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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第七章 ダンジョン交易編
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83話 Cランク商人なので雑貨店を開きました

才たちがオリジンを去ってから数日後、あの宴のような楽しい時間が嘘だったかのように住民たちの日常はすぐに戻る。


だが、才たちがやってきて変わったことがいくつかある。


まず、ダンジョンの街に『リズア・ヴァプ』・・・省略して『リズア』という名が付いたこと、そして国の名前が『オリジン』となった。国といっても、領土はダンジョンの中だけで周辺のノフソの森とかはオリジンのものにはならないらしい。


次に、テオとの交易を結んだこと。これはオリジンの存在を世界に広める第一歩となるだろう。ついでに魔国ゼノとも交易を結ぶ予約も入った。両国もいずれ正式に俺たちを招き入れて調印など行う予定だ。


そのおかげもあってか、現在リズアの殆どの部門が忙しい状態になっている。特に生産部門と技術開発部門は人員補充の要請がきている。


そして、英雄才と深海の覇者・カーツとの引き分け。あの戦いでフロアボスも負けることがあるという事実を突きつけられた。そのせいもあってか、フロアボスたちは『打倒才』とか言い出し修行をしている。フロアボスの部屋で暴れるのも問題があるので、特別に新しいフロア『地下46階層』を作った。一応、フロアボス専用ということでフロアボスたちが暴れても大丈夫なくらい頑丈なフィールドにしてある。


また、冒険者側もフロアボスは倒せるという情報を得て入場者の数も爆発的に伸びた。慎重だった冒険者たちもガンガン上を目指そうと進む傾向が見える。まあ、当然実力のない冒険者たちはタマモの『神指揮』によって駆逐されていく。


オリジンは今、まさに大波に乗りかかった状態なのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『光輝様、今よろしいでしょうか?』

「ああ、大丈夫だよ」


連絡を入れてきたのは生産部門の副部長のアルラからだった。


『トレスアールに出荷する品が揃いましたのでその報告を・・・すぐに出せる準備が整っています』

「わかった・・・ありがとう」


テオとの交易の話は来ているがその前に先客の約束を果たすため、俺は急いでトレスアールへの転送陣が設置されている場所へ移動した。時間は朝の4時・・・外の明るさと同じように調整されている地下45階層も天井はまだ薄暗い。


転送陣の前には大量の食糧が山積みされた荷車。これが一日分の出荷かと思うと少し多すぎじゃないかと思ってしまう。そして引っ張るのは巨大な狼・・・オウカだった。馬車ならぬ狼車・・・いいのかこれ?オウカの隣にはいつも通り護衛メンバーのグンナルとランカの待機している。


そして、今回商業の助っ人として呼んだ3名


「メーガン、レヴィ、カーチェも今日はよろしく頼むな・・・多分忙しくなると思うから気を引き締めてくれ」

「「「はい」」」


リズアで店を経営している3人には今回、トレスアールの市場で開く俺の店の手伝いをしてもらうことになった。まあ、今後テオとの交易が増えるだろうから外の商売経験をしてもらうのが一番の目的でもある。しばらくは彼女たちにトレスアールの店をお願いして、新人と入れ替わる予定だ。


テスラの寮も完成してきたそうだしそろそろ住民たちのトレスアール研修計画を動かす時期なのかもしれない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


転移陣で別荘へ移動すると出迎えてくれたのはジョージだった。さっきまで料理をしていたのか、ジョージからすごくおいしそうな匂いがする。ワイトとプラムはまだ寝ているそうだ。


「コウキ様、おはようございます。先ほどウィリアム殿から連絡が来まして市場の準備は整っているそうです。先にギルドへ来てほしいと言っていました」

「ありがとうジョージ。俺たちはこのままギルドへ向かうよ。メーガンたちは一度ここで待っていてくれ」


俺がそう指示を出すと。オウカは荷車を外しいつものように普通の狼サイズへ小さくなり、俺の護衛としてついてきた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さすがに早朝ということもあり、昼は活気ある場所も虫の鳴き声すら聞こえてこない。


ギルドに到着するとボディビルダー顔負けの老人、ウィリアムが待っていてくれた。


「おお、コウキ様。お待ちしていました」

「様付けはいいですよ。いつも通りに接してください」


ウィリアムは才を通して俺の正体を知った。まあ、知ってもらった方が今後のためになると才がそう判断した結果なのだが。


「しかし、エイミィ様に選ばれた存在で、ダンジョンの国『オリジン』の主ですぞ」

「だからと言っていきなり様付けじゃこっちが困りますよ・・・今まで通りに接してください」

「むぅ・・・社長といい、なぜ異世界人はそんなに謙虚なのだろうか?」


別に異世界人だからというわけじゃないのだか・・・


「言っておくけど、この事は他の人には内密に」

「分かっております。このことを知っているのは儂と町長のみです」


あ、オバチャンも知っているのか。まあ、あの人なら大丈夫かな。


「それで契約のことなんだけど」

「ええ、今取り出します」


ウィリアムがモニターを操作して取り出したのは俺が初めてウィリアムさんと商談を行った時の契約書だ。契約書に触れると俺のモニターが出現し『破棄しますか?』という文字が出現する。俺が『OK』ボタンを押すと契約書は光の粒子となって消えていく。


「これで晴れて君は一人の商人だ。それじゃコウキ君、市場での商い許可証を発行するからステータス画面を出してくれ」


そう言って歓迎してくれるウィリアムが取り出したのは銀色のカード。俺がステータス画面を開くと、ウィリアムがモニターにカードをかざす。すると俺のステータス画面に『トレスアール市場、商い許可証』と書かれた欄が追加された。


「さて、それじゃあさっそく君たちの店へ招待しようかな」


・・・・・・・・・・・・・・・・

市場


市場に入ると何人かがすでに立ち入っており、店の準備をしていた。


「こんな時間からもう店の準備をしているのですか?」

「うむ、Aランクの店は客の数が多いからな。事前準備が大切なのだ」


市場の中でも一等地と呼ばれているAランクエリア。かなり豪華な店でなんというか独特な形をした店ばかりだ。広さもかなりあり、店というより大きめのスーパーマーケットに近い。ガラスのショーウィンドウに並べられている服や鎧とかはだれが作ったのかとか大きく書かれている。


「次にBランクの店はここだな」


Bランクの店はどちらかというとまさに専門店と言いたくなるくらいの店でかなり対象を絞ったような店だった。広さで言えばやや大きめのコンビニに近いな。


「っで、ここが君たちの店があるCランクエリア」


そしてCランクの店は小さめの店という印象だった。多分、今日用意してきた品の半分も並べられないくらいの広さだ。メーガンたちが運営している店の方がはるかに広い・・・ここで商売をするのか・・・


まあ、Cランクなんだし当然といえば当然か。むしろ本来ならF・・つまり路上販売から始まるはずだったのに店を用意してくれたんだし良いスタートと考えるべきか。


そんなことを考えているとウィリアムさんがワザとらしい口調で俺たちに言った。


「あ、そうだ。実は君たちの両隣の店なのだが、誰もいないのだが。どうする?追加料金を払えばそこの使用許可も出すが?」


隣の店?


そう言われてよく見ると店はしっかり隣接している。まるで元々大きな店に壁を作って三つに分けたような感じだ。


「そういうことか・・・ウィリアムさん、追加料金は払います」

「毎度」


俺はすぐに隣の店も契約する。そしてちょうど起きたテスラに連絡を入れて急遽店のリフォームを依頼した。


『壁の撤廃ですか?それくらいお安い御用です。内装などもメンテナンスをしますのですぐに向かいます』


そう言ってくれて、テスラは工具をもってすぐにやってくる。俺が軽く説明するとテスラは余裕の笑みで作業に取り掛かる。グンナルとランカも力仕事の人身として手伝ってもらった。


「そういえば、君たちの店の名前なのだがもう決まっているのか?」

「あ、はい『雑貨店リズア』です」


これは店を立ち上げる時からすでに決めていたことだった。この店はオリジンの顔でもある、ならそれにふさわしい名前と言ったらエイミィが付けたこの名前しかないと思ったのだ。


「ふむ、リズアか・・・了解した。では登録などは儂の方で済ませておく。君たちの店が完成するのが楽しみだ」


そう言って、ウィリアムは職場の方へ戻っていった


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