第一章 高齢者対策室 - 24 - 出迎え
第一章 高齢者対策室 - 24 - 出迎え
ここに来るまでの間、最悪のシナリオであるその可能性に気づいてはいたが、あえてユウナに確認しなかった。
開いている玄関ドアをそろりを開けて中に入ると、真っ暗なはずの玄関も奥にあるリビングも、煌々と明かりが点いている。
誰か居る。
それは間違いない。
ただこの瞬間、一縷目は自分が想定していたことが事実となっていることを知った。
そのまま奥に進んでリビングに入ると、いきなりちっちゃな女の子が飛びついてきた。少女というよりはむしろ幼女である。
「あいたかったぞ、我が主殿!」
言うなり熱烈なキスをしてくる。
それも、幼女がするような可愛らしいやつではない。深い方のキスである。
三十秒ほど続いたところで、幼女の体が離れていった。もちろん本人の意思ではない。無理やりひっぺがされたのだ。
「もういいでしょ。わたくしの番です」
そう言って一縷目の正面に立ったのは、腰まで長い髪を持つ見るからにエルフと分かる美少女だった。一縷目より頭ひとつ分ほど低いが、他の二人の美少女に比べると格段に高身長である。見た目にはなりたての女子高生といったところだ。
「どうして君まで……」
話そうとした言葉が途中で途切れたのは、エルフの美少女が一縷目の唇を奪ったからだ。もちろん深い方のやつで。
やはり三十秒ほど続いた所で、深い方のキスは中断する。
エルフの美少女がユウナによってひっぺがされたからだ。
今度は何を言う間も与えられずに、一縷目の唇は深い方のやつで奪われた。
最初に一縷目に飛びついてきた幼女は一縷目リーファ。ソーサラーで実年齢は13才。一縷目の妻である。
その次に一縷目の唇を奪った美少女は一縷目セレン。ハイエルフの特徴が強いが実際はハーフエルフで実年齢は他の二人と同じ13才。同じく一縷目の妻であった。
つまり、一縷目は三人の少女――一人は幼女に見えるが――と結婚していることになる。
異世界においてはまったく問題ないが、日本では多重婚は認められていない。
もちろん戸籍など出してないので、事実婚に近い関係に過ぎないのだが、こんなことが世間に知られたら公務員としての立場を失いかねない……っていうか確実に失う。
なしにろガチロリと結婚した上に、多重婚までしている違法コンボである。世間に知れたら言い訳などできるはずがない。
そういう事情なので、この三人にはあっちの世界にとどまってもらって、土日になったら一縷目が向こう世界に行って過ごすという生活をずっと続けてきていた。




