カイツさんはワイバーンに興味津々
「ふむ、であれば調べる手段などは限られるか。リク様、ボスワイバーンでしたか……会話などは?」
「一応、エルサが魔力を繋げてくれれば、可能でしたけど……通常では無理ですね」
あの方法も、エルサと契約している俺だからこそできた、とも言える。
魔力的に繋がったボスワイバーンの言葉が、エルサを通じて契約的に魔力だけでなく記憶なども、ある程度繋がっている俺に理解できるようになった感じだ。
エルサが翻訳機になって中継してくれたってところかな、エルサに言うと翻訳機呼ばわりを嫌がりそうだから言わないけど。
だから、俺の考えが流れ込んだからって、くっ付いた状態で頭を締め付けないでくれないかエルサ……寝ていたんじゃなかったのか……?
「そうですか……ふむ、魔力を繋げるですか。それも興味深いですね。ですが会話ができないとなると……まぁ、なんとかなりますか」
「え、なんとかなるんですか?」
「感覚で?」
「森の木々じゃないんだから、なんとかなるわけないでしょ……はぁ」
考えるな、感じろ……とか、フィーリングで、とか言い出しそうなカイツさん。
研究者がそれでいいのかと思わなくもないけど、フィリーナに突っ込まれていたから気にしない事にした。
そうして、とりあえず宿で休んでいるボスワイバーンの所に、カイツさんを連れて行く事になった。
フィリーナも一応監視役兼助手として同行だね、助手って言うと嫌がるけど。
シュットラウルさんを部屋に残して、休憩もするため宿へ向かう。
その途中、そういえばと思い出して俺やエルサが倒したワイバーンについて話す。
回収はまだだけど、倒したワイバーンならいくらでも研究材料にしていいだろうからね。
ただし、核が無傷で残っていたとしても、そこから復元は絶対にしないとの注意も怠らない……方法は、カイツさんはまだ王都に行けていないので知っていないはずだけど、フィリーナが研究資料を見て知っているはだ。
あと、禁止しておかないとカイツさんなら、なんとか方法を編み出しそうで怖かったのもある。
生きたワイバーンはそれはそれで研究が捗るらしいけど、やっぱり細かく調べるには倒した後の物も必要みたいで、カイツさんは興奮していた。
しかし……ワイバーンを研究してなんになるんだろう? 再生能力の不思議を調べるのは既に終わっている事だし……。
と思って聞いてみたら、心理の探求と答えられた……よくわからなくてキョトンとしている俺に、フィリーナが空を飛ぶ方法を見つけたいらしい、と教えてくれた。
空かぁ……聞きかじったような航空機の知識がほんの少しだけあるけど、さすがにそれは役に立ちそうにないから、頑張って研究して欲しいと思う。
空を飛べるほどの揚力を得るための速度を、出す方法と耐える物が現状でないからな……科学技術よりも、魔法技術の方面で研究した方が実現は早そうだし。
でもカイツさん、王都に行ったらクールフトなどの改良や、クォンツァイタのさらなる研究もあるのに、ワイバーンの研究に打ち込む余裕はあるんだろうか?
まぁ、アルネも研究意欲の湧く何かがあれば、どんどんのめり込むタイプだったから、エルフの男性はそういうものなのかもしれない。
メタルワームを作ったエクスさんも、似たような感じだったし――。
「ガァゥ?」
「こちらはカイツさんと、フィリーナ。二人共エルフだよ」
「君がボスワイバーンか」
「……本当にリクが言っていたように、暢気なのね。私達が近付いても気にせず寝ているわ」
宿に到着し、まずボスワイバーンにカイツさん達を紹介。
瞳を爛々と輝かせて、ボスワイバーンを見上げるカイツさんと、地面に何故か尻尾の先を埋め込んだ状態で丸まって寝ているワイバーンを見るフィリーナ。
尻尾はなんでだろう……落ち着くのかな?
「しばらく休んだら、他のワイバーン達が待っている場所に行くけど……それまでこのカイツさんが、色々知りたいらしいんだ。無茶な事は……」
「私がさせないわ」
「って事だから、安心して。人間もそうだけど、この二人も攻撃しないように」
「ガ、ガァゥ」
よくわからないけど、なんとなくわかった……と言っているように頷くボスワイバーン。
とりあえずは大丈夫そうだ。
ボスワイバーンには、俺やエルサがこれから休むけど、その後にワイバーン達を連れに行くために一緒に行動をする、というのをもう一度伝えて、頷いたのを確認してから宿へと入った。
カイツさん、かなり興奮していた状態だったけど大丈夫かなぁ? まぁ、俺が離れる直前にフィリーナから蹴られていたけど。
「お帰りなさいませ、リク様。すぐに食事になさいますか?」
「うーん、できれば先に体を休ませたいから、部屋に行きます。すみませんけど、食事はその後で」
「畏まりました」
宿に入るとすぐ、メイドさんに迎えられる。
休む前に食事をして栄養を取った方がいいのかもしれないけど、実はさっきから体がだるくて仕方がない。
用意してくれていたのに悪いかな、と思ったけど先に休む事にした。
ちなみに、俺が戻って来るのに合わせて食事を用意してくれたのかなと思ったけど、今は非常時だから常に何かしらの食事ができる状態にしてあるんだとか。
腹が減っては戦はできぬ……俺達やシュットラウルさんだけでなく、街の人達や兵士さん達のための炊き出しのような事もやっているらしい。
だから、数人分程度なら例え深夜だろうとすぐに食事ができるようになっているため、申し訳なさそうにしないで下さいと言われた。
俺、表情に出ていたらしい。
「はぁ、ようやく一息といったところかな」
「さっきも同じような事を言った気がするのだわ?」
「まぁ、さっきはさっき、今は今だよエルサ」
部屋に入り、水などの用意をしてくれたメイドさんにお礼を言って見送った後、剣を置いてベッドに座って深く息を吐く。
シュットラウルさんと話す前に、一度戻って来ていたから、似たような事はその時に言っているかもしれないけど、それはそれだ。
今すぐ何かをする予定もないし、ようやく休めると気が緩んだって事だね。
「んくっ……ぷは! あー、水が美味しい」
「もきゅもきゅ……」
水を飲んで、喉が渇いていたんだなと自覚する。
エルサは、メイドさんに用意してもらった山盛りのキューを食べるのに夢中だ……ほんの少し前は俺と話していたのに……。
まぁ、朝食以来何も食べていなかったから仕方ないか、そろそろ日も落ち始めるくらいだし。
「もきゅ……だわぁ……も……だわぁ……」
「こらこらエルサ、疲れているのはわかるけどキューを食べながら寝るんじゃない。寝るか食べるかのどちらかにしてよ」
「はっ! だわぁ……もきゅもきゅ」
テーブルの上に陣取ってキューを食べていたエルサは、頬張ったキューを咀嚼しながらウトウトしていたので、注意。
俺しかいないから行儀とかは気にしないでもいいけど、寝ながら食べて喉に詰まったら大変だ。
エルサは声を掛けられてハッとなって閉じかけていた目を開け、再び夢中になってキューを頬張る。
食べる方に集中するんだ……エルサらしいけど。
エルサにとってキューは一番優先される物なのかもしれません。
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