シュットラウルさんは東門
「でも、魔力の必要量が多いのなら、今も使えていないんじゃ……」
どれだけの攻撃をも跳ねのける鎧だったとしても、それが魔法具であるなら魔力がなければ機能しない。
必要な魔力量が多いというので、俺が使っている剣を思い出したけど、あれは強制的に魔力を吸い取って発動する。
さすがにシュットラウルさんの鎧がその仕様というわけはないだろうけど……魔力が足りなければ無用の長物、魔力を無理矢理供給しても枯渇の恐れがあるため、使える代物じゃないはず。
「リクさん、リクさん。クォンツァイタよ。あれを使えば、必要な魔力が多くても問題ないわ。いくらでも……というわけにはいかないけど、かなり多くの量を、それこそ鎧にかかっている魔法をしばらく発動し続けるには十分よ。……カイツさんがね、侯爵様から話を聞いて喜々として取り組んだらしいわ」
「カイツさんが……クォンツァイタかぁ」
カイツさんなら、確かに喜々としてやってくれそうだ……フィリーナと一緒に魔物と戦ってくれているけど、本分は魔法具の研究開発だからね。
俺が東門に出発した後、そういう話になったんだろうなぁ……。
「それもあって、今シュットラウル様は東門で戦っておられるはずです」
「……わかりました。それじゃあまず東門に行ってみます。――ボスワイバーン達も、行こう」
「ガァゥ」
「GRA」
溜め息を吐きたいのを我慢して、アマリーラさんに頷き、ボスワイバーン達に声をかけて東門に向けて出発。
とはいったものの、さすがにワイバーンを連れて街中を闊歩するわけにはいかないので、兵士さんに人が少ないというかほぼいないだろう道を聞いてからだったけど。
皆には何も言わなかったけど、どうもセンテに戻って来てから魔物に対する意識みたいなのが、これまでと違っている気がするんだよね。
なんというか、ドロドロとしたまとわりつくような感情を感じるというか……。
なんにせよ、魔物との戦いで消耗した人達、怪我をした人たちの前を、魔物であるワイバーンを連れて目に触れさせないよう気を付けるに越した事はない。
俺の考え過ぎだったらいいんだけど……。
「……」
「あははは……」
「成る程な……確かに、おとなしく俺達に対しても敵意を示さないようだ」
東門に到着。
シュットラウルさんが兵士さんを引き連れて、前線で頑張ってくれているらしくマックスさんと盾部隊の一部が休んでいたようだ。
そんな中に俺が街中からワイバーンを引き連れて現れたので、一時騒然としかけたけど……南門から伝令が先に到着していたらしく、隊長格の人達やマックスさんは落ち着いて俺の説明を聞いてくれた。
エルサが大きいままだったので、それが先に目立ってくれてワイバーンへ攻撃しようと考える人はいないのは助かった。
まぁ、一部の兵士さんが油断しないよう武器を持ってワイバーンを警戒していたり、中隊長さんが絶句していたりはするけれど。
ちなみに、大隊長さんは念のためシュットラウルさんと一緒にいるらしい。
「ところでマックスさん……」
「どうした、リク?」
視線を巡らせて周囲の様子を見つつ、マックスさんに話し掛ける。
「その……マリーさんは?」
「今は門の上にいるな。侯爵様自ら前線に赴いているのだから、全力で援護しなければならん」
「ほっ……」
「……まぁ、後でリクは何か言われるだろう」
「うぅ」
マリーさんを気にしていたのは、南門に行く前に魔法をぶっ放した時の事が原因。
モニカさんに言われたから、もしかすると説教が飛んで来るかなーと思ったけど……今は魔法部隊として忙しいようで少しほっとした。
とはいえ、後回しになるだけみたいだけども。
「だが、こちらの損害は少なく、魔物には絶大な効果を示した。フィリーナ達が到着して、クォンツァイタだったか? あれを使った魔法攻撃の準備をする事もできたしな」
「なら……」
「モニカ相手なら半日といったところだろうが、その半分以下で済ませられるだろう」
「結局、説教はされるんですね」
まぁ、俺がやってしまった事だから、甘んじて受け入れるしかないけど。
「とりあえずマリーさんには、後で怒られるとして……シュットラウルさんはどうなっていますか?」
「……どうもこうも、あれは一体なんなのだと……驚きもあるが、呆れの方が大きいな。本人には言えんが」
「ここからだと……うーん、見えませんね」
マックスさん達が呆れるくらいらしい、シュットラウルさんを見てみたいんだけど……。
さすがに周囲には兵士さん達が多く、さらに魔物を通さないため人や盾を使って壁にしてあるので、外で戦っているらしいシュットラウルさんの様子は見えない。
「見に行くしかないか……シュットラウルさんにワイバーンの事を報告したいし、南門での事も話さないといけないからなぁ……」
「そういえばリク、南門では派手にやったようだな? ここからは当然見えないが、恐ろしい事をやっていた気配のようなものは感じたぞ。揺れたしな」
「まぁ、ほとんどの魔物を殲滅はできました。一応、周囲の影響とか味方を巻き込まないように気を付けましたよ?」
「だろうな。リクがなりふり構わずやっていたら、今頃魔物と一緒に南門にいる奴らも壊滅した、と報告が来ているはずだ」
「いや、さすがに壊滅までは……」
とはいえ、強く否定はできない。
東門でやった事もそうだし、ヘルサルや王都でもマックスさんは俺の魔法を見ているからね。
魔力が十分だったとしても、南門の魔物を自分でなんとかしようとしたら、正直なところ味方や周辺に影響が出るような方法しか考えられなかったし。
時間をかけていいんなら、ルジナウムの時のように魔物の集団に突っ込むだけなんだけどね。
「と、とにかく、シュットラウルさんの所まで行ってみ……」
「リク様、もう申し訳ありませんが、侯爵様の所へ行くのであれば呼び戻して来てくれないでしょうか?」
話をそらすため、シュットラウルさんに報告があるという理由で、この場を離れようとする俺。
そんな俺の言葉の途中で、深々と頭を下げた中隊長さんからの言葉。
「呼び戻すんですか? まぁ、落ち着いて話すなら門の中の方がいいでしょうけど。でも、それなら隊長さん達が進言すれば……」
「侯爵様自らですので、我らがお止めする事もできず……」
「現状でこちらの総大将。そして、貴族でこの地の領主様だからな。意見できる奴が少ないんだ。俺は今回の事で面識はあるが、進言まではさすがにな」
シュットラウルさんの意見に反対するのは、中隊長とかマックスさんじゃ畏れ多いとかそういう事だろうか。
センテに来てから話した様子だと、部下の進言を無視するような人ではないとは思うけど……相手は貴族様だからね。
見た感じ、忠言できそうな執事さん達は非戦闘員で、この場にいないようだし。
「身軽な現役冒険者であれば、恐れ知らずで意見を言う事もできただろうが……今の俺は元冒険者。しかも盾部隊の部下も任されている。ヘルサルで暮らす単なる国民の一人だからな」
現役冒険者なら、一応身分としては国に属さないとも言えるから、侯爵様相手でも止めるような事を言えたのかもしれない。
まぁ、それで周囲にどんな目で見られるかとか、止めた貴族様から煙たがられる可能性はあるけど……シュットラウルさんはそんな人じゃない、と思う、多分――。
シュットラウルさん自身は部下や配下の忠言を受ける性格でも、実際には畏れ多いと考える人が多いようです。
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