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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第六章 ダンジョン観光編
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78話 vs. 深海の覇者・カーツ

英雄歓迎会三日目


本日、歓迎会の中でもビックイベントがここ商店街エリアの隣に『一日』で建てられたコロシアムで22階層のフロアボス・カーツとアルヴラーヴァの英雄・才との戦いが始まろうとしていた。


『皆様!お待たせしました。本日はなんと22階層のフロアボス・カーツとアルヴラーヴァの英雄・サイの決闘が繰り広げようとしています!実況は私!ダンジョン管理部のタマモ!そして解説は特別ゲストのヒュウさんです!』

『どうもよろしくお願いします』

『うぉおおおおお!』


コロシアムの上空に浮かび上がるスクリーンにはマイクを握ったタマモと何故か解説役を任されたヒュウが映し出される。そして、タマモのアナウンスと同時にコロシアムの席を埋め尽くさした住民達が歓声を上げる。


お前らちゃんと仕事しているんだろうな?


『それではまずは青コーナー!滅亡しかけたテオ王国に突如現れた救世主!数々の偉業を成し遂げアルヴラーヴァの英雄へと登りつめた男!サイ・チアマ!』


まるでプロレスのアナウンスみたいなMCの紹介でステージに上がる才。左手にはでっかい大剣が握られている。なんというか、どこかの神狩りをする人達が持っていそうな武器だな。あれがトーマスさんが作った武器なのか?


『続きまして赤コーナー。ダンジョンの22階層の守護者にして生活部門・海洋調査隊の総責任者!深海の覇者・カーツ!』


そして続いてやってきたカーツ。まるで血に飢えた鮫のように才を睨みつける。


『さあ、ステージから戦いの熱気が伝わってきそうです。一体どんな戦いが繰り広げられるのでしょうか?』

『主に熱気を放っているのはカーツだけのような気がするが、ツッコんだら駄目なんだろうな、これ』


「カーツ分かっていると思うが10分までサブアカウントは変えるなよ?」

『分かっています・・・』


10分、それは才の要望でフロアボスとしてのカーツと戦う条件。


10分サブアカウントを持ったカーツとの戦いに生き延びたらフロアボスのアカウントに変える。一応せっかく用意したサブアカウントを無駄にはしたくないし、カーツからデータは取っておきたいのもある。


才もそれを承諾してくれたが『サブアカウントで敗北しても文句言うなよ』と挑発を受けて、カーツの怒りはかなり爆発しそうだった。


海の貴公子・カーツ


普段は爽やか系のイケメン男性だが興奮状態になると手に負えない性格。


そんな内容がテキストフレーバーにあったはず。今はまだ理性が残っているが、このまま興奮状態になったらまずいな。いざというときに抑え役としてメリアスを審判約として任せる。


「では両者よろしいでしょうか?・・・・・始め!」


メリアスの合図とともに先に動き出したのはカーツ。


「ほれ!挨拶代わりだ!」


【水属性魔法:メテオ・レイン】


『カーツ様、さっそく得意の水魔法で先制攻撃!大量の水玉は一斉に空へ打ち上げられ、重力に従って水玉は雨のように降り注ぐ!』

『あれは、中級魔法の【アクア・ボム】の上位版だな。普通、上級魔術師でも水玉10個が限界なのにあの数は凄い・・・まさに【メテオ・レイン】』


降り注ぐ水玉は地面に直撃した瞬間大きな爆発音と共に水柱を作る。


「ぶふぁ!水浸しじゃねえか」


『チアマ・サイ。直撃はしなかったもの、服が水を吸って動きづらそうですね』

『これはまずいな。才の得意魔法は【火属性】だから相性で言えば最悪。あの状態じゃ、まともな威力は出せないぞ』


「まだまだ!いくぜ!」


【水属性魔法:アクアランス】


カーツの手の平から水が溢れ出し、みるみる槍のような形となる。


『今度は接近戦に入りました!カーツ様の猛攻がぶつかります!』


二本の槍を生み出すと、才に接近し猛攻を繰り広げるが、さすが英雄というべきかカーツの猛攻を大剣で全て防ぐ。


「少しややるじゃないか」

「それがお前の本気か?」

「んな分けないだろ!」


カーツは飛び上がり真下にいる才へ目掛けて槍を投げつける。


「そんな攻撃があたるわけ・・・っち!」


才は最小限の動きで避けようとした瞬間、何かに気付いたのか大袈裟に横へ飛び跳ねると槍が突き刺さった場所から巨大な水の針が水溜りから出現し才へ襲い掛かる。間一髪で回避した才だがコートの一部を切り裂かれている。


『さすが、英雄です。カーツ様の一撃を見事にかわしました』

『始めの【メテオ・レイン】は攻撃ではなく、フィールドを水浸しにすることが目的だったみたいだな。アクアランスを水場に投げつけることで、そこから別の攻撃が反射するようになっているのか』


「良い反応だ。俺の部下でも初見でそれを見破る奴はいなかったぞ。それが【万能鑑定】ってやつか?」

「ああ」


よく見ると才の目は赤く光っており【ゴッドスキル:万能鑑定】を発動させていた。


「あんた、怒りで我を忘れるタイプだと思っていたがそうでもないみたいだな。冷静さを失っているかと思ったが精神状態は安定している。その表情と息の荒さは演技か?」

「あの程度の挑発で怒るのはリンドとカルラぐらいさ・・・もっとも、少しカチンと来たのは確かだけど」


何?すっかり騙されていたぞ・・・暴れないか心配したじゃないか!


「それで?俺の情報は視れたか、英雄様?」

「ああ、能力を制限されていながらその技量・・・正直甘く見ていた。本当末恐ろしい奴らばかりだなここの奴らは」


そう言いながら、才は会場に来ているフロアボス達を見る。


「・・・邪神を相手にするにはお前らレベルの実力がないといけないと十分に理解している。だから俺はフロアボスとしてのお前と早く勝負をしたい」


今度は才が接近し猛攻を繰り広げる。


『今度はサイが攻撃を仕掛けてきました。しかしこれはさっきと同じ展開、カーツ様が全ての攻撃を防ぎます』


蒼焔ブルー・フラム


才がそう唱えると大剣の先端から蒼い炎が帯び始め、カーツの槍から水蒸気が漏れ始める。


『おーっと!ここでサイが魔法を仕掛けてきました!あれは色付きの魔法ですね』

『正解。色付きの魔法は簡単に言えば、属性魔法の強化版。人によってその色が異なるため、『ユニークマジック』とも呼ばれているものだ』

『蒼い炎が剣に纏い、高熱を帯びた剣でカーツ様の槍を蒸発させようとする魂胆でしょうか?』

『一般の上級魔術師だったら今の攻撃で槍は簡単に気化しているだろうが、さすがフロアボスというべきだろうか。あの攻撃を受けても全然形状が変わっていない』


2人の解説を興味津々に聞く住民達。


「その程度の熱で俺の槍は折れねえぞ!」

「みたいだな・・・なら、こう仕掛けるまでだ」


才が剣を振り払うと、炎は水浸しのフィールドへ広がり激しい音を立てながら水蒸気を発した。


『な!水浸しだったフィールドに高熱の炎をぶつけたことで水蒸気が発生しました・・・これでは中の様子がよくみえません』

『才にはたしか【魔力感知】のスキルがあるからな、あのくらいの水蒸気くらい問題は無いだろう・・・まあ、あのカーツってフロアボスも当然【魔力感知】は持っているだろうから中では2人の猛攻が繰り広げられているはずだ』


『えー、中でどうなっているのか分からない方のために【魔力感知フィルター】での映像をご覧ください』


タマモがそう説明すると、上空に映るモニターが切り替わり、2人の影が戦っているのが見える。おそらくあれが【魔力感知】で見た映像なのだろう・・・肉眼で見るような鮮明さは無いが全く見えないよりはマシである。


というか、魔力感知のみであそこまで戦えるとかどうなっているんだ?少なくとも俺はあんな戦いはできないと思う。


「せっかくの目くらましも無駄になったな」

「お前に【魔力感知】があることは『視えていた』・・・今度は俺が戦いの舞台を用意させてもらう」

「・・・お前まさか!」


何かに気が付いたカーツは急いで距離を取る。


『暴風波』


まるでハリセンボンのように身体が膨らませたカーツの口から吹き出される風によって水蒸気はあっという間に晴れる・・・するとフィールドにはいくつもの武器が突き刺さっているのが見える。


剣、槍、弓、棍棒、杖


20以上もの武器が突き刺さるフィールド・・・まるで戦士の墓場みたいな感じだ。


「お前、戦っている最中にいつの間に武器を・・・」

「なぁに、空間魔法で用意させてもらっただけだ。余所見はしないほうがいいぞ」

「っく!」


才の人差し指をクイッと折り曲げた瞬間、カーツの後ろに突き刺さっていた杖からレーザービームのような光がカーツへ直撃する。


『見せてやるよ・・・地天才の戦い方を』


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