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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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90話 勲章式を開いたら人が集まりました

王都テオ


テオはまさに異世界の王国というイメージにピッタリな場所だった。要塞と表現したくなる高い壁、そこから見張りをしている鎧をまとった兵士、門の上には大きな国旗が飾られており、多くの入国者たちの行列ができていた。


「俺たちもあの行列に並ぶのか?」

『ご安心ください。賓客用の特別門がありますのでそこを使用します』


防音狼車に乗っているため、外にいるケイトと連絡とるため彼女には『トランシーバー』を渡してある。渡したときの彼女の眼の輝きは今でも目に焼き付いている。まるで新しい玩具を手にした子供のように何度もトランシーバーで連絡を取っていた。


「ところで皆は元気にしているのか?」

『ええ、オリジンと交易を結ぶことになって姫様はかなり仕事熱心にしています。サイも交易に出る影響を考慮して商人ギルドの体制を整えることでかなり忙しくしています。トレスアールでのデータがかなり役立っているみたいです』


さすが才だな、もうオリジン商品を受け入れる準備を整えているのか


『ヒュウとヒスイはここ最近出没した魔物の討伐に出ています。まあコウキ殿が来ることは知っていますからすぐに終わらせて戻ってくると思います』


テオも忙しそうだな、ただでさえ普段から皆忙しい身だっていうのに・・・わざわざ俺たちが来る日にスケジュールを組んでもらっているんだ。


「ということは、皆と会えるのか?」

『そうですね。今日行われる立食パーティには全員集まれそうですが、それ以降だとそれぞれ抜けたり入ったりですね。私も仕事の報告などがありますので皆さんをご案内した後は報告書をまとめないといけないのです』


まあ、ずっと付き合わせるのも悪いしそれでいいか。ケイトも確か宮廷魔導士団の団長という立場なんだし、忙しいのは当然か。


『それでは専用の門を開きます』

「門って・・・何もないぞ?」


ケイトにそのままついていったからよく見ていなかったが、俺たちは巨大な門から少し離れた何もない岩壁の真ん前にいた。そしてケイトは懐から何やらギルドの刻印が彫られたメダリオンをかざす。


『レオナップ!』


すると、岩壁が勝手に動き出し大きなトンネルが作り出された。まるで昔見た映画に登場する魔法少年が魔法の横丁へ入るときのように。


『こちらは非常時に使用していた隠し通路だったのですが、戦争時代にすでに知れ渡ってしまったのでサイが『特別通路』として使用することにしたそうです』


あいつらしいな、確かに知られている隠し通路なんて意味ないからな。


トンネルを抜けるとそこは大通りだった。歩道には大勢の人たちが集まっておりまるでパレードでも見に来ているかのようににぎやかだ。トレスアール以上の活気と住民たちの声。まるで田舎から都会へ急にやってきたような衝撃だ。


「あの、これって歓迎されているのですか?」

『あ、申し訳ございません。今回、コウキ殿たちが来ることを知っているのはごく一部です。おそらく特別通路が開いたのが見えて皆興味をもって来たのでしょう』


まじかよ・・・やっぱ王都となると規模が違うな。人口もそうだし、歴史ある街って感じだ。ワイトたちも目を輝かせながら街を見ていた。そういえば、ゾアとアルラはダンジョンの外に出るのは初めてだったな。・・・・なんだろうこの年少組と保護者みたいな構図。


テオの住民たちはオウカや狼車を興味深そうに見ていた。まあ、こんな狼見たことないだろうし、この狼車もかなり手の込んだものだからな。


「コウキ様、見てください。すごく立派なお城です」


プラムがはしゃぎながらモニターに映る城に指をさす。まさにテンプレートの城・・・ところどころ修復された跡が見えて真新しい箇所が目立つことからまさに戦争を生き抜いた城って感じだ。


『あれが私たちの国の象徴、テオヴェップ城です。表彰式などもあそこで行う予定なのでこのまま城へ向かいます』


あれ?てっきりギルドの本部とかでやるのかと思っていたが。


「表彰式ってギルドで行わないのか?」

『本来はそうなのですが、皆さんを歓迎するためという意味もあって今回は特別に城で行うことになっているのです』

「へぇ・・・」


プラムは城の中に入れると聞いてテンションを上げている。まあ女の子だったらそういう反応をするよな。アルラは町の方に興味を持っているようで城の方にはあまり目を向けていない・・・まあ元神様にとっては建物よりも人か。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


城に到着すると俺とワイト、プラムはスーツとドレスに着替え狼車から降りる。一応表彰式今回の主役は俺たちだからアルラとゾアは別行動となった。オウカは狼車が気に入ったのか、厩舎で監視していることになった。護衛のオウカとグンナルがオリジンの軍服らしき正装に着替える。


これもエイミィが考えたデザインらしく、住民たちからはかなり好評らしい。魔糸など高価な素材に技術開発部門の技量も注ぎ込まれた代物であるため、かなり高性能な衣装となっている。


「正直、自分たちがこんな良いものを着てよいのか分かりません」

「ええやん、コウキさんの護衛なんやしそれくらいの装備は当たり前やで」

「そうですね、戦闘服としても十分に効果を発揮しますから。光輝様のことをお願いします」

『御意』


ゾアとアルラに頼まれるとランカとグンナルは気を引き締めたかのように敬礼する。


「じゃあ、俺たちは謁見の間に行ってくるよ。くれぐれも城の人に迷惑をかけるなよ」

「分かっていますよ、コウキさん・・・表彰式頑張ってきてください」


そう言って俺たちはケイトについていき、表彰式が行われる謁見の間へ向かい、ゾアたちは応接室へ案内されていった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


謁見の間へ到着するとケイトは少し悩んだ様子で門を見ていた。


「ケイトどうかしたのか?」

「いえ・・・そうです皆さん、これから中に入った時、色々とツッコミを入れたい気持ちになるかと思いますが、どうか平常心でいてください・・・それと、サイからの伝言です『スマン』」

『え?』


「コウキ・エドワード・カンザキ様、ホワイトリー様、プラム・グローブ様ご到着!」


俺たちが間抜けな声を出した瞬間、巨大な扉が開く。


玉座へ続くレッドカーペットの両端には大勢の人たちの拍手に囲まれ、視線が一斉に俺たちに突き刺さる。


おいおい、才聞いていないぞ!なんでこんなに人数がいるんだよ!話じゃギルドの幹部がと重鎮数名が参加するだけじゃなかったのか?!


見渡してざっと数えただけでも200人近くはいる。玉座には派手などれを身にまとったセレナの姿があった。装飾されたドレスに煌びやかな宝石が付いたティアラ・・・これでもかといいたげな重装備衣装。そして、彼女から溢れる覇気・・・これが王族オーラというものなのだろうか?


(・・・誰だよあんた!)


セレナを知っている俺は心の中で叫ぶ。


「さぁ、奥へ進んでください」


ケイトがそっと俺の背中を押し、俺たちはゆっくりと玉座の前まで歩いていく。プラムとワイトなんかはすごく不安そうな顔で足を震わせながら歩いている。


ようやく玉座の前までたどり着くとセレナの隣に立っていた才に向けて睨みを飛ばす。


すると才も気づき、すぐに目をそらす・・・こいつめ!


「オリジンのコウキ・エドワード・カンザキ。ノフソの森よりわざわざテオプア王国へお越しいただいたこと感謝します」


「こちらこそ、お招きしてもらい感謝しています」


社交行事なんて知らない俺はとりあえず頭をフル回転させて流れでそれっぽい返事としぐさをした。それを見た重鎮たちはクスクスと笑い、やらかした感がしてきて恥ずかしくなってきた。


才も笑いを堪えながら俺を見ていた・・・ONORE!


「この度、犯罪組織である闇ギルドの発見そしてその支部の壊滅の貢献は実に素晴らしい活躍です」

「ありがとうございます」


思わず頭を下げる俺を見て貴族たちがまたクスクス笑う。


「此度の働きに敬意を表し勲四等に叙します」

「つ、謹んでお受け致します」


そう言って、従者の一人が三つのバッヂを運び、セレナは一つずつ俺たちの胸につける。こうしてみると、やっぱり王族なんだなって改めて思った。だが、知り合いのせいもあって正直やりにくい。


3人に勲章を付け終わると、再び拍手の嵐に包み込まれる。正直、なんでここまで人が集まるのか分からない、後で聞く必要があるな。


「これにて、勲章授章式を終了する。本日ご参加していただいた皆さん本当に感謝します。本日行われる夜会にも是非ご参加ください」


その後、才の宣言で勲章授与式を終了するとさっきまで集まっていた人たちの殆どが一斉に謁見の間から出ていく・・・いったいどういうことなんだ?


「光輝・・・すまんな。正直ここまで集まるとは思わなかった」

「そうだよ、どういうことなのか説明しろよ。ワイトとプラムなんか、知らないで立っているだけで精いっぱいだったんだぞ!」


二人の方を軽くたたいた瞬間、二人共ペタンと座り込ん閉まっていた。子供にこんな環境は正直心臓に良くないと思った。


「・・・まったく、才が参加すると知った瞬間、貴族たちに一斉に知れ渡ったのが問題でしたね」

「俺のせいだっていうのかよ!」

「当然です、普段からもっと接待をしていれば無理やり参加しようと考えるものはもっと少なかったはずです。もう少しご自身の立場を考えるべきじゃないですか?」

「その言葉そのまま返してやる。俺はギルドの社長として参加していたんだ。元ギルド会計とはいえ王族の姫が出ることの方が問題だと思うぞ。そもそも城で行おうって勝手に計画したのも問題だろ」

「何よここほど警備が頑丈で安全なところがないと思ったから城で行おうと思ったのですよ。コウキさんたちは功労者であり大切な交易相手、何かあっては一大事なのです」


なんか、二人して喧嘩を始めているが止めなくていいのか?周りの人たちは『またか』とか呟いて温かい目で見ているし。


「・・・つまり何か?国の有名人トップ二人がノフソの森出身である田舎者に勲章を渡すのが珍しすぎて、夜会の前に貴族たちが見に来たってわけか?」

「「そういうこと」」


つまり、今残っている人たちが本来参加するはずだったギルドの幹部たち。っで、さっき出ていったのは興味で見に来た貴族たちってことかよ・・・随分自分勝手だな。


「ところで、この勲章は本当にもらって良いのか?」

「ええ、あなた方の功績はまぎれもなくギルドの助けとなりました。それはギルドの勲章として受け取ってください」


そういうことならありがたく受け取ろう。ワイト達もやっと力が戻ってきたのか、大事そうにバッヂを見た。


「一応、こっちが今回来れなかった人たちの分だ。数は足りているはずだ」


そう言って、才が新たに皆の分のバッヂを取り出した。俺はそれを受け取りマジックポーチに入れる。


「改めて、ようこそ王都テオへ・・・歓迎します」


「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」


始めはどうなるかと思ったが、とりあえず俺たちの授章式は無事に終了した。


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