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集落を覆う結界



 悲鳴の上がった方を見るため、体を回転させるように剣を振りながら後ろを見る。

 そちらには、悲鳴を上げたと思われる女性のエルフが顔に火の球が直撃した光景があった。


「姉さん……魔法に集中してた俺を庇って……」


 どうやら、火の球が当たったエルフの隣で抱きとめるようにしてるエルフのお姉さんが、危なかった弟を庇ったようだ。

 ……姉が弟を庇った……。

 何故だろう……その光景を見て、その声を聞いて状況を理解した時、頭の中で何かが弾けるような感覚があった。

 エルフに被害が出た……しかも女性の顔に火の球が直撃している。

 多分、俺の治癒魔法で治せるだろうけど、女性の顔に傷……弟を庇ったお姉さんが……。

 色々な考えが頭のなかでぐるぐる回っているような感覚。

 何なんだろう……これは……。


「!?」

「リク!?」

「結界なのだわ!」

「何なの!?」


 近くにいた仲間、モニカさん、ソフィーさん、エルサ、ユノの声が上がる。

 エルサに至っては、俺の頭から離れて空に浮かびながら結界の魔法を発動したようだ。

 皆が驚くのも無理は無い。

 さっきから頭で色々な事がぐるぐるし始めてから、いきなり体の中から魔力が溢れ出した。

 ヘルサルの街の時と似ている。

 あの時と違うのは、怒りとかでは無い事くらいかな。


「またリクさんが!?」

「リク、ここであの時のような魔法は!」

「とんでもない魔力なのだわ。何かの攻撃かと思ったのだわ!」

「リクの魔力……やっぱりすごいの」


 皆が驚きつつ、エルサの後ろに隠れるように集まった。

 エルサが結界の魔法を使ってるから、そこなら火の球も飛んで来ないし、俺の魔力もある程度遮断されるんだろう。

 その間も、俺の頭の中はぐるぐると色々な考えが浮かんでは消える。

 でも、そんな頭の中なのにも関わらず、俺は冷静だった。

 ぐるぐるしている頭の片隅で、冷静に今の状況をどうするか考えていた。

 火の球は俺から溢れた魔力にかき消されたものもあるけど、結構な数が集落に飛来。

 確認はしていないけどいくつかの家が燃え始めているだろう。

 エルフ達は消火にかかりきりになるはずだ。

 半分以上は俺が氷の槍で倒したけど、まだゴーストはいる。

 これ以上火の球を撃たせるわけにはいかない。

 これ以上は集落にも、エルフにも被害が大きくなるばかりだから。


「エルサ、その結界の魔法はどうイメージしてるんだ?」

「え? こんな時に何なのだわ? ……これは魔力で壁を作るイメージなのだわ。魔力を込めれば込める程分厚く、広くなるのだわ」

「成る程な……ありがとう」


 冷静な頭で考えつつ、エルサの結界魔法のイメージを教えてもらう。

 壁を作る……簡単なイメージだな。

 エルサに教えてもらったイメージをしつつ、俺の溢れた魔力に怯んでる魔物を何体か切り伏せる。


「リクさん、一体どうするの!?」

「リク、ヘルサルの時のような魔法は危ないぞ!」


 モニカさんとソフィーさんがエルサの後ろで叫んでる。

 このエルフの集落はヘルサルと違って高い壁に守られてるわけじゃない。

 あの時と同じ魔法を使ったら、魔物達と一緒に集落森まで巻き込んでしまうだろう。


「大丈夫、その辺りはちゃんと考えてるから」


 以前と違って冷静に考える事が出来る。

 イメージも順調。

 魔力もあの時程駄々洩れにはなっていない。


「何をするのだわ?」

「結界を張るんだ。エルサがよく使ってるだろ?」


 俺の後ろで溢れた魔力を攻撃と勘違いしたエルサが張った結界を解きながら聞いて来た。

 それに答えつつ、エルサの使った結界を真似するためのイメージを固めた。

 範囲は……面倒だから、この集落の柵の広さで良いか……。

 建物や木も覆わないといけないから、高さはそれなりに……ドーム状でいいかな。

 んー……イメージとしては、ドーム球場のような大きさで透明、それで集落全体を包み込んで外からの魔法攻撃を遮断ってとこかな。


「……よし、結界!」


 初めて使った魔法だけど、上手く行ったと思う。

 溢れる魔力を結界につぎ込んで、集落を包む不可視の膜を形成、維持。

 大雑把に範囲を決めたから、少し薄い場所とかはあるけど、ゴーストの魔法やオーガの攻撃程度じゃ破れないだろう。

 魔法を使った頃には、さっきの頭の中がぐるぐるするような事は無くなっていた。

 ……ほんとにさっきのあれはなんだったんだろう……?


「モニカさん、ソフィーさん、ユノ! 結界を張ったから、その内側にいる魔物達を倒してくれ。エルフ達は燃え始めた火の消火をお願いします!」


 結界を維持しながら叫ぶ。

 不可視の結界だから、一瞬状況がわからずポカンとしてたモニカさんとソフィーさんは、俺の結界にゴーストの火の球が遮られたのを見て理解したようだ。

 ユノも含めて、エルサの後ろから飛び出して内側にいる魔物達に攻撃を始めた。

 魔物は俺が足を凍らせたのを含めてもそんなに多くない。

 ユノもいて、軽々魔物を切り刻んでるからそんなに時間はかからないだろう。

 俺達の後ろで魔物達に魔法を放っていたエルフ達は、モニカさん達よりも早く行動を開始した。

 エルフだからか、多分俺の結界にはすぐ気付いたんだろう。

 氷の魔法や水の魔法を使って消火作業を開始してる。

 結構な数の火の手が上がってるけど、すぐに消火されそうだね。

 弟を庇ったエルフは、その場で数人のエルフが診ているようだけど、顔に負った火傷はそこまで大きいものじゃなく、命に関わる程ではないようだ。

 それでも、女性の顔に傷を負わせたのは許せない。


「フリーズランス」


 俺は結界を維持しつつ、氷の槍をゴーストに向かって放つ。

 魔物達の上にいて、魔法を放っていたゴーストを全て貫いて倒す。

 結界の外だけど、結界も氷の槍もどちらも俺の魔力で元が同じだからか、透き通るように通過した。


「魔法の多重発動なんて……聞いた事ないわよ……」

「連続使用だけでも驚く事なのに、多重発動が出来るなんて……驚くを通り越して呆れるしか出来んな」


 ゴーストを倒したと思ったら、後ろから声がした。

 フィリーナとアルネだ。

 他のエルフ達に消火作業を任せてこちらに来たらしい。

 それにしても、複数の魔法を同時に使う事って珍しい事なの?

 俺、普通に出来ちゃってるけど……これもドラゴンの魔法というもののおかげかもね。

 エルサも前の襲撃の時結界とブレスを一緒に使ってたから、ドラゴン魔法の特徴の一つなのかもしれないね。


「しかしリク、これからどうするんだ? 魔物達じゃどうあってもリクの張った結界とやらを通る事は出来ないだろうが……」

「こちらも同じよ? これじゃ立てこもるだけになるわ」


 アルネとフィリーナが、集落の入り口……モニカさん達が魔物を倒してるのを横目に結界に近付いてノックするように軽く叩きながら言う。

 ノック音はしなかったが、二人の手は確かに不可視の物に遮られて結界の外には出なかった。

 ふむ……俺の魔法なら外に撃てるけど、それだけじゃ魔物達を全て倒すのは時間がかかる。

 結界を維持するのにイメージが崩れちゃいけないから、今俺は動けない。

 動くと俺を中心に展開してる結界の範囲指定とか色々イメージし直さないといけないからね。

 小さい結界なら大丈夫だろうけど、この規模だとさすがに無理だ。

 でもエルフ達が外に出るのは無理と……それなら……。


「エルサ、大きくなってくれるか?」

「いいのだわ。けど、それでどうするのだわ? リクの魔力をつぎ込まれた結界なんて私にも破れないのだわ」


 エルサでも無理なのか……全力という程じゃないけど、あふれ出した魔力を全部つぎ込んだから、結構硬い結界になってるみたいだね。

 それなりに固くなるようにイメージしたけど、どれだけ硬いかは初めて使うからわからないんだよね。


「それじゃあエルサ、結界を一部薄くするから、そこから出てくれ」


 俺は結界を薄くして、そこから出るようエルサに頼んだ。



巨大な結界を作ったリク、これで魔物達は中に入って来れません。


読んで下さった方、皆様に感謝を。


別作品も連載投稿しております。

作品ページへはページ下部にリンクがありますのでそちらからお願いします。


面白いな、続きが読みたいな、と思われた方はブックマークを是非お願い致します。


作品を続ける上で重要なモチベーションアップになりますので、どうかよろしくお願い致します。

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