第一章 高齢者対策室 - 06 - 手がかり
第一章 高齢者対策室 - 06 - 手がかり
「はいっ? そんなの、あんた達で調べなさいよ。わざわざこんなところまで教えにきてやってんだから。危険な動物を体を張ってなんとかするのが、市役所の仕事でしょ?」
そんなの断じて市役所の仕事ではない、とそう強く心の中で思ったが口に出して聞いたのは別のことだった。
「ソレというのは、危険な動物なんですか?」
ようやく手がかりが掴めそうであった。あまり気乗りのしない感じの手がかりになりそうだが。
「もちろん、危険に決まってるじゃない。あんなのがそこらをうろついてたら、安心して市役所に暇つぶし……もとい、相談しにくることもできなくなるじゃないの」
今言い直したけど、今確かにディおばぁさんの口から本音が漏れていた。
ぶっちゃけ頭では分かっていたけど、実際に聞かされるとあまの気分の良いものではなかった。
もちろん、わざわざ言ったりはしないが。
ただ、それよりも重要な発言があった。
「そんなに危険なアレってなんですか?」
さすがにこれ以上代名詞で話し続けるのは限界を感じて、一縷目はもう一度ストレートに聞いてみる。
ここまで話の流れを思い出す方向に作ってきたのだ、ここらで思い出してもらわなくては、さすがにもう何もできることがなくなる。
すると、ディおばぁさんは、超可愛いくて綺麗で小さな顔をぐいんと近づけてきて、一縷目の顔に接触しそうな距離で話す。
「アレって、コカトリスに決まってるでしょ。あなた、今まで何を聞いてたのよ?」
どうやら一縷目は責められているようだった。
もちろん、アレがなんであるのかなんて一度たりとも聞いていない。
だが、ここで聞いてないと言ったら、どうなるのか考えるだけでもうんざりする展開になることは必至だ。
「おかしいなぁ。僕の耳がどうかしていたようですね。……それで、今コカトリスとおっしゃいました?」
適当に話をうやむやにしながら、一番重要な所を確認する。
「言ったわよ、もちろんこの口で!」
ディおばぁさんは、一縷目の目の前で怒ったように言ったあと、唇を思いっきり尖らせる。
あわや一縷目の唇に接触しそうになるが、紙一重の所で交わした。
これが初めてではないので、ここらへんは阿吽の呼吸というやつだ。
ただ問題なのは、ディおばぁちゃんが10才の見た目美少女であるということだ。




