最初から干渉されていた
「な、何をとち狂ったのだわ、この駄神はだわ!?」
「えー、ひどいよ駄ドラゴン!」
「素が出ているけど……」
エルサの言葉に反応して、駄ドラゴンと言わずにいられないのは、無邪気な笑顔のままでも間違いなく破壊神だという事を示している。
けど、この女の子は……。
この世界に来て、冒険者になる前の事を……そこまで時間は経っていないはずなのに、ずいぶん昔に感じる記憶を掘り起こした。
「も、もしかして……ロジーナ……?」
「お兄ちゃん、覚えててくれたんだね!」
名前を呼ぶと、それこそ笑顔が弾けるという表現がぴったりな程、喜ぶ破壊神。
「一体どうして……え? でも……」
「混乱しているの、お兄ちゃん?」
戸惑う俺に、純真無垢に見える顔を向けるロジーナ、いや破壊神。
ロジーナが破壊神で、破壊神がロジーナ? いや、神様だったらその姿に似せているだけって事もあり得るのか。
でも、俺が冒険者に興味を持った事や、剣が使えない話をした事を知っているのなら、もしかしてロジーナ本人?
いやいやでも、神様だったらあの時話した内容を知っていても、おかしくないのか……?
「いい加減気持ち悪いのだわ……」
「気持ち悪いって酷いよ駄ドラゴンさん? んんっ! ふぅ……こっちの喋り方の方が、楽だからいいのだけど」
ひたすら混乱する俺と違って、冷静というか本当に気持ち悪いといった声を出すエルサ。
ロジーナと会ったのは、エルサとの出会いよりも前だから、知らなくても当然か。
確かに、これまでの破壊神とはその存在感や雰囲気をがらりと変えて、本当に小さな女の子になり切ったような喋り方と表情は、気持ち悪く感じるけども。
破壊神の方も、これまでの話し方の方が楽なのか、エルサを睨みながらこれまで通りの気配と喋り方に戻った。
「一体、どういう……?」
「ふふふふ、リクが驚くのも無理はないかしら? 私はあいつとは表裏一体なの。いつもは干渉しないけど、面白そうだったから。それにリクったら、すぐにその馬鹿魔力でとんでもない事をしでかすと思っていたのに、なぜかそこらの人間に溶け込んでしまったからね」
「馬鹿魔力って……」
「そこだけは、間違っていないのだわ」
エルサまで……以前から、それらしいことは言われていたけど……破壊神にまで馬鹿魔力と言われ始めた。
あれ? 隔離されたていた時も言われてたかな?
「神をも退ける魔力を持っておいて、それ以外の表現を私は知らないわ。しかも、あの時よりさらに魔力量が増えているようだし……意味がわからない馬鹿魔力よ」
うぅむ……そこまで言われると確かに、自分が常識外れの魔力を持っているような気になってしまう。
……さすがに、異常な魔力量ってのは自覚していたけど、破壊神にまで言われる程とは。
でもやっぱり、俺の感覚だけじゃなくて本当に魔力量が増加しているんだなぁ。
「そ、それで……俺の魔力はともかく、一体どういう事なんだ?」
「簡単な事よ。私はこの世界に来たリクの事を興味深く見ていた。でも、全然戦いに身を投じる気配がなかったのよね……それじゃ見ていて面白くないわ。戦って、人間や私の創った魔物を破壊するところが見たかったの。だから、一計を案じたってわけ」
「一計を……それじゃもしかして……?」
ロジーナと初めて会った、あの時の事をはっきりと思い出す……実際にロジーナと会って話したのは、乗り合い馬車に乗ってヘルサルからセンテに向かう時だけだったので、すぐに話していた内容を思い出せる。
「そう。剣や冒険者に興味を持っている風を装って、リクに興味を持たせるように仕向けたのよ。剣を持っているのに、使えないというのには少し驚いたけどね」
「あれは……戦った事がない俺を案じて、マックスさんが持たせてくれたものだけど」
ロジーナは、馬車で一緒になった俺……というか剣に興味を持って話しかけてくれた。
「でもそういえば、あの時ソフィーも一緒に馬車にいたから……」
「えぇ、そういえばそんな女もいたわね」
剣に興味を持っているなら、最初から冒険者然として剣を携えていたソフィーに話し掛ける方が良かっただろう。
俺なんて剣を持っている以外、平凡な服装だったし……皮の鎧を身に付けているソフィーの方が、興味を満たせられるはずだ。
それに、ロジーナくらいの女の子なら、俺みたいな男に話し掛けるよりも、女性に話し掛けた方が自然というか、話しかけやすいからね。
……ソフィーが、子供が話し掛けられない硬い雰囲気を持っているとかは、頭の隅に追いやっておこう。
「剣をきっかけに、リクが冒険者に対して興味を持つように仕向けたってわけよ。破壊をするなら、戦うのなら冒険者が一番向いているから。兵士とかでも悪くはないんだけど……そちらは戦争とか、今のような大量の魔物が襲って来る時じゃないとね」
「そんな……」
俺はまんまと、ロジーナ……いや破壊神に誘導されて、冒険者に興味を持ったってわけか。
あの時乗り合わせた商人さんが、親切に教えてくれたし、マックスさんが持たせてくれた弁当代わりのパンを使った料理のおかげで、ソフィーとも話ができた。
ロジーナだけがきっかけとは言わないけど、冒険者に関する話を聞く事ができたのはそれがあったからだと思う。
「でも……それじゃ……あの時一緒にいた母親は……?」
確かレッタさんだった思う。
母娘で馬車に乗っていたのを覚えている。
もし破壊神が、人間としての体を作ったのがロジーナだとしたら、あの時のレッタさんは一体……。
まさか、人間から生まれてきたなんて事はないだろう……俺がこの世界に来てから一カ月程度の事だし、それまで俺の様子を見ていたと言っているから、時期が合わない。
「あぁ、あれね。あれはこの世界での協力者……といったところかしら? 今は別の場所にいるけれど、あれは間違いなく混じりけなしの人間よ。ただ、母娘を演じていただけのね」
「演じていた……」
混じりけなし、と聞くと人間と別の種族……エルフや獣人とのハーフがどうとか考えるのかもしれないけど、今目の前にいるのは破壊神。
つまり、別の神様とかではない事を示している。
レッタさんは間違いなく人間なのか……協力者だって事は破壊神の事も知っているのかもしれないけど、今いないのだから確認のしようがない。
破壊神も、教えてくれそうにない雰囲気だし。
「それじゃ俺は、まんまと口車に乗って冒険者になったってわけか……」
「そうよ。ふふふ、面白かったわぁ。特に、街へと押し寄せるゴブリンに対して破壊の限りを尽くしたのとか。私としては、怒りなどの感情に任せて、街ごと消し飛ばす方が好みだったけど……そこの駄ドラゴンも邪魔していたわね」
「だから駄ドラゴンと呼ぶななのだわ、この駄神! あの時は、あぁしないと私も危険だったのだわ!」
ゴブリン……俺が魔法で倒したというか焼いたというか、消滅させた時の事か。
地面がガラスになるくらいの熱量が、街のすぐ近くで発生したんだから、エルサがいなかったらかなりの影響がヘルサルに及んでいただろう。
外壁とか、石造りなのに溶けてた部分もあったくらいだからね。
その事に関しては、エルサに感謝しかないね――。
エルサがいなければ、もっと街に酷い影響があったもおかしくありませんでした。
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