80話 英雄は強いのでフロアボスも本気になりました
おまたせしました!就活が忙しく投降が遅れました!
無事就職先が決まり、『ダンジョン作ったら無理ゲーになりました』を再開します。
今後は投降ペースが遅れるかと思いますがご了承お願いします。
戦闘開始してから10分経過。約束通り、フロアボスのアカウントに切り替えた瞬間、カーツの身体へ大きな激痛が走る。
「っぐ・・・思ったよりきつい・・・早めにけりをつける必要があるな」
フロアボスとしてのステータスになったカーツ。漫画などだと力を解放した瞬間、傷も治るという描写があるが現実はそうでもない。未だにカーツの腹には痛々しい火傷が残っているし体力の上限が急激に上がったせいで疲れなどが急に感じやすくなっているはず。
カーツはモニターを出現させ操作する。目の前に現れたのは1丁の巨大ライフル。正直ライフルというよりも小さめのロケットランチャーみたいであるが、あれがカーツ専用の武器。
『激流之弾丸』
カーツが水の弾丸を空へ打ち上げると上空に雨雲が出現しまるでスコールのような大雨が降り注ぐ。
観客席には結界を貼り濡れずに済んでいるが、直撃をくらっている才はきつそうだ。あれは雨というよりも滝だろ・・・一体何トンもの水が降り注いでいるんだ?
「おら、余所見している暇はないぞ!」
『水を得た魚』そう表現したいくらいカーツの勢いは上がっていた。雨の中視界が悪いはずなのにカーツの正確無比な弾丸で才の間接を次々と狙っていく。
「ぐ・・・」
スコールによって動きが鈍くなった才に次々と迫る水の弾丸・・・久々に味わう戦いでの痛み。
(ああ、ヒュウもダンジョンでこんな敵と戦っていたのか・・・確かにこれはキツイな)
相手は違えど、それに近い実力を持った相手。これがフロアボスの実力だと身を持って理解をした。
「・・・だが、ここで諦めるわけ無いだろ!」
才の気合の入った声と共に雨に打たれながら才は大剣を突き刺し、新たに弓を取り出す。
「・・・武器を入れ替えた?」
才が取り出した弓は白銀に輝く美しい色をしていた。無駄な装飾は無いがどこか惹きつける色。スコールからでもその美しさは十分に理解できる。この世界に数個しかない『オリハルコン製の弓』を才は構えていた。
「・・・いくぜ!」
才が魔力を込めて第一矢をカーツへ目掛けて放つ。スコールの水圧すらものとしない矢は地面をえぐりながら、カーツへ目掛ける。
「っち!」
流石に今の体力であの攻撃を受けるのはマズイと思い、ライフルの水圧を利用して回避をする。しかし、【魔力感知】を発動した瞬間、カーツの後ろに才がすでに第二矢を放つ準備を整えていた。
「いつの間に!」
至近距離からの攻撃・・・ギリギリにかわすカーツ。
「今のは危な・・・ち!」
安堵する暇を与えないかのように才の猛攻が続く。矢を放っては才は消え、すぐにカーツの背後で弓を構えて現れる・・・・何が起きているんだ?
『・・・まさか!』
タマモが何か気付いたようで、スクリーンの一つに才が突き刺した武器がズームアップされる。さすがユニーク武器というべきか、美しいフォルムだ。
『あ!!』
ズームされた武器を見て叫んだのはゾアとマリーたち技術開発部門のメンバーたち。
「ゾア何か分かったのか?」
「はい!あの武器『持ち主登録』の刻印が逆に施されておるんです!」
納得した様子の技術開発部門のメンバー達
「・・・悪いが、もう少し分かりやすく説明してくれ」
「あ・・はい。刻印魔法の中に『持ち主登録』というのがありまして、発動させると手元へ転送されるもんがあるんやけど、あの刻印はその逆。発動させると、持ち主を武器の場所へ転送させる効果が施されているんや」
なるほど、どこかの忍者漫画にも似たようなのがあったな。つまり才は、ユニーク武器がある場所に自在に瞬間移動することが可能ってわけか。最初からそれで戦えばいいのにと思ったが、いきなり奥の手を見せる馬鹿はいないよな。
「・・・本来、落し物防止の刻印魔法なんやけど、まさかあれを逆利用するとは」
関心した様子でゾアが武器に刻まれている刻印を見る。俺には何なのかわからないが、ゾアたちには分かるのだろう。なんか一生懸命メモを取ったりしている。というか、過ごそうな魔法なのに『落し物防止』って・・・
刻印魔法ってことはおそらくケイトが施したんだろうな。あの人も英雄の一人だ、こっちの魔法具とかに興味津々だったから実力はよく分からなかったが、やはり侮れない。
『・・・先ほど、技術開発部門のゾア様から確認が取れました。やはり、サイが突き刺した武器には『刻印魔法』が施されていたようで、それが瞬間移動のタネだったそうです』
タマモのアナウンスを聞き、フロアボス達も感心した様子で才を見る。そして、リンドとカルラ・・・頼むから乱入しようとしないでくれよ!
・・・・・・・・・・・・・・・・
『コウキ様、今よろしいでしょうか?』
「ミーシャ?どうかしたのか?」
観客席で見ていた俺に連絡を入れてきたのはミーシャだった。
『はい、さきほどメリアスさんに頼まれて、カーツの感情を視たのですが・・・感情が跳ね上がっているのが分かりました』
・・・それってつまり、カーツが暴走しかけているってことか?
『メリアスさんは暴走を止められる自信があるみたいですが、こちらへの被害が出るかと思います』
「なるほど、報告ありがとう。結界は俺とエドで何とかする。ミーシャたちは何かあった時、すぐに動ける準備をしておいてくれ」
『御意』
ミーシャの連絡が終わり、俺はエドに連絡を入れて、コロシアム全体に結界を張るように指示、俺も半神半人のステータスに切り替えて観客席の結界を強める。
「・・・頼むから面倒なこと起こさないでくれよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ったく、マジで勘弁してくれよ」
次々と水弾によってへし折られていく才のユニーク武器。カーツは転移防止のためにやっていることなんだから当然なのだが、見ているこっちからしたら 凄く勿体無い気持ちだ。
「これで・・もう、逃げられんぞ」
最後の武器を破壊したのを確認したカーツは才へ向けて銃を構える。浮かび上がっている鱗は緑から赤へ変色しており、カーツが興奮状態に入っている証拠でもある。
「・・・ああ、そのようだが少し遅かったようだな・・・正直お前がその状態に入る前に完了してよかったよ」
「あぁ?」
才が少し安心したような表情を浮かべると才は俺の方を見た。
「光輝・・・結界は強めてくれたみたいだな・・・それくらい頑丈だったら大丈夫だろう」
何を言っているのかさっぱりだが、才がそういうと弓を構えて魔力を込める、あの程度の魔力だったら別に結界を強める必要はないが・・・と思った瞬間ゾアが少し引きつった顔で立ち上がる。
「ヤバイで、ヤバイで!あれはアカン!コウキさん!急いで結界を最大級で頼みます!エドワードはん!【防音】を!」
「分かった!」
俺はゾアに言われるままに結界を最大級まで高め、エドが俺の結界に【防音】を付与させる。
一体何が起きるんだ?
不安な気持ちのまま、才が弓矢を放った瞬間、フィールドを抉られていた箇所が急に光りだす。雨の視界のせいでよく分からなかったが、どうやら才は弓矢で刻印魔法を作っていたみたいだ。
「カーツ、あんたは強い!正直今の俺じゃ勝てない・・・だから今回は引き分けだ」
「は?何を言っているんだ?!」
カーツはそのまま弾丸を才に打ち込んでいく・・・しかし才は避けようともせず正面から受け止めた。
「・・・てめぇ、何故避けない」
「避ける必要がないからな」
血を流しながら膝をつく才・・・しかし、その顔は勝負を諦めたという感じではない。
フィールドが大きく揺れ始め刻印の光が増す。
「・・・これは」
「今回は道連れってことだ」
数秒後、俺達の目の前は真っ赤な光によって視界を奪われる。【防音】によって何が起きたのかはよくわからない・・・ただ、俺の頭の中に響く、機械音みたいな声によって勝敗が告げられた。
深海の覇者・カーツと地天才は死亡しました。




