第一章 高齢者対策室 - 21 - ユウナ登場
第一章 高齢者対策室 - 21 - ユウナ登場
一縷目は地べたに座ったままの状態で、驚いたように言った。
すると、美少女……ユウナは右手を一縷目に向かって差し出しながら答える。
「それは帰ってから話すよ。それより、魔力切れたんでしょ? スマホ貸しなよ、チャージするから」
言われた一縷目は素直にスマートフォンを差し出す。
それを受け取ると、ユウナは空中で魔法陣を描きその中にスマートフォンを持っていく。
すると、スマートフォンはまるで魔法陣に引っ張られるように空中に浮かんだ。
魔法陣の反対側に手をかざすと、手のひらから魔法陣を通って青白い光がスマートフォンに流れ込む。
その作業は一分ほどで終わった。その間に一縷目はズボンについた砂を払って立ち上がった。
「はい。フルチャージしといたから」
魔法陣を消してスマートフォンを取ると、ユウナはそう言いながら立ち上がった一縷目に返す。
「すまん」
受け取ったスマートフォンを確認すると、アプリの中にある魔力ゲージが最大まで回復していた。
「この二人、早く戻したほうが良くない?」
ユウナが一縷目に向かって、提案するように言う。
「分かってる。ちょっと待って」
シャツを脱いで握った拳銃から自分の指紋を拭き取る。
そのうえで、もう一度警官の手に握らせた。
「よし、これで戻せる。少し離れて」
自分も少し離れた位置に遠ざかり、一縷目は魔法スマホアプリを起動すると、カメラを使って地面に転がったままになっている警官二人をターゲットとして選択する。
すると、選択できる魔法の中に『蘇生』があった。
一縷目はためらうことなく『蘇生』をタップする。
すると、すぐに地面の上に倒れていた二人の警官の体がビクンと動き、ピューという笛のような音を立てて息を吹き返した。
もちろん生き返ったわけではない。
コカトリスの死の凝視が警官を捉える寸前に、一縷目がスマートフォンを使った魔法で仮死状態にしたのだ。
それで、コカトリスの力は効力を発揮することなく、空振りしてしまったのである。
おかげでなけなしの魔力は底をついてしまい、危機に陥ってしまったのだが、結果オーライということで全員助かった。
「大丈夫ですか?」
近寄って警官二人に聞いてみる。
すると、警官は自分の頭を両手で叩きながら立ち上がる。
頭がうまく働かないのだろう。たぶん後遺症はないはずなのだが、半分死んでたのださすがにそこまでの責任は持てない。




