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特盛り魔道具で異世界ぶらり旅  作者: 謙虚なサークル
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朝食はTKG

「ふあーあ、よく寝たなぁ」


 翌日、俺は大きく伸びをして起き上がる。

 ふと辺りを見渡すと、クロがいないことに気づいた。


「あれ? どこだクロ、おーい」


 辺りを見渡すが、見当たらない。

 立ち上がって探そうとすると、足元に何か温かいものの感触。

 布団を剥いでみると、そこには丸まったクロがいた。


「んにゃぁ……」

「お前、そんな所にいたのかよ」


 クロはまだ寝るつもりなのか、布団の中に潜り込もうとしている。


「おい、もう朝だぞ。起きろ」

「ふにゃん。眠いにゃあ……」

「ゴロゴロしてたら朝ごはんに間に合わないだろ。いらないのか?」

「にゃっ!」


 パチクリと目を開けて、立ち上がるクロ。

 眠気より食い気らしい。

 俺はため息を吐きながら、着替えて部屋を出る。


「おはようございます。よく眠れましたか?」

「えぇ、おかげさまで」

「それはよろしゅうございました。朝食は大食堂に用意していますよ」

「ありがとうございます」


 女将と挨拶をして、大食堂へ向かう。

 朝食はバイキング形式で、好きなものを取っていいのだ。

 既に他に客も何組か来ている。

 おっ、でっかいトカゲの使い魔を連れている人もいるな。

 おかげで猫連れの俺にも別段奇異の目は向けられていないようだ。


「使い魔って意外と珍しくないんだな」

「にゃっ!? ボクは普通の使い魔じゃないにゃ!」

「はいはい、それよりごはんだぞ」


 魚や豆腐、ご飯にパン、スープに汁物、フルーツ等々……様々な料理が並んでいる。

 それを見たクロは目を輝かせた。


「ユキタカ、ユキタカ!これ、好きなだけ食べていいのかにゃ!?」


 それを見てテンションが上がったのか、クロは飛び跳ねている。


「あぁ、好きなのを取ってやるから欲しいのがあったら言いな」

「にゃっ! あれが欲しいにゃ! そっちのも食べてみたいにゃ! これも、あれも」

「おい、食べ切れる分だけしか取らないからな」


 大量に取って残すのはマナー違反だ。

 食べ放題でやったら出禁を喰らうか罰金だぞ。

 俺はクロのリクエストから食べられそうな分だけを取っていく。

 ついでに自分の分もひょいひょいっと。

 ある程度取り終えた後、お椀をテーブルに置いた。

 ご飯に生卵、サンマの塩焼きに汁物である。

 クロのはそれに加え、鯖とタイの塩焼きだ。

 これでもリクエストよりかなり少なめにしている。

 何も考えずにあれこれ欲しがるからな、こいつは。


「おーっ! 美味しそうにゃ!」

「そうだな。いただきます」

「にゃん!」


 手を合わせ、食べ始める。

 まずは生卵をご飯にかけて、醤油をちょびっとかけてかき混ぜていく。

 金と白、黒がいい感じに混ざり合い、美味そうな卵かけご飯が完成した。


「ユキタカ、ボクの分もやってにゃ」

「はいはい」


 言われなくてもやるつもりだった。

 クロにやらせるとテーブルが悲惨なことになりそうだしな。

 卵をかき混ぜて出来たものを渡してやると、クロはすぐにガツガツ食べ始めた。


「にゃっ! 美味しいにゃ!」

「うん、卵の旨味が濃い。いい卵を使ってるな」


 生卵とご飯がねっとりと口の中で絡みつき、醤油と合わさり甘じょっぱい旨味が口の中に広がっていく。

 サンマも普通に美味い。

 昨日も思ったが、かなり新鮮なものを使っているな。

 魚は鮮度によって味が全然違うのだ。

 多分海が近くにあるのだろう。

 クロもすごい勢いで食べている。


 卵かけご飯にサンマの塩焼きとくれば、今度は味噌汁が飲みたくなるよな。

 調味料箱から味噌を取り出し、汁に投入。

 既に魚で出汁は取ってあるようだし、味噌を混ぜるだけで十分だ。

 汁の中で味噌を溶かすと、透明な汁が茶色く濁っていく。

 口元に持っていき、ずずっとすする。


「ん、美味い」


 出汁と味噌でいい味噌汁になった。

 ふぅと息を吐くと、クロが尻尾をブンブン振っている。


「ボクも、ボクもにゃ!」

「はいはい」


 クロの分にも同様に、味噌を溶いてやる。

 差し出してやると、こぼさないようにペロペロ舐め始めた。

 冷たい味噌で溶いたから、丁度いい温度になったようだ。


「美味しいにゃ!」


 クロは声を上げた後、一心不乱に食べ始める。

 結構セーブして持ってきたが、ぺろりと食べてしまいそうだ。

 しかもまだ物欲しそうに皿を舐めている。


「……ん」


 ふと、周りから視線を感じる。

 なにやら他の客たちが俺たちを見ているようだ。

 ヒソヒソ声に耳を傾けると、どうやら俺の使ってる醤油や味噌について話しているようだ。


「やべっ」


 店にはない調味料を使っているから目立ってしまったか。

 面倒な事になる前にずらかるとしよう。


「ご馳走さまでした」

「にゃ!? お、おかわりは!?」

「昼飯食べられなくなるからこれで終わりだ。ほら行くぞクロ」

「にゃーっ!」


 クロと自分のお椀を運び、俺は食堂を後にするのだった。

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