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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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85話 商売繁盛したら敵ができました

雑貨店リズアの売れ行きは物凄かった。

値段が高いのにもかかわらず人々は店になだれ込むように品の奪い合いをしていた。


「お客さん、落ち着いてください!今新しい品を用意していますから!」

「・・・客数、先日より30%増加。私だけでは対応しきれない確率70%」


予想以上の客足・・・仕方なく俺はダンジョンから新しい店員を5名呼び、リズアで働いてもらうことになったが、それでも何とか回せている状態だった。


最初は主婦中心に食材を並べていたのだが、プラムやワイトの商品も置くようになって冒険者たちも立ち寄るようになった。二人ともここらじゃ有名らしく、二人の作品が販売されているという噂を聞きつけると、即完売となっている。


他にもリズアから試作品とかをかなり高額で置いているのだが性能を見た冒険者たちが何の躊躇なく買っていってくれた。


「それじゃあ、俺はこれから売り上げの報告をしに行くよ、メーガン後は任せてもらっていいか?」

「はい、お任せください」


俺はオウカを連れてギルドへ向かう途中、何やら痛い視線を感じた。


「コウキ様・・・何やら殺気がこちらへ向けられているようですが」

「ああ、それになんかここは少し静かだな」


普段だったらここも結構賑やかな場所であるはずだがやけに静かだ。


「おい、お前!最近できたリズアの店長だな?」

「ん?そうですが?」


後ろから声をかけられたので振り向こうとした瞬間、男が急に殴りかかろうとした。・・が、すぐ隣にいたオウカの体当たりによって防がれる。


「がは・・何しやがるこの犬!」

「ぐるる・・・コウキ様、この者は敵とみなしていいですね?それとせめて狼と言ってほしいものだ」


倒れた男の上に乗り今にでも噛み砕きそうな勢いだ。


「待てオウカ。・・・あんたらいきなり現れて殴りかかるとかどういう要件だ?」

「要件もクソもねえ!あんたの店のせいでこっちの売り上げはダダ下がりだ!」


ああ、商売敵ってやつだな。まあ、ウチの店にあんなに来たらそりゃ他の店の売り上げは下がるものだ。つまり、さっきから俺を睨みつけている奴らは皆俺の店のせいで売り上げが下がった人たちってことか。


とりあえずこの空気はまずいな・・・


「お前ら、やめんか!」


そこへやってきたのはウィリアムさんだった。後ろには警備兵たちもいることからして、かなり騒ぎになっていたみたいだな。


「一体何の騒ぎだこれは?」

「ギ、ギルマス!」


ウィリアムさんの顔を見た瞬間、男は助かったと言いたげに安心した顔を見せる。だが、次の瞬間市場に響き渡るくらいの大声でウィリアムが怒鳴る。これで【拡声魔法】を使っていないんだからびっくりだ。


「お前ら、それでも商人か!商人なら頭を使わんか!」


いや、そんな立派な筋肉を持ったあなたが言っても説得力無いのですが・・・


「コウキ君もその狼を下げてもらえないか?」

「はい・・・オウカ、こっちに来な」


オウカがどくと男はようやく解放されて立ち上がる。


「この件は儂が預かる。お前らはすぐに店に戻れ、コウキ君は儂の部屋へ来てくれ」

「あ、はい」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ギルマスの部屋


「さて、どう説明したらいいのやら」


ウィリアムは難しそうな顔で俺の売り上げリストを見ていた。


「初めて君と会った時からこんなことが起こるのではないかとは思っていたのだ」


初めてというのは俺がウィリアムさんと契約した時だったな。


「こんなことって?」

「以前も言ったと思うが君が持ち込んでくる品はどれも良いものばかりなんだ。だから市場のバランスが崩れる可能性がある」


そういえば言っていたな、あの時はまだダンジョンができたばっかりだから流通は控えていたはず。でも今は冒険者たちの数が増えて市場にも出るようになっている・・・と思っていたのだが、やはりそれでも影響力は大きすぎたみたいだ。


「・・・・すみません」

「いや、君は悪くない。ただ・・・あちらにも生活がかかっているのを理解してもらいたい」

「今後は数を制限した方がいいでしょうか?」

「だが、それでは売り上げがかなり下がってしまうぞ?」

「まあ、こちらの目的はお金というよりもオリジンの存在を受け入れやすくする下準備ですから」


正直、金に関してはダンジョンでかなり儲けさせてもらっているから特に困ってはいない。それに今の状態でもかなりキツキツだからな・・・お客さんには悪いがこちらは少し余裕を持った接客をさせてもらうよ。


「そうか・・・それならいいのだが。そうなると問題はあちらだな」

「あちらって、さっきの商人たちですか?」

「うむ、今ここで君が商品の数を制限した場合。君は彼らに屈服したと思い込んでしまうだろう」


なるほど、調子に乗って色々と言ってくる可能性があるな。


「こちらも色々と手を回すが、けっして彼らに下手に出ないように」


そう言って俺はウィリアムさんの部屋から出ていく。


『コウキ様、今よろしいでしょうか?』

「メーガンか、どうした?」

『はい、ゲルド・ミューラーという方がコウキ様にお会いしたいと申していまして』


ゲルド・ミューラー・・・どこかで聞いたことがあるような。


「分かった、すぐに行くから待ってもらうように伝えてくれないか?」

「かしこまりました」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


店に戻ると小太りのおっさんとやや豪華な鎧を身に着けた二人の冒険者。そして奥にはちょうど新商品を持ち込んでいたワイトとプラムもいた。


おっさんを見ると、ハッとフラッシュバックのように記憶がよみがえる。そうだ、どこかで見たことあると思ったらウィリアムさんと契約した後に話しかけてきた商人だ。あれから随分経ったがあちらは俺のことを覚えているのだろうか?


「おや・・・まさかと思いましたが。店長は君だったのか。あの頃はまだ新米だったのに随分と立派な店を構えましたね」

「お久しぶりです・・・資金もだいぶ貯まったので店を開こうかと思いまして。数日前からオープンしたのです」

「うむ、知っている。『雑貨店リズア』その名を知らない商人はここにはもういないだろう。相変わらず素晴らしい品をそろえているみたいだな」


ゲルドは不気味なほどの笑顔で俺を見ていた。


「それで、要件は何でしょう?ただ挨拶をしに来たというわけではないはずですよね?」

「貴様、ゲルド様に無礼だぞ!」


冒険者の一人が剣を抜こうとするが、それ以上に早くランカの爪が喉元に突きつけられる。


「お前らも妙な動きをするな・・・」


冷たいランカの声に冒険者は動けず剣を地面に落としてしまう。


「ほほう、なかなかの護衛ですな。ふむ、私も時間が惜しい。簡潔に述べると、商談の話で自分の店と提携してもらいたいのだ」

「提携ですか?」

「ふむこう見えて私はAランクの商人でな、冒険者をターゲットにした商品を売っているのだ」


そう言えば、俺が初めて持ってきた鉱石なんか欲しがっていたな。


「ですが自分が売っているのは、主に食材関係。一般人をターゲットにしたものですよ。衣服や武具もありますが、それはほんの少しです。そちらと提携しても特にメリットはないかと思いますが。加えて自分たちはCランク。Aランクの商人と協力できるほどの実力はありません」

「ふふふ、そんな謙虚にならなくても構わんさ。先ほど言ったように、今君たちを知らない商人はここにはいない。君たちには話題性が今最高潮なんだよ」


なるほど、確かに今この市場で一番波に乗っているのはウチだ。広告塔としてならかっこうの場所だ。俺が逆の立場でも同じような考えはするかもしれない。


「先ほど君は一般人をターゲットにしているといったね。ならそのターゲットをもっと広げようとは思わないかね?私の店で取り扱っている武具なんか置けばきっと冒険者のお客さんが増えると思うのだが」


「申し訳ございません。正直、現在の自分たちではこれ以上店の拡大は厳しいと判断していまして、近いうちに品の数を減らす予定です。それと、武具や衣服などは自分の仲間のもの以外は置くつもりはありません」

「品を減らす?・・・それは商人として愚行としか思えないのだが・・それに武具というのはそこの少年が打ったものかね?その程度、私の店で取り扱っている品の方がはるかに豪華だぞ」


鼻であざ笑うゲルドと二人の冒険者。ワイトが持ち込んで来たのは家庭用の包丁と銀製のバスタードソード。ゲルドは気づいていないようだがどちらもユニーク武器でいろんな効果が付与されている。


「性能で言えば、彼の作った武器の方が格段に上ですよ」


ワイトの武器をバカにされて俺もカチンと来たのか。挑発的な態度で言い返した。


「ほお、そこまで言うのなら試してみようじゃないか」


冒険者の一人が豪華な大剣を構えながら外の大通りに出る。


「コウキ様、ここは俺に任せてください」


グンナルがワイトの持っていた剣を手に取ると何か感じたのか、ワイトを見て笑う。


「良い剣だ」


グンナルが剣を片手で構える。俺も遠くから【鑑定スキル】を発動させると【硬化魔法】、【固定化魔法】、【伸縮魔法】、【巨大化魔法】とかなり脳筋なスキルが付与されているのが分かる・・・あと何故か【除霊効果】も付いているな。名前は【シルバー・エクソシスト】か、妖人族のグンナルが持つとなんか違和感がする。


「おいおい、兄ちゃん。この剣が何の素材でできているのか分かっているのか?」

「ワイバーンの牙をベースに、ランドドラゴンの爪で補強、ダイアウルフの皮で装飾、そのほか宝石類で派手にしたもの・・・どれもダンジョンのドロップアイテムで手に入るものばかりだな」

「お、おう。正解だ」


的確な回答をするグンナルに驚く冒険者。


「この武器にお前はただの銀剣で勝てると思っているのか?言っとくが武器だけじゃなくて俺の実力もかなりあるぞ・・・これでもBランク冒険者なんだからな」

「勝てるな・・・正直、武器の性能だけでもお前の剣よりはるかに凌いでいるのは明白、それに実力を加算したなら勝敗は火を見るよりも明らか」

「ぬかせ!」


冒険者が大剣を振りかざすとグンナルは防ぐ構えを取り魔力を流し込む。まるで時が止まったかのようにグンナルがピクリと動かず相手の大剣を防ぐと大剣の方にひびが入り砕け始める。


「ば、バカな!ワイバーンの素材だぞ!たかが銀剣に負けるはずが!」

「坊主!この魔剣なかなかだぞ、気に入った」

「「「魔剣だと?!」」」


グンナルがワイトを見て褒めると、ゲルドたちが目を丸くして驚いた。


「さすがワイトの剣だな」

「ワイト・・・まさか、あの『鍛冶神の申し子・ホワイトリー』か?あの伝説の鍛冶師がこんな子供だなんて!」


ワイトすごい二つ名を持っているな。でも本人は気に入っていないみたいだ、ものすごく恥ずかしそうな顔をしている。


「コウキ様、この剣俺が買ってもいいですか?すごく馴染むんです」


グンナルもワイトの剣が気に入ったのか購入する気まんまんだ。


「っく!反則だ!ホワイトリー製の武器なんて反則だ!」


何が反則だよ・・・知らなかったお前らが悪いし、そもそも先に勝負を仕掛けてきたのはそっちだろ。


「っく、もうよい。商談は取り下げだ・・・だが覚悟しておくのだな。私を敵に回してただで済むと思うなよ!」


そう言い残して、ゲルドたちは店を去っていく


「なんか面倒なことに巻き込まれたな」


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