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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第六章 ダンジョン観光編
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79話 フロアボスは強いので英雄も本気を出しました

コロシアムのフィールドには複数の武器が突き刺されてある。おそらく才の空間倉庫から取り出した武器なのだろう。あの戦いの中でそんなものを出すことが出来るとかさすが数々の戦いを生き抜いた英雄というべきだろう。


『ヒュウさん、あの武器はいったい』

『おそらく、水蒸気に覆われている間に空間倉庫から取り出した武器だろう。あいつの倉庫にはユニーク武器が大量に保管されているからな。あれでもあいつのコレクションのほんの一部だぞ』


解説のヒュウが説明すると、確かによくみると、殆どの武器がユニーク武器だ。あんなに大量のユニーク武器を持っているとか、お前はどこの英雄王だよ。


『あいつの武器の中には遠隔操作が可能なものがいくつかある。今の攻撃は才が操作したものだろう』

『なるほど、今度はサイが戦いやすいフィールドに切り替わったわけですね・・・しかし、遠隔操作とは、少々英雄とは程遠い戦い方ではないのでしょうか?』


タマモの指摘に会場は爆笑しているが、その気持ちはわかる。なんというか正々堂々って感じじゃないな。


『まあ、あいつは別に正々堂々と戦うタイプじゃないからな』

『それはどういう・・・』


タマモが質問をしているうちに、才が次の行動に移す。複数の杖が一斉に光りだし、雷属性の魔法がカーツへ目掛け度のて襲い掛かる。まるで複数の魔術師が呪文を唱えていたかのように。


「っち!だがその程魔法俺には効かないぞ!」


怪魚人の皮膚は特殊な粘膜で覆われており、魔法耐性の効果を持っている。いくらサブアカウントで能力が低下していることと弱点である雷属性の魔法とはいえあの程度の魔法でダメージはそこまで入らないだろう。複数の雷撃をくらったカーツは予想通り平然とした顔をしているが、少し様子がおかしい、カーツの身体は電気が帯びており、少し苦しそうだ。


「・・・これは」


カーツのステータスを見ると状態異常の欄に【麻痺】と書かれている。


サブアカウントに切り替えているカーツの状態異常の耐性はかなり低く設定してある。おそらく、それを知っている才は狙って放ったのだろう。


「っち、【リフレッシュ・レイン】!」


カーツが手をかざすと水球が出現しすぐに破裂する。水を浴びたカーツの体はバチバチと痛々しい音を立てるが、これで状態異常は回復したはず。少し痛そうな顔をしたカーツのステータスを確認すると【麻痺】状態は解除されているが未だに彼の身体には電気が帯びているのが見える。


『ヒュウさん、先ほどの魔法・・・あれは【付与魔法エンチャント】じゃないのでしょうか?』

『正解・・・才はまずカーツに【雷属性】の付与魔法を与えたんだ』

『しかし、それではダメージは通らなくなりますよ』

『ああ、だがあえてそうしたのは。カーツの身体に電気を溜めやすくさせるため・・・つまり【帯電】を引き起こすためだ。【リフレッシュ・レイン】みたいな状態異常回復は身体の痺れや痛みを治す効果はあるが、蓄積された電気までは消せないんだ』


ヒュウの説明を聞いて、カーツの帯びた電気を理解する。つまり、身体の痺れは治ったが未だにカーツの身体には大量の電気が溜め込まれている。それは状態異常という訳で無く、カーツに雷属性として蓄えた電気となっているからだ。


『しかも、今カーツは回復させるために水をぶっ掛けた・・・それも才の計算の内だ』


ヒュウがそういうと、再び才が攻撃にはいる。接近する才にカーツがアクアランスを出して迎え撃つが、次の瞬間才が『解除』と言い放ち指パッチンした瞬間、カーツの体勢が崩れる。本人も何が起きたのか全く理解していない様子だ。


「・・・まさか、EMS原理」


EMS・・・Electrical Muscle Stimulationの略で、皮膚の表面から電流を直接神経に流す事で筋肉を収縮させる原理のこと。昔、ダイエット器具として一時期ブームを引き起こした記憶がある。


おそらく、その原理と同じ。【雷属性】が付与されていたカーツは電気を溜め込んでも耐性が平気であった。しかしそれが解除された瞬間、蓄積されていた電気が不意打ちで、一気に全身を巡りその電気が筋肉に反応して、本人の意思とは別に筋肉が働いてしまったのだ。いくらカーツでも不意打ちで大量の電気を流し込まれたら何かしらの反応を出すはず。科学的な原理を知っている俺なら分かったが、それを知らない住民達は何が起きたのか理解していない様子でカーツを見ていた。


「・・・やば!」


大きく飛び跳ねたカーツはまさに釣り上げられた魚のように無防備。当然その隙を逃す才ではない。蒼い炎を帯びた大剣をハンマー投げのように振り、カーツに一撃を食らわす。


まるでダイナマイトをぶつけたかのような爆発が起き、再びフィールドに水蒸気が広がる。


『カーツ様が急に飛び跳ねて・・・今度は爆発・・・これは・・・』


今度は電気分解か。リフレッシュ・レインによって水浸しになったカーツ・・・だがその水は蓄積された電気によって分解・・・水(H2O)はH(水素)とO(酸素)へ分解・・・そして分解された酸素へ蒼い炎をぶつけたことで大爆発・・・まさか、こんな所で科学の授業を受けることになるとは・・・・


タマモも【分析スキル】によって理論は見てすぐに理解できたが、それをどう伝えるかに悩んだ様子だ。だよな、短時間でそれを住民に伝えるのは正直難しい。


水蒸気は晴れるとそこにはボロボロの状態になっているカーツの姿・・・そして息が少し荒いが未だまともなダメージが入っていない才・・・これは認めるしかない。サブアカウントでのカーツでは才には勝てない。


「さすが、アルヴラーヴァの英雄というべきだな」

『ハァハァ・・・コウキ様、申し訳ございません。無様な姿をお見せして』

「構わない・・・それだけ才が強いんだ。認めよう、今のお前より才のほうが強いと」

『・・・ええ。今の自分では全力でぶつかっても勝てる見込みはありません』


そう、今のカーツなら・・・・


「・・・10分だ。フロアボスのアカウントの使用を許可する」

『・・・御意』



さて、才。ここからが本番だぞ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

才視点


カーツとの戦いは思ったよりもこちらが優勢で進められていた。疲労もそこまで無く、カーツに大ダメージを与えられたのが大きい。


【万能鑑定】で相手のスキルや能力を把握できるおかげで常に何手もの先を打つことが可能だ。【帯電】の作戦もカーツのステータスやスキルを見て行ったもの。やはり能力が低下しているおかげもあって、接近戦でもそこまで苦戦することはなかった。


だが、時間がやってきた。


約束の10分が経過し、カーツはアカウントを変える。するとさっきまで見えていた情報が一気に書き換えられていく。


【万能鑑定】は相手の情報を全て見透かすことが出来る対人において最強クラスの能力。だが、そんな能力でもサブアカウントと本来のアカウント、両方を見ることはできなかった。おそらく【万能鑑定】をもってしてもサブアカウントとメインアカウントを見分けることが出来ないのだろう。


次々とあふれ出る、カーツの情報・・・激しい頭痛に耐えながらカーツの情報を見ていく。さっきまでのステータスとは雲泥の差・・・自分は今まで何と戦っていたんだ?とそう思わせるような情報だった。


「はは・・・マジかよ」


【万能鑑定】・・・その能力でフロアボスの真実を才は知ってしまった。

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