第一章 高齢者対策室 - 19 - 被害者
第一章 高齢者対策室 - 19 - 被害者
だが、すでに遅かった。
騒いでいたコカトリスは、ついにヤブの檻から脱出を果たす。
飛び出てきたコカトリスは、顔をまだ生きている警官に向けた。
向けられた警官は、その瞬間にパタンと地面に崩れ落ちた。
ただコカトリスは、少し離れた位置にいる一縷目には気づいていない。
夜中ということで、良く見えないのだ。
手に持ったスマートフォンの魔法アプリからは、魔力残量がないというメッセージが表示されていた。
「ちっ、今ので魔力が底をついた。今日こんなに魔法を使うと思ってなかったからなぁ。どうするよ、俺」
微量の魔力を補うために、スマートフォンを利用するのだが、魔法を使うためにはスマートフォンに魔力を予めチャージしておく必要があった。
市役所の職員として働くようになってから、こんなに魔法が必要だった日はなかったし、またそんな日が来るとは思っていなかった。
だから、最近は何日か置いて少しづつしか魔力をチャージしてなかったのだ。
フルチャージしていたら、もっと簡単に決着はついていた。
コカトリスは周囲を探りながら、この場所から逃げ出そうとしている。
非常にまずい事態だった。
取り逃がしたりしたら、市民にどれだけの犠牲が出るか分かったものではない。
それだけは避ける必要があった。
一応こう見えても、一縷目は市役所職員である。市民の安全を第一に考えなくてはならない。
たとえそれが建前であったにしてもだ。
もし、やるとしたら、コカトリスが今の場所から逃げ出すその瞬間だ。
もちろん素手で勝てる見込みなんて万に一つもない。
だから、警官が手に持っている拳銃を使うしかないだうろ。
もちろん一縷目は銃を撃った経験などない。当たるかどうか分からない。だが、全弾撃てば一発くらいは当たるかも知れない。それに賭けるしかなかった。
そんなことをすれば、言い訳などできない。間違いなく懲戒免職処分になるだろう。
だが、今は考える必要はなかった。
これは一縷目がやらなくてはならないことだからだ。
成功すれば、責任を取ればいいだけの話だ。
失敗した場合は、何も考える必要がなくなる。一縷目は確実に死んでいるからだ。
コカトリスが動き始めた。
逃げ出そうとしている。
運がいいことに、一縷目がいるのとは反対方向に向かっていた。
コカトリスが三メートルほど離れたところで、一縷目は警官の持つ拳銃に飛びついた。




