話す事が多過ぎたってのはある。
「リクから大事な仲間、と言われるのはなんだか面映ゆいな」
「リクさんって時折正面から、会心の一撃を繰り出すわよね……」
「会心の一撃って……」
エルサでもないのに、そんな言葉を使うモニカさん。
この世界にも、会心の一撃って言葉があるんだなぁ。
頬を指先でポリポリとかきながら、そっぽを向くソフィーに、少し頬を赤くして俯き加減のモニカさん。
また何か変な事を言ったんだろうか……?
「……リク様、私達は遊撃隊となっています。少数なので、できる事は多くありませんが……複数ある遊撃隊のうち、私達はまずリク様の補助や援護をと」
「俺の? って、遊撃隊なんてあったんだ」
話をしづらい様子のソフィーやモニカさんに代わり、フィネさんが教えてくれた。
聞けば、少数でのまとまりが多く自由な冒険者という特性を生かして、遊撃隊をいくつか作っているらしい。
……ベリエスさんからは聞かなかったけど、話していた時は主に全体の動きに関してが多かったから、細かい事を話す暇がなかったんだろう。
で、モニカさん達はマリーさんを加えたうえで四人の遊撃隊として、俺を助ける役目をするつもりなんだとか。
マリーさんも含めて、Bランク相当で固めてあるうえに連携も十分なため、邪魔になる周辺の魔物達を牽制する……あわよくば倒す役目を担おう、という考えらしい。
他の兵士さんや冒険者さんなり、そういう役目をする人を配置するような事は言われていたから、それがモニカさん達なら安心して任せられる。
もちろん、モニカさん達だけって事はないだろうけども。
……ヒュドラーの攻撃に巻き込まれないようにする必要はあるけど、それはモニカさん達に限った事じゃないし、近くにいてくれるなら何かあった時に対処しやすくて、俺も助かる。
「って、マリーさんも参加するんだ?」
「まぁ、母さんもこういう状況で黙って見ていられる人じゃないから。むしろ、父さんより燃えているんじゃないかしら?」
「未熟な冒険者達に、手本を見せてやると張り切っていたな。これまでの戦いでは、兵士を率いていたから冒険者達とは共に戦っていないのを気にしているようだ」
「マリーさん、若手を鍛えるのが好きみたいだからね」
ただし鍛える時、鬼教官のようになるけど。
冒険者さんだけでなく、王城では新兵さんに対しても厳しく指導していたくらいだ。
「ですが、実力も伴っていて……引退したというのに、現役のBランクである私よりも的確な動きをされます。あの伝説は、まさしく本当だったのだと近くで見ていて確信しました」
「伝説……?」
「あ~、あの話ね……」
「なんの事だ?」
フィネさんがマリーさんの実力を認めているのはともかく、伝説というのが気になった。
モニカさんはわかっているようだけど、俺とソフィーはなんの事かわからず首を傾げる。
「ソフィー殿は、確か以前はこのセンテを拠点に冒険者をやっていたのでしたね。なら、あまり知らなくても無理はないと思います。王都や一部の街にある冒険者ギルドで、未だ語られる伝説があるんです」
「私は、母さん達から直接聞いているから……父さん達の冒険者パーティの活躍についての話よ。本当に一部だけでしか語られていないし、伝説という程ではないと思うんだけどね。リクさんの方がよっぽどだし」
マックスさん達の冒険者パーティの活躍って事は、ヤンさんもそうなのか。
まぁヤンさんはギルドマスターになるくらいだし……そういえば、ヘルサルの冒険者ギルドに初めて行った時、柄の悪い人から絡まれそうになって、ヤンさんがマックスさんの推薦と言っただけで、すぐに逃げて行ったっけなぁ。
もしかしたら、伝説とやらを知っていたからかも知れない、ヘルサルは獅子亭があるから単純にそこ繋がりでマックスさんとマリーさんの事を知っていただけかもしれないけど。
それはともかく……。
「俺がよっぽどって……」
「リクに関しては、既に伝説として語られていると思うぞ? 最速のAランク昇格に、魔物の討伐などの貢献などだな。この分だと、最速でSランクにもなりそうだ……」
「リク様は、間違いなくこれから国中に……いえ、他国でも伝説として語り継がれるでしょう。既に、それだけの事をしていらっしゃいますから」
「えぇ……?」
そんな、伝説とか語り継がれるって……ま、まぁ、ドラゴンのエルサっていう、特級の話題になりかねないのと契約して、連れているけども。
それはともかく、マックスさんやマリーさんの話についてだ。
「はぁ……ちょっと恥ずかしい話だから、また今度にしましょう。できれば、私からは言いたくないわ」
「モニカさんに関わる話もあるのですけど、そうですね。長くなりそうですし、いずれ。もしかしたら、私からでなくとも別の場所で聞く機会があるかもしれませんが」
「む、少々残念だが、仕方ないか」
「俺も気になるけど、そうだね。今はマリーさん達の昔の話をしている場合じゃなく、これからの事を話さないと」
モニカさんが嫌がった事で、この話はまたの機会にとなった。
フィネさん曰く、モニカさんに関わる話もあるらしいので俺としてもかなり気にはなるけど……無理矢理聞き出す事でもないからね。
……もしかしたら、伝説と呼ばれる話があるからこそシュットラウルさんは、マックスさんとマリーさんにそれぞれ部隊を任せたのかもしれない、ヤンさんの策略もあったみたいだけど。
機会があれば、王都の冒険者ギルドで話を聞いてみるのもいいかもしれないね。
何はともあれ、モニカさん達はマリーさん指揮の下、ヒュドラーと戦う俺の援護をしてくれる。
さすがに直接は危険なので、遠くから魔法で援護をしたりとか、ヒュドラーと戦う俺に対して向かって来る他の魔物と戦う役目だ。
全てをカバーできるわけじゃないけど、複数でかかればある程度の魔物なら倒せると思う……Bランクの魔物もいるわけだし。
モニカさん達なら、キマイラともある程度戦えそうではあるけど……あまり無理はしないようにだけ伝えた――。
――兵士さん達、冒険者さん達を鼓舞し、各自の役割や動きを話し合った翌日。
朝食を食べている俺達がいる食堂へと飛び込んで来るアマリーラさん。
「リク様、ヒュドラー三体、他の魔物達も接近を確認しました! 皆様と共に至急東門へとシュットラウル様からの通達です!」
「んっ……んぐ……! わ、わかりました、すぐに行きます!」
アマリーラさんからの報告に頷き、ほぼ食べ終わっていた料理の残りを口の中に突っ込んで終わらせ、椅子から立ち上がった――。
魔物達がセンテにかなり近づいてきたようです。
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