第一章 高齢者対策室 - 03 - 魔法事案処理
第一章 高齢者対策室 - 03 - 魔法事案処理
エルおばぁさんは、可愛いお顔を一縷目に向けて、またわけの分からないことを言い始めた。
やはり耳が遠いだけではなく、プラスアルファで他の障害が存在しているようである。
泣きたくなるような気持ちを押さえながら、プライベート用のスマートフォンを取り出す。
魔法を使うためだった。ペットにされた家が魔法によって動いていることは間違いないので、一縷目がなんとかするしかない。
異世界から来たロリBBAと違って普通に魔法を使うだけの魔力を持たないこっちの人間は、スマートフォン等のコンピュータデバイスを使わないと魔法を発動することができない。
そもそもどんな魔法を使った結果こうなったのか分からないわけだから、タロを元の場所に移動させるだけでもとんでもない手間がかかることになる。
その後さらにタロが放し飼い状態にならないように、なんらかの手をうつ必要があるだろう。
もちろん、またエルおばぁさんが魔法でなにかやらかさないことを祈りながらだ。
気の遠くなりそうな話だが、ここまできたらこの案件に最後まで付き合うしかないと覚悟を決めるしかなかった。
改めて考えてみる。
一縷目誠が公務員試験を受けて市役所の職員になった理由は二つあった。その一つは安定性があったからである。
いったん職員になってしまえば、一生くいっぱぐれないだろうと考えた。
それともう一つの理由は、見た目楽そうだったからだ。
市役所に行く度に見かける職員の中に、忙しそうにしている人物を見かけたことがなかった。しかも、肉体労働をしている姿など想像もつかなかった。
ゆえに、楽そうだと思ったのである。
市役所職員になって七年。一縷目誠の目論見は、その双方ともが危うい状況になってきている。
すべては異世界から移住してきた、ロリBBA達のせいだった。
ロリBBAは生活保護をもらい、医療はほぼ無償で受けられるようになっている。しかも、収入がないので税金をとることはできない。
まだ破綻こそはしていないが、久万市は一年と経たずに赤字団体へと転落した。
しかもこの赤字は増えこそすれ、減少に向かう目処などまったくたたない。
それだけではなく、近隣住民からの苦情が絶えることがない。それらのことも全て久万市が対応しなくてはならなかった。
もちろん財政難の久万市に、そのために回せる人材も予算もない。