プロローグ
この作品は以前投稿した『黒猫のような君と僕の物語』を大幅に加筆修正・改題したものです。
本来ならば令和を迎えたタイミングで新作を連載する予定だったのですが、書き溜めていたデータを破損してしまい、叶わなくなってしまいました。
なんとか投稿はしようと思い、このような形を取ることにしました。
徐々に書き直しつつ毎週投稿していこうと思っておりますので、よろしければお付き合いください。
プロローグ
「にゃあ」
「………」
「にゃあ」
「…えっ、何?」
「だから、にゃあ。だってば」
「……えっと。聞こえてはいたんだ…。でもいきなり「にゃあ」とか言われても困ると言うか、何と言うか…」
「むむむ。おっかしいなぁ。君、今わたしのこと「猫ちゃんの化身」だと思ってたんじゃないの?」
―――確かに一瞬そう思った。
そんな有り得ない馬鹿みたいなことを。
でも、
「どうして、そう思ったって思うの?」
「だって、君、そういう顔してたもの。えへん☆」
目の前にいる“初対面の女の子”を猫の化身だと思ってる顔って…一体どんなだよ。て言うか、そのドヤ顔からの「えへん☆」はどうなんだ。
「あれれ? もしかして違った?」
「ち、違うに決まってるでしょ。当たり前だよ。君はどう見たって人間の女の子だもん。大体、猫が人の姿に化身するだなんて、そんなことあるわけないじゃないか」
言いながらだんだん早口になってしまった。
しかも、まるで自分自身に言い聞かせてるような言い方になっている気がする。
例え一瞬だけでも、そう思ってしまったことが物凄く恥ずかしいことのように思えて…。
「ふーん。まっ、どっちでもいいや。あっ、わたし、麻友って言うの。黛麻友。えへん☆ 君のお名前は?」
「だからなんでドヤ顔なんだよ」と内心でツッコミを入れながら、僕は自分でも意外なほど自然に名乗っていた。
「神崎浩一」