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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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84話 商品を売ったらプチ贅沢ブームが広まりました

「ワォ」


テスラに壁をぶち抜いてもらい、さらに補強作業や装飾もしてもらったことで店は見違えるように立派な外見になった、広さで言えばB以上A以下。これなら用意していた品も全部持ち込めそうだ。


「ありがとう、テスラ。おかげで良い店になったよ」

「これくらいどうってことありません。もし他にも要望がありましたら呼んでください。地下を作れや5階建てにしろと言われても今の私ならできますから」

「お、おう。頼もしいな」


なんというか。ここでの修行でテスラの姉御感がさらに上がっていないか?


「それじゃあ、これから仕事に向かうので失礼します」


テスラの作業も終わり今度は別荘に戻ったオウカとメーガンたちが入れ替わりでやってきた。手元にはジョージが俺たちように作ってくれたおにぎりやスープだ。


「それじゃあ、仕事に取り掛かりますか」

『おお~!』


その後、大量に並べられるオリジン産の野菜などを並べる。基本的に食材を中心の店だが他に衣服や鉱石なんかも並べていく。時間もかなり経過していき、他の商人たちもちらほらやってくるのが見えた。そして全員が同じ反応を見せる。


「皆さん、驚いているみたいですね」

「昨日まで空き家だった店が突然大型店に変貌したからな・・・一夜城ならぬ、一夜店だな」


まあ、素材とかは初めからあったわけだから正確には一夜城の足元にも及ばないが・・・


通りかかる商人たちは興味深そうに俺たちの品を見るや否やかなりこわばった表情になって通り過ぎていく。


「ところで値段はどうしましょうか?我々の観点では正直ちゃんとした値付けはできないかと思います」


セレナたちの反応を思い出していたレヴィは少し不安そうな顔をしていた。


「あ、その辺は大丈夫。今回出す品は事前に才から値段の設定を聞いたからこの金額で出す予定だ」


そう言って、値段のリストを皆に見せた。その金額はリズアで流通している金額の5倍以上。


「あの・・・本当にその金額で買えるのですか?高すぎませんか?」

「いや、才とセレナの鑑定の結果でこの金額だから大丈夫。もし売れなかったらその時は別荘の食糧庫行きだからその辺は問題ない」


売れたら俺らハッピー、売れなかったらジョージたちがハッピー。

うんこれなら問題ない。


そういいきかせて、市場の開場時間を知らせるベルが聞こえたのだが・・・・


「あの・・・コウキ様、私の予想を言ってもいいですか?」

「言わなくてもいい、その予想は絶対当たると断言できる」


レヴィが少し引きつった様子で俺に話しかけ、何が言いたいのかすぐに分かった俺は彼女の口を塞ぐ。


まさに人海・・・人の大群が買い物籠を持ちながら走り出してくるのが見えた。ここはまさに戦場だ・・・朝の母親たちが今日の食材を求め買いあさりに来たのだ。


あまりの光景に圧倒された俺たち。オバチャンたちが一斉にそれぞれ行きたい店を回り欲しい品を買っていく。


まじかよ、トレスアールってこんな場所だったのか?!


活気のある場所だとは分かっていたがこれは異常だろ!


「あら!何この食材高すぎじゃないの!もっと安くしなさいよ!オリジン産・・・聞いたことも無いわね」


さっそく、俺たちの店にやってきた一人のおばさんがいちゃもんつけてきた。


「すみませんが、これが定価なので値下げはできません」

「はぁ?!あんた新人でしょ・・・いるのよね、値段のつけ方の分からない商人って」


飽きれた様子のおばさん・・・その態度に怒りを必死にこらえるグンナルたち。でも確かに他の店の品と比べると俺たちの商品の方がやや高いのがわかる。


「でしたら、試食してみてください。自分たちはこの金額に見合う品質と味だと思っていますから」


そう言って、リンゴを取り出して一口サイズに切ってあげる。おばさんは疑いながらもリンゴを一口食べると、まるでどこかの戦闘民族みたいに髪の毛が逆立ち始める。


「うまあい!何これ!本当にリンゴ?!こんなリンゴ食べたことないんだけど!ジューシーな果肉に香り立つ風味・・・これがリンゴなら私が食べてきたリンゴは何?!」


どこかの食レポのように感想を述べていると、ようやくトリップから戻ってきて積まれているリンゴを見た。


「そこのリンゴを3つ、あとそこに並べられている野菜もいくつかもらうわ」

「ま、まいど」


さっきまでの態度とは一変。おばさんは笑顔で商品を買い物籠に入れて金額を支払っていく。そして、おばさんのリアクションを見た他の通行人たちも次々と興味深そうに品を購入していった。


流れはかなりいいみたいで、レヴィたちもさっそく仕事に取り掛かってもらった。淡々と完結に商品を説明するメーガン、笑顔で接客するレヴィ、客足のデータと商品の減り具合を計算し品を並べていくカーチェ。さすがに店を営んでいるだけはあり素人の動きではないな。


「あら・・・随分と賑やかね」


やってきたのは、町長のオバチャンだった。


「いらっしゃい。約束通り店を開きましたよ」

「本当ね・・・随分といい店じゃないの」


オバチャンが興味深そうに店の奥まで入っていく。他のお客さんたちは町長がやってきたせいもあってか少し遠慮している様子だ。


「相変わらずいい食材ね・・・久々にオバチャンが料理しようかしら」


そんな風に言いながら、オバチャンは次々と食材を買い物籠に入れていく。


「それじゃあ、お願いね。後で旦那にも宣伝しておくわね」

「ありがとうございます」


今回一番呼びたかった人が来たことで俺は再び気合を入れる。まだ市場は開いたばかり、どんどん売るぞ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「コウキ様、店の方はどうですか?」


やってきたのはジョージ、ワイト、プラムの別荘組だった。テスラは仕事が忙しく来れなかったみたいだ。


「まあ、予想よりも繁盛しているかな。値段も値段だし少し躊躇する人が多いみたい」

「そうですか。では宣伝を兼ねて自分がゴリランチ用に仕入れてよろしいでしょうか?」

「ああ、別に構わないが。お前だったらリズアから直接仕入れることもできるぞ?」

「いえいえ、ここで仕入れるから意味があるのです」


ジョージがそういうと、木箱に敷き詰められていた野菜を持ち上げてまとめ買いしていった。


「おいおい、お前のお金じゃ意味ないだろ?」

「ご安心を。後で店に請求しておきますから」


そう言って、ジョージは軽々と食材の山を運んで出ていく。


「あの、プラムと相談したのですが自分たちの作品ここに置いてもらえないでしょうか?」


ワイトがふとそんな提案をしてきた。確かに二人ともCランクだから店と契約できるレベルにはいる。実際プラムの服はこの市場で流れているし、ワイトはあの伝説の鍛冶師の弟子として名が通っている。


「それは構わないが、いいのか?プラムは他の店と契約しているはずだが」

「大丈夫です、そちらも並行してやりますから。お願いします!」


必死に頼むプラムとワイト


「こちらも断る理由はないからね。いいよ、そちらの都合のいい時に作品を持ってきて」


二人は嬉しそうに頭を下げて別荘に戻っていく。いくつか自分の作品を出したいそうだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

午後


お昼も過ぎてそろそろ夕飯の買い出しにやってくる時間。まるでデジャヴと言いたくなるような地響き。朝のようなラッシュではないがそれと似た緊迫した空気。


「来たか」


本日二回目の人海津波。通行の邪魔にならないように商品とかを店の内側に移動させておく。最初のおばさんパワーには圧倒されたが今度はそうはいかないぞ!


そう気合を入れて店の前に立つ・・・・が、すぐにおばさんラッシュに吹き飛ばされる。店を通り過ぎるだろうと思っていた人海はまさか俺たちの店へ直撃。


「ちょっと!その野菜はあたしが持っていたやつよ!」

「うるさい、早い者勝ちよ!」

「店員さん!これまだ在庫無いかしら!」


朝の比じゃない・・・メーガンたちも何をどうすればいいのか混乱している状態だ。


「っちょ、落ち着いてください!」

「お会計は、こちらでも承ります」


まるでバーゲンセールの戦場、値段が高いのにも関わらず人間マシンガンのように店へ直撃していく。必死に頭をフル回転、グンナルたちにも店を手伝わせてなんとか客を回すことに成功。たった数時間で今日仕入れてきた食材が圧倒言う間に売り切れてしまったのだ。


「あらあら、ものすごい売れ行きだったわね」


やってきたのはすでに商品を購入していたオバチャンの姿・・・どうやら人混みに紛れて購入していたみたいだ。


「これは予想以上ですよ・・・何でこんなに売れたのでしょう?」

「そりゃ、今日のゴリランチの味が格別だったからね」

「え?」


オバチャンの話によるとゴリランチで提供した料理の味が格段に上がっていたそうだ。その評判を聞きつけ仕入れ先がここだと知った夫人たちは自分たちも作ろうと思い晩御飯用として買いに来たそうだ。ちょっとしたちょっとした贅沢がブームになり始めているそうだ。


ゴリランチパワーすげー


「それと、ウチの旦那から伝言『ぜひ、ウチに仕入れさせてほしい』だそうよ。ジョージちゃんのおすすめなだけはあるわね。多分今後はギルドからも仕入れの依頼が来るかもね」


どうやらオリジンの商品は予想以上に人々に衝撃を与えるみたいだ。


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