名残雪
掲載日:2018/03/31
駅のホームに、少し低い雲。
風はゆるく、冷たく吹いている。
「本当に、お別れだね」
「そうだな」
彼氏との短い言葉。
それだけを伝えるわけじゃない。
でも、それ以上の言葉が出てこない。
「大学までよく付き合ってくれたさ」
彼は、遠いところに往く。
どこかは教えてもらっていない。
新品の制服は、手野武装警備の所属だということを示していた。
「手紙、書いてね」
「おう、できるだけ書くさ」
電車は速足でやってきた。
プシュンとした音が聞こえると、彼は電車へと乗り込んだ。
「それじゃあな」
放送に続いて、ドアが閉まる。
ドアの窓越しに手を重ね、温もりがある。
「っまたね」
電車が動き出す。
私はドアから2歩下がり、電車が出ていくのを見守る。
空からは忘れないようにという思いとともに、白い思い出が降ってきた。




