セシリア、女神と会う
「さて、日が暮れる前にテントを張りましょう」
リュックサックを降ろして、私はテントを張る準備を始めた
骨組みを組み立て、杭をうちテントを張った
幼い頃、親戚と一緒によくキャンプに出掛けた事がある
両親は兄に構っていて、私は殆ど相手にされていなかった
その時に相手をしてくれていたのは親戚だった
親戚は私を色々な事を教えてくれた
『貴族だからと言って、その地位に固執してはダメだ。色んな経験は貴女の糧になる』
多分、両親を見ているからの考えだろう
私もある時から、両親は『命令するだけでなんにも出来ない人達』と考えていた
そんな両親に育てられた兄もやっぱり『上から目線』の人だった
性格的に私と兄は正反対だ
だから喧嘩もする
必ず、悪いのは私だ
そんな私を見て妹は両親寄りになった
結局、私は王族との繋がりをつける為の道具としか見られていなかったのかもしれない
まぁ、今となってはどうでも良い話だ
もしフェルモンド様と結婚したら今までの鬱憤を晴らして縁を切るつもりだったけど・・・・
どっちみち、縁は切れたんだから良いだろう
「よし、完成っ!」
テントは完成した所で夕暮れになってきた
私は夕食をとる事にした
と、言ってもさっき採ってきた果実だけ
意外とお腹が空かないのが不思議だ
明日からは本格的に行動を開始する
今日はもう寝る事にした
私は夢を見た
「何処かしら、ここ?」
目の前は真っ白で何もない
『私の声が聞こえますか?』
「えっ?誰?」
姿は見えないが声はする
品があって優しい声
『私はこの山、いや世界を管理している女神です』
「め、女神様?」
ぼんやりとだがその姿が見えてきた
何処と無くメアリー様に似ている様な気がする
『セシリア、貴女の事はずっと見ていました。過酷な現実にも負けず今までよく我慢してきましたね。そんな貴女だからこそ私はこの山に入山を許可したのです』
「あ、ありがとうございます・・・・」
『それに貴女はこの山の水、食料を口にしました。その時点で貴女は山に歓迎され祝福を受けているのです』
「あの、それってこの山から出れない、という事ですか?」
『いいえ、普通に街にも行けますし、人と出会う事も出来ます。人は一人では生きていけませんから。ただ、これからは貴女にとって良い縁が増えてくるでしょう』
良かった、私は一人じゃないんだ
・・・・まぁ、暫くは人には会わなくても良いかな?
『さて、貴女にはこの山で生活する為の『ギフト』を贈ります。1つは『破壊と創造』、物を壊し、物を創る能力です。もう1つは『転移』、山の中を自由に行き来出来る能力です」
「ありがとうございます、女神様」
『では、また機会がある時に会いましょう。あぁ、貴女をこの地に追い込んだ者達は既に神の恩恵を失っています。それなりの罰を受ける事になります』
そして、目が覚めた