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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第六章 ダンジョン観光編
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77話 英雄が挑発したらフロアボスが釣れました

英雄歓迎二日目晩御飯はカレーパーティである。


香辛料とかはメリアスの生産部門の研究によって開発と栽培、野菜や肉も品質の高いものを選んで作ってもらった。もっとも品質の悪いものを彼女の野菜で採れることは無いだろうが。


「ダンジョンの国、『オリジン』の誕生、そして『リズア・ヴァップ』の住民に乾杯」

『乾杯!』


英雄の歓迎会のはずなのだが、ダンジョンの国名と街の名前が決まったことが広まり、もはや何の祝いなのか分からない状態になっていた。


「うみゃあああ!何コレ、凄く美味しいにゃ!」

「美味しい!なんなのこれは!」


だが祝いなら何でも良いという風にマヤとフィロは興奮した様子でカレーを絶賛しながら食べている。あれは誰でも食べられる甘口カレーだったな。他の者たちもカレーを興味津々に食べながら絶賛している。


「まさかこの世界でカレーが食えるとは思わなかった」

「だな、カレーに使えそうな香辛料を必死で探したが全然見つからなくて、半分諦めかけていたが・・・しかし、これをまた食える日が来るとは思わなかった」


若干、ヒュウが感動のあまり泣いているように見えたが見なかったことにしよう。


「すまないな、本当は才たちの歓迎会のはずなのにこんな祝いになって」

「気にするな。めでたいことなんだし、俺はこれで楽しいぞ」


才はそう言いながら大盛りのカレーに福神漬けをのせて食べる。


「しかし、驚いたな。てっきり才はすでにカレーを作っているかと思っていたが」

「作ろうとはしたが、栽培しているところが無かったんだ。この世界で香辛料っていったら胡椒や唐辛子の粉末ぐらいで、オリーブとかバジルとか栽培されていなかったんだ。未だにギルドの無い場所では塩で味付けしたような野菜スープとかがメインだからな」


へぇ・・・やっぱりトレスアールが特別だったんだな。やはり食文化とかはそこまで進んでいないみたいだ。


「そうか、じゃあ輸出リストにも香辛料は入れておくな」

「そうしてくれると助かる。調味料が普及していけば国の食文化が底上げされるからな」

「しかし、こんな美味いものが食えるとか。こりゃ別の目的で侵略されるかもしれないぞ?」


ヒュウはからかった風に言うがその心配は確かにある。


「まあそうならないように努力はするつもりだし。仮に襲ってきても返り討ちにするまでだ」

「はは、言うようになったな。裁判所で不安そうだった頃とは別人だ」

「あ、あれは・・・」


ヒュウにあの過去を掘り返されるとは思わず、言葉につまってしまう俺だがすぐそばにいたグラムに睨まれるとヒュウの笑いは一瞬で消え、お代わり貰いにカレーの行列に並び始めた。


「まあ、少なくともフロアボス達がいればこの国は大丈夫だろう。あいつらが本気を出したら大国ですら簡単に支配されそうだ」


才がそういうが、流石にそれは無理なんじゃないか?と一瞬思ったが、あいつらの本気って未だに俺も知らないからなんとも言えなかった。


「頼むから俺達に敵にはならないでくれよ」

「なるつもりはないさ・・・俺は才達と仲良くしたいし。世界の敵になるつもりはない」


俺がそう宣言すると才は安心したかのように最後の一口を食べてお代わりの列に並ぶ。


「それを聞いて安心した。これからもよろしくな」


・・・・・・・・・・・・・・・・


『光輝様、今よろしいでしょうか?少々お伝えしたことがありまして』

「アルラ・・・どうかしたか?」


才たちがお代わりの列に並んでいる間に突如アルラから連絡が入ったため、俺は人気の無い場所へ移り返事をした。


『はい、今日セレナ様たちをご案内した時に魔物化の研究所について少し触れてしまい、是非見せてもらいたいと言われたのです』


そういえば、セレナとヒスイが農場エリアに見学に行ったんだよな。


「まさか、案内したのか?」

『いえ、非情に危険な場所であると説明して、諦めていただきました。ただ『魔物化の研究は世間では禁忌の研究』と忠告されました。世界ではそうなっているとは全く知らなかった自分が恥ずかしい限りです』


まあ生物実験とかだし、そう見られてもおかしくないか。そうではないかなとは思っていたが俺も知らなかったんだしアルラを責めるつもりは無い。しかし俺達の研究が世間では禁忌扱いだったとか。こりゃ世間には知られたくない秘密が出来たな。


「今度から気をつければいいさ。俺も知らなかったんだしアルラの責任じゃない。それで、セレナたちは研究所のことについて何か言っていたか?今すぐ取り壊せとか?」

『いえ、『今後、他の人を呼ぶのであれば見せたくないものは隠しておきなさい』と、研究自体は止めさせるようなことは言っておりませんでした』


なるほど、つまり今回は見なかったことにしてくれるのか。こりゃ借りが出来たかな?


「わかった研究所だが近いうちに管理室みたいに別の場所に引越しをしようと思う、流石に禁忌の研究と言われたら人目につく場所はまずいからな。ミーシャとメリアスには俺から説明しておくよ」

『かしこまりました、ご対応ありがとうございます。念のため【認識阻害】の結界を張りましたので魔人の方々に知られることは無いかと思います。研究員たちにも口外しないように伝えておきました』

「分かった、ありがとう・・・色々と手間かけてすまないな」

『いえいえ、これくらい問題ありません』


そう言い残し、アルラとの連絡が切れる。


「元とはいえ、三大神を下働きさせる俺ってどうなんだ?」


・・・・・・・・・・・・・・・・


広場に戻るとカーツが俺を探していたみたいで、俺を見るなりすぐに駆け寄ってきた。


「コウキ様、俺の相手が英雄サイって本当ですか?」

「どこからそんな情報を・・・まあいい。ああ、本人が戦うと言ったからな。その予定だ」


それを聞くとカーツは無邪気な子供のようにガッツポーズを決める。


「よっしゃ!相手にとって不足なし!」

「カーツ、念のために言っておくが一人用のサブアカウントは忘れるなよ?」

「分かっていますよ・・ああ、でも楽しみだ。俺の最初の対戦相手が英雄とかこれは絶好の大波ですよ」


グラムもそうであるが、表ダンジョンのフロアボスって何故か全員戦闘マニアだよな・・・何か良いガス抜きを考える必要がありそうだ。カーツの後ろにいるリンドやカルラの視線が怖い。


「ところでいつ戦えるのですか?」

「そうだな、才の都合も考えて『明日で構わないぞ』・・才?」


横から失礼という風にやってきた才。その手には山盛りのカレー・・・お前どんだけ食うんだよ。


「俺の相手はこの人か?」

「おう、ダンジョン22階層のフロアボス、海の貴公子・カーツだ。会議室では挨拶はできなかったがよろしくな」

「ああ、よろしく頼む。ところで光輝、さっきカーツがいっていたサブアカウントってどういう意味だ?」

「ああ、元々フロアボスは上級冒険者12人で挑むステータスにしてあったんだ。だから一人で相手にする場合はステータスを下げておこうかと思って」

「ふーん・・・俺は元々のアカウントでも構わないぞ」

「いや、言っておくがカーツの実力はグラムと同じくらいだぞ?」

「それで構わない。俺は自分の実力を知る必要がある・・・少なくとも一人用のステータスで俺は負けるとは思わないし、本気で挑まれないと意味が無いからな」


カッチーン


なんだろう・・・そんな音がカーツの方から聞こえた気がする。


振り向くと、血に飢えた獰猛な怪魚人の姿がそこにあった。


「・・・絶対後悔させてやる」


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