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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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92話 狼車を見せたらテンションが上がりました

城で食事を済ませた後、俺たちは才に案内されて約束の屋敷に向かうはずだったのだが・・・


「おい、お前ら何をしている?」


狼車とオウカが休んでいる厩舎に向かうとケイトを始め何人かの魔術師らしき人たちが狼車の前に集まっていた。全員ローブ姿で見るからに怪しいが、ケイトがいることからこの人たちも宮廷魔術師なのか?


オウカはケイトを知っていたため特に警戒していない様子で彼女たちを監視していた。実際ケイトたちは一切触っておらずスケッチなどしていたらしい。


「サ、サイ・・・すまない。魔法具の狼車なんて初めてだからすごく気になってしまって」


魔法具マニアであるケイトにとっては衝動を抑えきれなかったみたいだ・・・いや、観察程度で踏みとどまったのだからよく我慢した方なのかもしれない。才と俺たちが現れたことで動揺を隠せないケイトの周りにいる魔術師たちもケイトと同じ魔法具マニアなのだろう。テオの魔術師って皆こうなのか?


「お前らな、これは光輝たちの物なんだぞ。そんなことして良いと思っているのか?また、姫に雷落とされたいみたいだな」


才はあきれた顔でケイトたちを見る・・・おそらくこれが初めてではないのだろう。まあ、ケイトは乗せても構わないと思っていたし別に中を視られて困るものは特にないだろう。


「別に構わないよ・・・もしよかったら中も見てみるか?」

『いいのですか?!』


見事にハモッた魔術師たち。俺が扉を開けるとケイトたちも中へ入っていく。


「バカな!なぜあの車体でこの広さが!」

「おそらく【空間魔法】を使用して中を広げているのでしょう。それよりもこの魔法具の家具・・どれも一級品ですよ!」

「っちょ!あんなたち押さないでよ!もっとゆっくり見せなさい!」

「うるさい!早く俺たちにも見せろ!」

「団長見てください!こちらも部屋がいくつもあります!わ!シャワールームまでありますよ!」

「ああ・・・素晴らしすぎます!魔法具マニアにとってたまりません!この高ぶる感情を抑えられません!」


まるで乗った時のワイトたちみたいに興奮してはしゃぐ魔術師たち・・・いい大人がこんなにはしゃいでいいのか?ワイトたちは無邪気な可愛さを感じたがこれは正直呆れる。というかケイトのテンションが限界突破していないか?


「へぇ・・・すごいな。これが馬車ならどんな旅路でも快適だろうな」


才も関心した様子で【万能鑑定】で狼車を観察している。スイちゃんも驚いたように入り口で中と外を見比べていた。


「当然や、ワイら技術開発部門が総力上げて開発した最新作やからな」


自慢するゾア・・・だが、正直これは自慢して当然なものだろう。リモコンを取り出してモニターで外の映像とか映し出すとケイトたちは目を丸くさせていた。


「ゾアさん、これほどの魔力・・・魔石だけで動かせるのでしょうか?他にも何か用意しているのでは?」

「お、ええ所に気づいたねケイトはん」


ケイトの質問にゾアは嬉しそうに答える。俺は作ったのがゾアという理由であまり気にはしていなかったがワイトも興味津々に耳を傾けている。


魔石とは、その名の通り魔力が結晶化された石のこと。魔法具のエネルギー源とも呼ばれダンジョンの外ではかなり貴重なものらしい。まあ、ダンジョンには魔素の濃度が高い所が沢山あるから簡単に量産できるのだが。


「実はこの狼車・・・魔石は一切搭載していないんや」

『え?』


ゾアがそう説明するとケイトと魔術師達が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。


「いやいや、【空間魔法】とかこんな高性能な魔術が施されて魔石を使っていないのは嘘ですよね」


魔術師の一人が『ナイナイ』と手を振りながら言った。


「確かに、これほどの高性能の刻印魔法を常時発動させることなど魔石なくしては不可能です・・・しかも馬車など旅目的の者だとそれはもう高純度な魔石が大量に積む必要があります」


ケイトたちがそう分析をしていると、ゾアがニヤリと笑いながら才の方を見た。


「英雄のニイチャンがもう答えを視たみたいやな」

「ああ・・・外装の所々に【魔素吸収】と車輪の部分に【地脈吸収】の刻印を施されている。それで魔石の代わりの魔力を補っているんだろ」

「正解・・・っで、その魔力はこのエネルギータンクに補給されるんや」


【魔素吸収】はその名の通り、大気中にある魔素を吸収して魔力に変換させること。そして【地脈吸収】・・・これは俺も良く知らないのだが、何でも大地の底にある地脈というものには膨大な自然のエネルギーが流れているらしく、この刻印魔法はそのエネルギーをほんの一部だけ吸い取ってエネルギーに変換させるものらしい。


そしてその、吸い取った魔力はゾアが見せたタンクにため込まれて狼車の魔法を常時発動させることが可能なのだ。簡単に説明すると、常に充電可能な電気自動車みたいなものだ。


動かしていない今も、大気中の魔素や地脈からエネルギーを吸い取ってタンクの補充を行っている、まあ充電可能な電池みたいなものだ。


「こんな技術・・・初めてです!もしこれが普及されるようになれば魔石問題も大幅に改善できます!」

「ケイト様、是非これを作ってみましょう!自分、今すぐにでも工房に行って開発作業に入りたいです!」

「そうですね、すぐに研究を開始しましょう。コウキ殿、皆さん、我々はこれで失礼します。ゾアさん、貴重な講義ありがとうございました!」


そう言って、魔術師たちは急いで狼車から降りてどこかへ向かった。


「あれが、宮廷魔術師のトップとはとても思えないだろうな」


才があきれながらケイトたちの後ろ姿を見て呟いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その後才とスイちゃんを乗せた状態で目的地に向かうと二人は乗り心地とか色々と感想を述べていた。ケイトが知ったらきっと羨ましがるだろうな。


「外の音は聞こえませんし、揺れもありません・・・正直動いているのすら分かりませんね」

「【耐震】と【防音】の刻印魔法が施されておるからな・・・せやけどさすがに外の様子が分からなすぎるのも問題やな、【防音】は音量の加減ができるように設定しなおさなアカンな・・揺れも少しあった方が旅をしている味はあるな・・・貴重な意見感謝するで」


乗りながらもデータを取っているゾア。


モニターで外の様子を確認すると多くの子供たちが狼車を見ていることに気づいた。


「この辺って子供が多いみたいですね」

「ああ、もう下校時間だからな。皆その帰りなんだろう」

「下校時間って・・・・この辺りに学校があるのか?」

「はい、王立学校・・・元々はテオの学者たちが研究するための施設でしたが。ギルドが一部買い取り、学校を立ち上げたのです。貴族平民関係なく7歳から12歳まで義務教育として入学し、15歳まで無料で通うことができます」


へぇ・・・王立学校か。やっぱりレベルは高いんだろうな。ウチの学校も負けていないが、規模で考えたらやっぱり王立の方が各上なのだろう。


外から俺たちの姿は見えていないのだが、ワイトとプラムは見えもしないのにすれ違う子供たちに手を振っていた。そういえば、トレスアールじゃワイトくらいの子供でもギルドで働いているんだよな・・・まだ10歳前後で仕事ってよく考えたらおかしいよな。というか、二人から同年代の子供の話を聞いたことがない・・・・これってかなりまずいんじゃないか?


オリジンにも学校はあるが二人共ギルドで働いているから通ってはいないため、オリジンでの友人はあまりいない。


「なぁ、才。ワイトたちの仕事が終わった後、二人にテオの学校に通わせてくれないか?」


俺がそう提案するとさっきまでモニターを見ていた二人がギョッと俺の方を向いた。


「別にそれくらい構わないが・・・お前のところにも学校はあるだろ?神エイミィの学校が・・・」

「そうなんだけど、二人にはもっと色んな人と触れ合って学んでほしいんだ」


ワイトは元々ダンジョンの外で見分を広め、知識を得ることがしたくて合宿に参加していた。プラムもさらなるアイディアを求めて勉強をしている。ここにはトレスアール以上に様々な人が集まる・・・二人にとって良い環境だと思う。


「コウキ様いいのですか?」

「学校に行ってもいいのですか?」


二人も学校に通いたいそうに期待に満ちた顔をしていた。


「ああ、だけどしっかり学んで色んなことを経験しな。幸いここにはギルドで一番偉い人がいる。ギルドの手続きとかは簡単にできるだろうし」


軽く才をチラッと見ると『構わんぞ』と言って了承してくれた。そして二人は嬉しそうにすれ違う生徒たちを見た。いずれ彼らたちと友達になれると考え今から楽しみにしているのだろう。


「あと、仕事はしっかりやり通しなよ。浮かれた状態で仕事には臨むな」

『はい!』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


屋敷に到着するとそこは見事な木造建築だった。トレスアールの別荘の初期状態と異なりこっちはしっかりと手入れがされていて十分に人が住める状態だった。


そして屋敷の目の前には三人の男女が待っていた。おそらく彼らが住み込みで働いていた者たちなのだろう。


「お待ちしておりましたサイ様。そちらの方が新しい主のコウキ様ですね?」


最初に挨拶をしてきたのはモノクル眼鏡がよく似合う老紳士。メッチャセバスチャンと呼びたくなる外見だ。


「ああ、光輝。こいつらが住み込みで働いてもらう使用人たちだ。執事のジェームズ、料理担当のヘレン、そしてメイドのコリーだ。全員の実力は俺が保証する、何かあったら彼らを頼ってくれ」


老紳士のセバス・・ではなくジェームズさん。気の強そうなエプロン姿の女性ヘレンさん・・そして若いメイドのコリーさんか。随分バランスの取れた使用人たちだな。


「まあ、肩書は執事、料理長、メイドってことだが三人とも元商人で交易の手伝いもしっかりやってもらう予定だ」

「そうなんだ・・・え?じゃあなんでここで働いているんだ?しかも執事やメイドとして」

「・・・まあ、色々と訳ありなんだ。だけど悪い意味ではない・・・本人たちの意思でここで働いているだけで、仕事などはまじめにやってくれる」


まあ、才がそこまで言うなら俺は構わないし。一応信頼してここを任せているわけだからな。


「それじゃ、まずは屋敷の案内だな」


そう言って才が屋敷のカギを開けて中へ入っていく。


中の構造はかなり豪華で、トレスアールの別荘よりもはるかに広い。20人くらいが住んでも余裕ありそうなスペースだ。正直、これを本当にタダでもらって良いのかと本当に思ってしまいそうだ。


家具やベッドなど生活に必要なものはしっかり揃っているし特に庭が素晴らしかった。


「これはまた見事な庭だな」


芝生はまさに緑の絨毯と言いたくなるくらい綺麗で植えられている木とかもしっかり手入れされている。いくつか畑やガーデニングできるスペースもあるからここで何か育てるのもありだなと思った。


「アウラ、ここに生産部門の畑を作ることは可能か?」

「可能です・・・土の質もかなり良い状態で保っています。さすがに魔素で育つ作物は難しいですが、一般の果実は問題なく育てられます。しかしなかなか良い場所ですね。眺めもいいですし。色々と育てたいものがあって楽しみです」


さっそく何を育てるか考えているアルラ・・・この広さだったら家畜とかも育てられそうだし、生産部門の第二支部でもありだな。


「気に入っていただけたでしょうか?この庭は私が手入れしたものなんですよ」


自慢げに話すジェームズさん・・・執事ってかなり万能ってイメージがあるが、この人もその一人なんだろうか?


「素晴らしい庭です」


アルラがニッコリ微笑むとジェームズさんは少し照れて目をそらした・・・・まさかロリコンじゃないだろうな?


「次は寝室だな・・・まあ、お前たちが使うことはあまり無いと思うが」


才の言う通り、俺たちがここで寝泊まりすることはあまりないと思う。ダンジョンとつなげるわけだし、ここはどちらかというと交易用として働く住民たちの仮眠室として使うのがいいかも。


だけどなかなか良い部屋だ、一部屋で4人くらい広々と寝られるスペースはあるな


「次は風呂場・・・まあ、ここはちょっと工事が必要かな」


風呂場はかなり狭く、せいぜい二人入れるくらいの狭い風呂場だ。


「あ、大丈夫。こっちに専門家がいるから改装とかはこっちが受け持つよ」

「分かった・・・前の持ち主があまり風呂に拘っていないのが問題だったな」


ブツブツとつぶやく才・・・前の持ち主とは知り合いなのだろうか?


「次は倉庫だ・・・一応温度調整の機能は設置してある」


屋敷を出て隣のレンガ倉庫へ向かう。巨大トラック二台分は入れそうな広さ。これなら品をある程度ため込んでも問題はなさそうだ。


「ふむ・・・確かに温度調整の刻印魔法は施されているみたいやな」


ゾアがまじまじと横壁に施されている刻印を見た。壁にはかなり大きく刻まれてあるが、倉庫全体の温度を調整するにはこれくらい大きくないといけないのだろうか?


「もし、不満があれば言ってくれ。専門家を呼んで刻印はこちらで消去『あ、大丈夫、自分でやるで』・・・そうか」


ゾアがそう言うとそわそわした様子で俺を見た。


「まだ購入していないからもう少し待ってくれ」


購入する予定ではあるが、まだ正式に俺の物となっていないから今は『待て』の状態にした。とりあえずここの改造は後でゾアに任せるとしよう。


そして次に向かったのはリビング。ここは別荘と似た構造ですぐ目の前にキッチンがあるためここで食事することが可能だ。


「なかなかいい場所だな」

「気に入ってくれたなら良かった・・・それじゃあ、これが最終確認だ」


才はそう言ってモニターを操作すると、この屋敷の詳細データを契約書が表示された。俺は目を通した後に『購入』ボタンを押してステータス欄の所有物件に『屋敷』と表示された。


「これでこの屋敷はお前のものだ。中の物とかも自由に使って構わない」

「改めてよろしくお願いします、コウキ様」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


こうして俺は新たな仲間、ジェームズ、ヘレン、コリーを加えて交易の準備に取り掛かるのであった。


・・・そういえば、人間の仲間ってエド以外いなかったな


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