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特盛り魔道具で異世界ぶらり旅  作者: 謙虚なサークル
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祭りは無事終わりました

 ヘルメスに乗って中央街へ戻ると、祭りはもう始まっていた。

 薄暗くなり始めた夜空には提灯が浮かび、笛と太鼓の音色が鳴り響く。

 人の数は先日とは比にならず、歩くのにも苦労する程だった。


「うにゃあ、人混みすごいにゃあ」

「二人とも、迷子になるなよ」

「わかったのだ」


 二人から目を離さぬよう、歩いていく。

 おっとっと、すみませんよっと。

 通路は狭く、人込みを避けながら移動するのは一苦労だ。

 これだけ狭いのは中央通りにロープが張られているからだ。

 ロープの外側は観客、内側は開けられており、ここを踊り手たちが練り歩くのだろう。


「……タバサたちはちゃんと出場出来るのかね」


 チームメイトらは俺たちより先に着いたはずだし、大丈夫だとは思うが……少し心配である。

 そんなことを考えながら歩いていると、太鼓の音が激しくなっていく。

 笛が早いリズムを刻みだした。

 どん! と一際大きな太鼓の音が鳴るのを合図に、客席から大通りに数人の男女が踊り出る。

 どうやら祭りが始まったようだ。


 わあああああああああ!! と大歓声が上がる中、踊り手たちは激しく手足を振り乱し、踊り始めた。

 全身を大きく使って飛び跳ね、大通りを踊りながら進んでいく。

 一矢乱れぬコンビネーションに、俺は目を奪われる。


「おおー、これはすごいにゃあ」

「リザーディアで見た踊りもすごかったけど、これはそれ以上なのだ」


 圧倒されていると、今度はドワーフたちが躍り出てきた。

 こちらは打って変わって力強い踊りである。

 身体が勝手に動いてしまうようなテンポの良さや勢いを感じる。

 その次は獣人たち、軽やかな踊りで観客を魅了する。


「こりゃすごいな。見に来た甲斐があるってもんだぜ」


 様々な種族たちによる、美麗な踊りが続く。

 観客たちはその一挙手一投足に注目し、時折歓声を上げていた。


「ユキタカ殿、あれを!」


 雪ダルマの指差す方を見ると、そこにはリザードマンたちが踊っていた。

 その中にはもちろんタバサもいる。

 よかった、間に合ったようである。


「タバサ、がんばるにゃあ!」

「タバサ殿! ファイトなのだ!」


 二人が声を上げると、タバサがこちらを向いてニコッと笑った。

 俺も手を振って声援を送る。


「みんなー! がんばれよー!」


 他のリザードマンたちも、俺を見てはウインクを送ってきた。

 なんていうかこういうの、グッとくるな。

 彼らを助けられてよかったぜ。

 感傷に浸りながらもリザードマンたちを見送っていると、どおん! と大きな音がした。


「にゃっ!? な、なんにゃあ!?」


 ひゅるるるるる、と細長い音の後、どおん! とまた音が鳴る。


「空を見上げてみろよ」

「にゃあっ!? そ、空が爆発してるにゃあ!」

「なんと……巨大な火の華、なのだ」


 そう、花火である。

 轟音と共に夜空に大輪の花が咲き乱れ、消えていく。

 何とも見事な打ち上げ花火だ。


「これが打ち上げ花火ってやつさ」

「ほえー、すごいにゃあ……」

「火薬で空にあのような華を描くとは、とてつもない技術なのだ」


 現代の花火と比べてもそん色ない、大迫力の花火である。

 俺たちは祭りの音を聞きながら、のんびり花火を見上げていた。

 花火が終わると祭りも終わりである。

 人が少しずつはけていき、出店も仕舞い始めていた。

 俺たちも帰るとするか。


「ユキタカ!」


 後ろから声をかけられ、振り返るとタバサたちリザードマンがいた。

 駆け寄ってきたタバサが、がっしりと俺の手を握る。


「本当にありがとう! アンタのおかげで祭りに出られたよ!」


 他のリザードマンたちも、俺を取り囲んでは肩や背中を叩いてくる。


「全くだ! お前のおかげだよユキタカ!」

「マジに助かったぜ! ありがとな!」

「おい、メシはまだなんだろう? 一緒に食おうぜ! もちろん奢りだからよ!」


 どうやらすごく喜んでくれているようだ。

 タバサに協力してよかったな。


 ■■■


「そういえばユキタカはすごい魔法使いなんだって?」


 連れて行かれた居酒屋で、タバサが俺に尋ねる。

 どうやら万能薬の事をチームメイトたちに聞いたらしい。


「いや、俺は魔法は使えないよ。魔道具のおかげさ。ある人から譲り受けてね、それに助けられながら旅をしてるんだ」


 わざわざ隠す必要もあるまい。

 というわけである程度事情は説明しておく。

 質問攻めにあっても面倒だしな。


「ほう、しかしそれだけの魔道具を持っているとすれば、さぞ高名な魔女から譲り受けたのだろう。まさかあの伝説の大魔女、マーリンだったりしないだろうねぇ」

「ぶっっっ!!」


 いきなりマーリンの名が飛び出し、俺は口に含んでいた酒を吹き出した。

 それを見たタバサは目を丸くしている。


「ま、まさか本当にそうなのかい?」

「……えぇ、まぁ」

「ユキタカはマーリンの後継者なのにゃ!」

「なんと……!」


 タバサだけでなく、リザードマンたちも俄かにざわめき始める。

 こらクロ、余計な事を言うんじゃない。


「まさかユキタカがあのマーリンの後継者とは……いやはや驚いたね」

「いや、俺は成り行きで……魔法も使えないし全然大した事ないんですよ」

「謙遜なんてするもんじゃないよ。魔道具ってのはとんでもない力を持つもんだ。だからそれを譲る方はじっくり見定めた上で渡さねばならない。アンタはあの大魔女に太鼓判を押されたんだよ」


 そこまで言われるとむず痒いんだが。

 誰も彼も大げさである。

 俺は普通にしてただけなんだけどな。


「それを聞いたらユキタカよ、あんたに会って貰わなきゃならない人がいるんだがね」

「構いませんが……どなた様ですか?」


 俺は何となくその次に続く言葉は予想しつつも、タバサに尋ねる。


「火の国の魔女、サラ様さ」

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