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特盛り魔道具で異世界ぶらり旅  作者: 謙虚なサークル
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スノボをやってみました

 釣り堀を後にすると、丁度太陽が真上に上がっていた。

 もうお昼時を過ぎたからな。

 食事は終えたし、これから何をするかな。

 そんな事を考えながらヘルメスを走らせていると子供たちが遊んでいるのを見つけた。

 板を履いて雪の上を滑っているようだ。


「ユキタカ、あれはなんにゃ?」

「あれはスキーだな」


 ご存知、長い板を履いて坂の上から滑るというウインタースポーツである。

 見ればスノボやデュアルスノボのようなもので遊んでいる子供もいた。

 ちなみにデュアルスノボというのは片足ずつ履くスノボだ。最近流行ってるらしい。

 子供たちはそうと知っててやっているわけではないのだろうが、楽しそうに遊んでいる。


 ……そういえば、一度スキーってやつをやってみたかったんだったな。

 雪を知らない俺である、当然スキーなんてやったことはない。

 せっかく雪国に来たんだし、これを体験しない手はないよな。

 俺は鞄から一枚の板を取り出した。

 キックボードのようなそれを地面に置くと、ふわりと浮く。


 これはエアボードという魔道具で、風の魔法が付与されており、空中に一定の高さで浮く板だ。

 地面を蹴る事で推進力を得て、高速で移動することが出来るというもので、ヘルメスのタイヤに施された浮遊の魔法と原理は似たようなものである。

 これならスノボのようにして遊べるはずだ。


「ボクもやりたいにゃ!」

「そういうと思って、ほらよ」


 もう一つのエアボードを渡してやる。


「それと、お前用の靴もあるみたいだぜ」


 ついでに渡したのは猫用の手袋だ。

 恐らく昔、マーリンが作っておいたのであろう。

 それはクロの両手足にぴったりとフィットした。


「にゃ! そういえば寒い時はこんなの履いてた気がするにゃ!」

「忘れてたのかよ」


 全くもって記憶力がないやつである。

 毎度のことなので驚かないけどな。

 俺が呆れていると、クロはボードの上にぴょんと飛び乗った。

 最初はふらふらとしていたがすぐに慣れたようで、後ろ足で蹴りながら器用に雪上を滑っている。


「おー、上手いもんだ」

「にゃ! ちょっと下まで行ってくる……にゃーーーっ!」


 そしてあっという間に坂の下へ滑り落ちていった。

 すげぇ速度だな。

 あいつに恐怖心はないのか……ないんだろうなぁ。


「あ、雪の中に突っ込んだ」


 どふっ! と音がして、クロは勢いのまま雪の中に突っ込み、埋もれてしまった。

 おいおい大丈夫かよ。

 だが心配の必要はなかったようで、しばらくすると這い出してきては身体を振るい雪を落とす。

 そして平気な顔をしてボードを咥えて駆け上ってくる。

 頭に雪の塊を乗せながら、満面の笑みを浮かべた。


「面白かったにゃ!」

「お、おう……」


 としか言いようがない。

 元気のいい猫である。


「ところで足は冷たくないか?」

「大丈夫にゃ!」


 あれだけ雪の上を嫌がってたのに、靴を履いただけでこのテンションの上がりようよ。

 マーリンが防寒などの魔法をかけているのだろうが、それにしても雪の上を駆け回れるのが余程楽しいようだ。


「もっかい行ってくるにゃーーーっ!」

「気をつけろよー」


 俺との会話もそこそこに、クロはまた滑り始めた。

 子供みたいなやつである。

 やれやれ、あっちはほっといてもよさそうだな。


「俺も滑るとするか」


 俺はヘルメスを大きな木に括り付け、ボードで遊ぶことにした。

 誰もいないし盗まれる心配はないだろ。

 そもそもヘルメスは俺じゃないと動かせないしな。


「だがスキーもスノボも初めてなんだよな……」


 今になってちょっと怖くなってきた。

 自慢じゃないが、運動神経はあまりいい方じゃない。

 俺はボードに片足を括り付けると、ふわりと浮いたボードに体重を乗せてみる。


「のわっ!?」


 と、ボードが空中で半回転し、滑って転んだ。

 いてて、尻を思いっきり打っちまったぞ。

 尻をさすりながら立ち上がり、再チャレンジだ。

 今度こそ、じわじわと体重をかけて……


「ぎゃあっ!?」


 またも、転ぶ。

 同じ所を打ったぞ。

 くぅ、めちゃめちゃ痛い……

 ダメだ。スノボは俺には向いてないかも……いやいや、ちょっと嫌なことがあったくらいでへこたれるのはよくない。

 俺はやる、出来る男だ。

 そう決意し、ボードに乗っかるも、


「ぬわーーーっ!」


 ずでん! と転び、また同じ所を打ってしまった。

 やばい、泣きそう。

 せめてこの痛みがなければ頑張れるんだが……


「……はっ、そういえばいいのがあった気がする」


 鞄をごそごそと漁り、取り出したのは羊の人形。

 これは身代わり人形という魔道具で、自分の髪の毛を人形の中に入れることで俺に与えられるダメージを人形に移し替えることが出来るのだ。

 髪の毛を一本抜いて、人形の中に埋め込んでやる。


「……よし、これでオッケー。今度こそ……!」


 ボードに体重をかけようとして、やはり転んでしまう。

 そして思いっきり尻から落ちてしまったが――痛くない。

 身代わり人形の効果は抜群だ。

 人形の方もこのくらいなら壊れたりしないようである。


「おぉ、これなら練習し放題だぜ!」


 痛くなければこっちのものよ。

 今度は思い切って乗ってみる。


「よっ! ほっ! と……っ!」


 揺れるのを堪えながら、バランスを取る。

 おっ、上手くいきそうだぞ!

 案外恐る恐る乗ってたのがダメだったのかもしれないな。……っとと。


「うわっ!?」


 また落ちる。だが痛みはないのですぐにリトライだ。

 何事もトライアンドエラー、やればやるほど上手くなるものである。

 滑ったり転んだりを繰り返すうち、フラフラとだが滑れるようになってきた。


「おおっ! 滑れてる! 滑れてるぞっ!」


 やはり何度も挑戦してみるものである。

 ボードに乗ったまま地面を蹴ると、すいすいと進んでいる。

 こうなってくると中々楽しくなってきた。

 それからしばらく練習を重ね、俺は少しずつだが滑れるようになったのである。


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