増えたワイバーン
「ん? モニカさん、なんだか赤いけど……あ、俺が変な事を言い過ぎちゃったから!?」
言い募っていると、モニカさんが手を挙げて俺を止める。
全身……とまでは言わないけどけど、背けている顔の見える部分だけでなく首、そして腕や手までが赤くなっていた。
病気とかじゃないのは、俺でもわかるけど……まさか俺の勝手な考えを言い過ぎて怒っている、とか?
「そ、そんなんじゃないわよ! まったくもう、リクさんは……でも、ありがとう」
「怒ってないんだ、良かった。……ううん、お礼を言うのは俺の方だよ、ありがとうモニカさん」
心配する俺に、真っ赤に染まった顔をこちらに向けたモニカさんが、溜め息交じりに俺の名を呼び、お礼を言ってくれる。
俺からも……いや、俺の方がいっぱい感謝しているから、心を込めてお礼を言った。
「えぇ……ちょっと、体が熱いからちょっと冷ますわね」
「え、あ、うん」
確かに真っ赤になっているからなぁ……空を飛んでいて、日を遮るものは何もないから暑くなってしまったんだろうか?
不思議に思いながらも、スススッ……と広いエルサの背中、その端の方に移動するモニカさん。
まさか照れているなんて事は……モニカさん、獅子亭にいる時お客さんからよく声を掛けられていたし、他でも口説き文句を言われている事があったくらいだし。
まぁ、獅子亭にいる時はマリーさんかマックスさん、特にマックスさんに遮られてお客さんの方が追い出されたりしていたんだけど。
でもそうだね……俺の言葉なんかで、モニカさんが照れてくれていたら嬉しいな。
だってそれは、それだけ俺の気持ちが伝わったって事だから……。
あれ? 俺の気持ちってなんだろう? いや、モニカさんといると安心できるとか、楽しいや嬉しいとか、そういった気持ちかな。
ともあれ、モニカさんとの話も終わったので、のんびり飛んでくれていたエルサにお礼を言って、ワイバーン達のいる場所へと向かってもらった。
その際に、溜め息と共に「もう少しだったのにだわ。リクもまだまだだわ……」なんて言われてしまった。
俺にとっては、精一杯今の気持ちを伝えたつもりだったんだけど、エルサにとってはまだ何か足りなかったみたいだ……難しい――。
「これだけワイバーンがいると、さすがに圧倒されるわね」
少し経って、ワイバーン達の待っている場所に到着し、いつも通りに戻ったモニカさんと一緒にエルサから降りる。
モニカさんは間近で大量のワイバーンを見る事はなかったからか、少し圧倒されている様子だ。
王都に飛来したワイバーンはもっといたけど、あの時は俺が空で戦ったし、モニカさんは地上で他の魔物と戦っていたからね。
「あれ……数が増えてない? いや、疑問に思うまでもなく増えているよね」
「ガァゥ?」
ワイバーン達を見て首を傾げる俺とボスワイバーン。
そこらで土を掘って、丸まった体を収めるようにして寝ているワイバーン多数。
俺やエルサ、ボスワイバーンに気付いて頭を垂れるようにしているワイバーン複数。
さらに、俺やエルサを見て怯えているワイバーン大量。
確か、ボスワイバーンを連れてここを離れた時は、十体くらいしか残っていなかったはずなんだけど、今は二十……いや三十近くいる。
俺やエルサが倒したと思っていたワイバーンが、実は生きていて再生能力で復活した……とかではなさそうだ。
離れた場所に、そのままにされているワイバーンの死骸が見えているし、何かあれから変化があったようには見えないから。
いや、一体か二体くらいはそんなワイバーンがいてもおかしくないし、それくらいなら変化には気付かないだろうけど……さすがに二十体くらい増えていたら、違いに気付くからね。
「ボスワイバーン、ちょっと確認してもらえる?」
「ガァゥ」
ワイバーンが増えている理由を、ボスワイバーンに頼んで調べてもらう。
なんか怯えているワイバーンも結構いるから、俺が行くより良さそうだし……そもそも言葉が話せないからね。
頷いたボスワイバーンが、ワイバーン達のいる方にノッシノッシと歩いて、ガァガァと話しかけているのを見守る。
「敵意のないワイバーンっていうのも、不思議な感じね。王都の時みたいに、大量のワイバーンが空を飛んでいて怖かったのは覚えているけど……」
「そうだねぇ……王都に来たワイバーンは、他の魔物と一緒で敵意しか感じなかったけど。というか……」
「ん? どうしたのリクさん?」
「いや……」
そもそも、増えたワイバーンはどっちのワイバーンなのだろうか?
元々野生というか今回の事に関係ないワイバーンか、それとも再生能力を強化されたワイバーンなのか……。
ワイバーンが群れるというのは、ボスワイバーンがいるし王都でも一斉に襲って来ていたから、なんとなくわかるけど。
復元されて再生能力が強化されたのと、自然のワイバーンが一緒に群れたりする事はあるのかな?
「ガァゥ。ガァガァ!」
「えっと……エルサ、もう一度あれをお願い」
「わかったのだわー。どうせこうなると思って準備していたのだわー」
考えている間に、ワイバーン達と何やら話していたボスワイバーンが戻って来て、何やら伝えようとしている。
さすがに雰囲気である程度察する事はできても、細かい事まではわからないので、もう一度エルサに通訳をお願いする。
既に準備をしていたのか、小さくなってくっ付いていた俺の頭を離れて横に浮かび、ボスワイバーンに向かって魔力をゆっくりと放出し始めた。
「何をするの、リクさん?」
「エルサの魔力をボスワイバーンと繋げるんだ。そうすると、エルサと契約している俺にはボスワイバーンが何を言っているか、わかるようになるんだよ」
「成る程ね……エルサちゃん凄いわ」
「できたのだわ。さっさと話すのだわ~」
「そうだね、エルサは凄いよ。――ありがとうエルサ」
エルサを見て首を傾げているモニカさんに、やろうとしている事を簡単に説明。
そうこうしている間に、エルサとボスワイバーンの魔力が繋がる……二度目だから慣れたもんだね。
モニカさんに褒められて、ちょっとドヤ顔をしているエルサにお礼を言いながら、ボスワイバーンと話し始めた。
『コイツラ、ハ、ワレワレノ、チガウバショニイッテイタ、ナカマデ……』
「あぁ、成る程。そういう事か……」
相変わらずの片言で話すボスワイバーンから俺、俺からモニカさんへと事情の説明。
増えたワイバーン達は、元々ここにいる他のワイバーンと同じく魔物達を集めて、運んでいたワイバーンだそうだ。
俺が昨日ここに来た時には、他の場所に行っていてまだ戻って来る前だったんだとか。
他で活動中、いきなりサマナースケルトンが全て消え、強制されていた命令も消え去ったので、ボスワイバーンがいるはずのここに戻ってきたってわけだ。
ただ、そのボスワイバーンは俺が連れて行っていたので、残っていたワイバーン達と一緒に戻って来るのを待っていたと。
ちなみに、本当に二体か三体くらいは俺が剣で斬った後に、時間をかけて再生したワイバーンもいるらしい……再生能力の差とかではなく、単純に受けた傷の大きさのせいみたいだ。
まぁ、確実に止めを刺し切れていないワイバーンが結構いたから、そういうのもいるんだろうね――。
まだ他にもいたワイバーン達が、集まって来ていたようです。
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