セシリア、現実を知る
「・・・・悪い夢」
夢から覚めた私は、小さく呟いた
まだ日は昇っていないので夜だろう
月明かりが部屋を眩しくしている
なんで、自分が死ななきゃいけない夢を見なければいけないのか
婚約破棄され、勘当され火炙りにされなければいけないのか
確かに私は第1王子である『フェルモンド・イーストン』様と婚約関係にある
夢に出てきた『ルーシャ・ベルモンド』男爵令嬢とは顔は見た事あるが直接話した事など無い
噂でフェルモンド様とルーシャ令嬢が、最近良い関係である、とは聞いた事はあるが結婚前だし、一時的な遊びだろうから気にはしていなかった
しかし・・・・
夢で見たあの光景、あれはイーストン貴族学院の卒業パーティーの場だ
そして、卒業パーティーは今日だ
後、数時間後の出来事だ
このタイミングで見る夢・・・・
嫌な予感がする
「お嬢様?」
「あぁ、『ミシェル』。起こしてしまったわね」
此処、イーストン貴族学院は、完全寮生活で、専属メイドや執事を最低一人は持てる事が出来る
ミシェルは同い年で、私の専属メイドであり親友だ
「ちょっと悪い夢を見てしまったわ。申し訳ないけど紅茶を一杯だしてくれるかしら?」
「かしこまりました」
直ぐに紅茶の準備をしてくれる
手際がよく無駄の無い行動だ
「お待たせしました」
「ありがとう、ミシェル」
ほどよく熱い紅茶を一口飲む
あぁ、あの夢を見たせいか、心に染み渡る・・・・
「で、お嬢様が見た悪い夢というのは?」
「あぁ、私がフェルモンド様から卒業パーティーの場で婚約破棄を宣言されて、お父様から勘当を言い渡されて、最後には処刑されてしまう、という夢よ。笑っちゃうわよねぇ。ナーバスになってるのかしら?」
私は苦笑いしながら言ったが、ミシェルは笑ってなかった
一緒に笑い飛ばしてほしいんだけど・・・・
「お嬢様、非常に言いにくい事なんですが・・・・」
「な、なにかしら?」
「その夢、正夢になるかもしれません」
・・・・は?
「勘当、処刑はわかりませんが、婚約破棄に関しては間違いないです。・・・・今、お嬢様がどの様な評判になっているか知っていますか?」
「ひ、評判?まさか、悪いの?」
「『フェルモンド様とルーシャ様との仲を嫉妬して取り巻きを使って嫌がらせをしている』と陰ながら言われております」
ガンッ!
思わず頭をテーブルにぶつけてしまった
何、その噂っ!?
そもそも、私はルーシャ令嬢とは喋った事もないし、当然、嫌がらせなんて指示させた覚えなんて無いっ!!
「どうも、取り巻きが勝手にやっているみたいです。ルーシャ様の机に傷をつけたり、教科書を破いて捨てたり、挙げ句の果てには階段から突き落として、大怪我をさせて・・・・」
「な、何をやってくれてるのよ・・・・」
私は頭を抱えた
そう言えば、ルーシャ令嬢の姿を最近見てないけど、もしかしてその怪我が原因なの?
「もしかしてフェルモンド様は、その事を・・・・」
「知っていて親友の方達に調査をしていて、取り巻きの方にも話を聞いていて・・・・、たまたま聞いてしまったのですが『お嬢様に指示された』と・・・・」
「何言ってくれてるのよっ!勝手にやった事なのに責任転嫁っ!?完全に私、悪者じゃないっ!!」
思わず怒鳴ってしまった
だって、私、ルーシャ令嬢のルの字も出した事無いのよ
それなのに、いつのまにかそんな事になってるなんて・・・・
今更、私が何か言ってももう後の祭りだ・・・・
このまま、日が昇らなければ良いのに・・・・




