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12話 救助隊、出発

 一人、脱落してしまうというトラブルがあったけれど……断じて俺のせいじゃない。

 救助隊が編成されて、ダンジョンに挑むことになった。


「みんな、よろしく頼む。遭難者を見つけるだけではなくて、僕たちも誰一人欠けることなく、みんなで無事に帰ろう」


 ダンジョンの入口まで移動したところで、一人の男がそう言った。


 リーダーに選ばれたのは、単独で活動している冒険者のアトリーだった。

 アトリーはCランクの冒険者で、一部ではあるが、上級魔法を使うことができる。

 冒険者としての知識も豊富で、人柄も問題ない。

 それ故に、救助隊のリーダーに選ばれることになった。


「どうして、マスターがリーダーではないのでしょうか? むう……マスターが一番強いのですが。確かに、序列で言うのならばマスターは最下層ですが……力で計るならば、一番上になりますね。そこのところを、もう少し考慮されてもいいと思いますね」


 ヒカリは俺がリーダーに選ばれなかったことが不満らしい。

 小さな声でぶつぶつと文句をこぼしていた。


「俺は助かるけどな。リーダーなんてめんどくさいもの、やってられん」

「でもでも、リーダーなら報酬も大きいですよ?」

「……それでも面倒だからな」

「今、少し迷いましたね」

「うるさい」


 口の減らない聖剣である。


「やあ。少しいいかな?」


 アトリーに話しかけられた。


「なんだ?」

「隊列についての相談があるんだけど……えっと……」

「イクスだ。イクス・シクシス」

「僕は、アトリー・ロックウェイだ。よろしくね」


 笑顔で握手を求めてきた。

 裏に隠している感情はないと思う。


 見た目通りに良いヤツなのだろう。

 握手に応えた。


 その時、とある違和感を覚えた。

 この感触は……


「それで隊列についての相談なんだけど……イクスには前衛をしてほしいんだけど、どうかな?」

「まあ、妥当な判断だな」


 俺のように魔法を使えない者がパーティーに参加する場合は、前衛を務めることがほとんどだ。

 魔法を使えない=攻撃力を持たない、ということになるため、敵の攻撃から味方を守るタンク役が割り当てられる。


 まあ、魔法使いには結界があるため、今の時代、タンクも廃れているが……

 いるのならば、それはそれで問題はない。


「前衛はイクスだけになってしまうけど……でも、イクスの腕なら問題はないと思う。それに、僕たちもすぐに攻撃をして、できる限り負担をなくそうと思う。どうかな?」

「どうもこうも、別に問題はない。剣士が前衛をやるのは、当たり前のことだろう?」

「そう言ってくれると助かるよ。ナビは僕が務めるから、イクスは前衛に集中してほしい」

「わかった」

「それじゃあ、よろしく頼むよ」


 そう言い残して、アトリーは後ろの方に下がった。

 それを見たヒカリが唇を尖らせる。


「自分だけ安全なところに退避して、マスターを前に押し出そうとするなんて……気に入らないですね」

「自己保身ってわけじゃない。こうすることが、今の時代、当たり前のことなんだ」

「マスターはなにも思うところはないのですか?」

「なにもないぞ?」


 剣士などは前衛を務める。

 魔法使いは後衛を務める。

 それが当たり前の常識なので、疑問を持ったことはない。


「この時代の剣士は、本当に不遇な扱いを受けているのですね……そして、マスターもそれを受け入れていて、疑問に思わないなんて……むう、モヤモヤします」

「なんでヒカリがそんな顔をするんだ?」


 ヒカリは納得がいかないというように、微妙な表情をしていた。


「マスターのことが心配だからに決まっています。マスターが余計な心労を抱えていないかどうか……マスターの剣として、主を心配するのは当たり前のことですよ」

「……そっか」


 今まで誰かに心配されたことなんてない。

 魔力ゼロの落ちこぼれを気にかける奇特なヤツなんていない。

 実の両親でさえ、俺のことを心配することはなかった。


 でも、ヒカリは違う。

 出会ったばかりなのに、俺のことを心配してくれている。

 気にかけてくれている。

 素直にうれしいと思えた。


「……ありがとな」

「え? どうしてお礼を言うのですか?」

「そういう気分だったんだ、気にするな」


 そこで話を打ち切り、俺たちはダンジョンへ移動した。




――――――――――




 行方不明になった冒険者パーティーは、事前の話によると、3層を目指していたという。

 3層なら、寄り道をしないで階段だけを探していけば、3時間ほどで到着できるだろう。

 アトリーのナビに従いながら、ダンジョンを進んでいく。


 打ち合わせ通り、俺が前衛だ。

 そして、後衛に七人の魔法使い。

 けっこうな大所帯なので、よほどのことがない限り、二重遭難ということにはならないだろう。


 それにヒカリは優れた感知能力を持っているらしく、非常に役立ってくれていた。


(マスター、二時の方向に魔物の反応です。数は三。ランクはEです)

「わかった」


 後衛のアトリーたちに指示を出して、足を止めた。


 様子を見ること少し……

 三匹のリザードマンが現れた。


「気をつけて、イクス! リザードマンだ!」


 アトリーが鋭い声を飛ばしてきた。


「大した身体能力は持たないが、武器を手に戦うという特性がある。下手をしたらDランクの冒険者でも怪我をすることがあるから、決して侮ることはできない魔物だ。イクスは無理のない範囲で足止めを頼む! すぐに僕たちが魔法を……」

「はっ!」


 襲いかかるリザードマンを三匹まとめて斬り伏せた。


「……」

「ん? なんか言ったか? 悪い、戦いに集中してて聞いていなかった」

「いや……なんでもないよ。うん、なんでも……」


 アトリーが唖然としていた。


「いくらEランクのリザードマンとはいえ、三匹をまとめて倒してしまうなんて……しかも、一太刀で。もしかして、僕が思っている以上に、イクスはすごいのでは……?」


 なにやら、そんなつぶやきが聞こえてきたが、スルーしておいた。

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突発的な新連載第二弾です。
まったりのんびりな作品です。よろしければどうぞ

少女錬金術師のまったり辺境開拓~賢者の石を量産してやりたい放題やります~
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