ヒュドラーの足止め役
「……ん?」
「リク様、どうかしましたかぁ?」
「いえ、ちょっと……」
シュットラウルさんとマルクスさんに、ヤンさんやベリエスさんが混じってヒュドラー足止め作戦について話している傍ら、深く思考している時ふと思いつく事があった。
思わず声を出した俺に気付いた、話の行き先を見守っていたリネルトさんから、不思議そうに尋ねられるけど、手を挙げて制して思いついた事に集中する。
単独とまでは言わなくても、俺以上に戦えるのがいる……よね?
そりゃ、膨大な魔力量で力任せにというわけではないから、ヒュドラー相手にどうなるかわからないけど。
でも技術としては、ここにいる誰よりも上。
というかAランクで引退したけど素行に問題がなければ、Sランクも夢じゃないとまで言われた、エアラハールさんをも圧倒する実力の持ち主。
しかもおあつらえ向きに、もう一人同じかはわからないけど近い実力っぽいのが、協力してくれている。
まぁ、不本意っぽい事を言っていたから、積極的に協力してくれているわけじゃないけど、多分大丈夫そう。
あとは……協力し合って一緒に戦うのに、反発し合わないかが心配だ。
けど頼んでみるのも悪くなさそうだ。
「シュットラウルさん、マルクスさん。他の皆さん。ヒュドラー二体のうち一体ですけど……もしかしたら、足止めを任せられるかもしれません」
話し合うシュットラウルさん達に手を挙げて割り込み、自信なさそうになりつつも、そう言った。
「うん? 任せられる、とはどういう事だリク殿?」
「言葉通り、倒せる……かはわかりませんけど、ヒュドラーを足止めできる人物に心当たりがあります」
どうなんだろう、もしかしたら倒せるのかもしれないけど……あまり自信を持って言えないのは、本人達がここにいないからで、頼んでも断られる可能性があるからだったりする。
足止めだけなら、確実にできると思う。
「すみません、えっと……どなたか、ユノを呼んで来てもらえますか? 東門辺りか外で戦っていると思いますので」
「ユノ殿……?」
「では、私が行きますよぉ。ワイバーンに外で待ってもらっているので、飛んで行った方が走るより早いでしょうからぁ」
「リネルトさん、お願いします。あ、あと手が空いているようだったら、モニカさんとソフィー、それからフィネさんもお願いします。 全員はワイバーンに乗れないと思いますけど、とりあえずこちらに向かうように伝えて下さい!」
「畏まりましたー!」
話す前に、今戦いに向かったはずのユノをここに呼んで来てもらえるようお願い。
首を傾げるシュットラウルさんとは別に、リネルトさんが引き受けてくれた。
走って行くよりも、建物を簡単に越えられるワイバーンで行った方が、行きも帰りも早いだろうからありがたい。
こんな事なら、ユノも一緒にここに来れば良かったなぁ……とは思うけど、後悔先に立たずだ。
モニカさん達にも頼む事ができたから、どちらにしろこれで良かったのかもしれないけど。
「……リク殿、ユノ殿ならなんとかなるという事か?」
外へと駆けて行くリエルとさんを見送り、改めてシュットラウルさんが俺に問いかける。
「多分、ですけど。ユノはルジナウムでキマイラやキュクロプス相手にも、剣と盾だけで簡単に倒していました。ヒュドラー相手にどうなるかはわかりませんが、足止めくらいはできるでしょう」
「ふむぅ……一番過酷で、難しい事をあのような年端も行かない少女に任せる、というのは気が引けるが……確かに、私が見る限りでもユノ殿は見た目とは違い、凄まじい実力者なのは間違いない」
戦闘技術、という点でなら俺なんかはユノに絶対敵わない。
確か破壊神が、ユノは人間になる際にそういった技術を創造して……みたいな事を言っていたような気がするから、人間離れしていて当然なのかもしれないけど。
「ふむ、ユノ様が……成る程、確かにそれならば」
マルクスさんは、口元に手を当てて何やら納得している様子。
もしかしたら、姉さんとかからユノが創造神だなんだという話をされているのかもしれない。
「ユノは魔法は使えませんが、剣の腕は俺以上です。もしかしたら、誰も敵う人がいないんじゃないかと思うくらいですから」
「それは確かに、次善の一手を兵達に教えるところを見ていた私も同意する。だがしかし、さすがにユノ殿といえど魔法も使わず、ヒュドラーの足止めを一人でというのは無茶ではないか?」
まぁ、ヒュドラーが魔法をまき散らしても、防御手段とか逸らす方法が盾しかないからね。
首が複数あって独立して動くヒュドラー相手に、一人でというのは無茶のように思えるだろう。
「もう一人……多分ユノに匹敵する人物を知っています。それも、今このセンテにいる人物です」
「あのユノ殿に!? そんな人物が他にもいると言うのか?」
俺の言葉に、驚くシュットラウルさん。
マルクスさんも、声こそ出さなかったけど目を見開いて俺を見ている。
ユノが創造神……という話をされていたのなら、それに匹敵すると言われたら驚いて当然だよね。
「ロジーナ……という名前を聞いていると思います」
「……確か、東の魔物との戦闘で、目覚ましい戦果を出している少女の事か?」
ロジーナの事は、シュットラウルさん達も報告で聞いているんだろう、ここにいる全員が頷いていた。
ヤンさんやベリエスさんは、東側に行っていたのでおそらく実際に見てもいるはず。
「はい。詳しくは今話せませんし、この目で実力を確かめたわけではありませんけど……ユノと同等と考えていいと思います」
創造神のユノと表裏一体の破壊神が、人間になったからとユノより劣るとは考えずらい。
実際に、単独で魔物達の所に突撃して薙ぎ倒しつつも、無傷だからね。
「それほどの実力者だったのか……」
「ユノ様と同等……しかしそれは……」
素直に俺の言葉を信じてくれて感心するシュットラウルさん達とは別に、マルクスさんだけは戸惑っている様子だった。
やぱり、ユノが創造神だとかって話を聞いているんだろう。
あの話を聞いていたら、ユノが強い事に疑問はもたなくなるかもしれないけど、逆に同等の強さと言われたらそちらに疑問が沸いて来るのも仕方ない。
「マルクスさん、大丈夫です。ロジーナに関しては今のところ、味方でいてくれるみたいですから」
「は、はい……リク様がそう仰るのであれば。わかりました」
戸惑うマルクスさんには、後で諸々の事情を話すかもしれないとして、今は声を掛けてとりあえずは納得してもらっておく。
今ここで、破壊神がどうのとか話すのもあれだからね。
「ユノとロジーナ、二人でヒュドラーに当たれば確実に足止めできると思います。もしかしたら、倒してしまうかもしれませんが……」
「足止めどころか、討伐できるのであれば喜ぶだけだな。よし、一体はそれでなんとかなりそうだ……が、残りの一体をどうするかだな。リク殿が一体目と戦っている間、こちらも死力を尽くして足止めをするべきか……」
ユノとロジーナで足止め、もしくは討伐をしてもらうとして……担当のお願いはこれからだけど。
ともかく、残りの一体をどうするのかだ。
シュットラウルさんは一体ならば、なんとか時間稼ぎする事ができるかも、と考えているみたいだね――。
残りの一体をどうするかが、課題になりました。
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