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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第六章 ダンジョン観光編
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70話 フロアボスは強いためなめていました

グラムが何とかヒュウとの勝負に勝利し、住民達のテンションは最大限まで上昇した。まさにお祭り騒ぎで、広場の熱気はかなり上昇している。


「よーし、皆!これから冒険者達が来るんだ!しっかりとおもてなししろよ!」

『おおお!』


戦いを見た後、住民達はすぐにパーティの準備に取り掛かる。こういう時の行動力って何故か物凄く早いんだよな。


一方、ヒュウたちの戦いを見ていた才の仲間たちは信じられない光景を見ていたかのように目をパチクリさせていた。・・・まあ、なかなか受け入れ難い光景だよな・・・俺だってビックリしているんだから。


「さすが、神を守る守護者だけはあるな・・・ヒュウが負けたのも納得だ」


と、才だけは何故か当たり前という風な顔で感想を言っていた。


「っちょ!サイ!あれを見て何でそんな平気な顔をしているのですか!ヒュウがあの技を使っても倒せないとかおかしいじゃないですか!」

「そうでござる!ドラゴンすら凍死させる天使の力を食らってなおあんな平然としていられるのは異常でござるぞ!」


セレナとヒスイが真顔で才に問い詰める。


「いや、あいつも言っていたじゃないか。一人で挑んでも絶対に勝てないって」

「それはそうですが・・・いやいや。やはり信じられません!あんな怪物を冒険者達は挑まないといけないのですか?」


グラムの力を見せ付けられセレナは色々と考え出し、頭を抱えた。まあ挑む側からすればかなり絶望だよな。そして、丁度その時広場の中心に扉が出現し動けないヒュウを担いだグラムと後ろからフィロとアッシュが出てくるのが見えた。


「コウキ様、3名を連れてまいりました」


おいグラム!ヒュウは一応ここのお客さんなんだからもう少し丁重に扱ってやれよ!


俺は急いでモニターを開き、上級回復薬を取り出してヒュウに飲ませた。


「おう、光輝・・・テメー覚えてろよな」


俺にしか聞こえないように脅した後すぐにヒュウは才とヒスイに睨みつける。傷はいえているけど疲労や魔力はまだ回復できていないからまだ身体が思うように動かせないみたいだ。


「お前ら絶対凍らす」

「「さぁ、なんのことやら許婚?」」


2人の悪そうな顔を見てヒュウは怒りを通り越してため息が出た。


・・・・・・・・・・・・


グラムについていく形で門をくぐったフィロたちは目の前の光景に驚きを隠せない状態だった。さっきまで凍りついた宮殿にいたはずなのに門をくぐると見たこともない街に来たのだから。


「いったいここは・・・」


フィロたちが呆然としていると光輝が彼女達の目の前へ歩いてきた。


「はじめまして、フィロメール・ヴォルフさん、アッシュ・レヒさん。ようこそ、ダンジョンの街へ」

「あなたは?」

「俺は光輝、ここの代表だ。君達の戦いを見てグラムが是非ここへ招待したいと頼まれたからここへつれてきたわけ」


未だ警戒心を見せる二人・・・まあ、そうなるのは当たり前か。


「まあ、警戒するのは無理ないか。まあ、安心してさっきも行ったとおり君達は招待されただけ。ダンジョンの外へはちゃんと送ってあげるから。それにここには才達もいるし」

「サイ・・・・そうだわ!何でヒュウがあそこに!彼ら確か昨日トレスアールにいた『その説明は私がしますわ』・・・セレナ!」


混乱した状態で俺に問い詰めるフィロの前にセレナが現れた。


「コウキさん、彼女達のことは私にお任せしていただけないでしょうか?多分私達が話したほうが受け入れやすいかと・・・」

「分かった、よろしく頼む」


知り合いが現れたことでフィロは落ち着き始め、セレナたちが説明してくれている。


さて、次は・・・


「グラム・・・傷を治したら会議室に来てくれ」

「・・・御意」


・・・・・・・・・・・・・・・・

会議室


会議室には俺と各フロアボス達が集結していた。エイミィは宴の準備を取り仕切ってもらうために街へ残ってもらっている。


「まずグラム、今回の戦いお疲れ様。住民たちはかなり盛り上がっていたよ」

「そうでしたか、それはよかったです」

「・・・だがな、散々相手に『なめるな』とか言っておきながらお前の戦い方。あれは完全に冒険者をなめているぞ」


俺が少し思いトーンで言った瞬間、周りの空気が重くなり、俺が少し威圧した途端、2メートルもの巨体を持つグラムが縮こまってしまった。


「・・・それは」

「お前は確かに強い。実際ヒュウたちに勝ったし、本気の攻撃を受けても耐え切ったのは凄いと思ったさ。だけどな相手の攻撃を全部受ける必要も無いだろ」


今回の戦い・・・正直エンタメ方面に傾きすぎているように感じた。まるでノーガードのレスリング。相手の攻撃を受け止めてそれでなお余裕を見せる戦いはまるで悪役レスラーだった。相手を強く見せる方法でもあるが、あれは正直グラムが言っていることとやっていることが食い違っていると思った。


「ヒュウの最後の攻撃を受けたとき、お前『神格化』のことを考えていなかったか?」

「・・・それは」


やはりか


「グラム・・・何のために俺がお前に『サブアカウント』を渡したか分かるか?」

「それは、強くなりすぎないためでは?」

「それもある・・・いや、それが一番の目的なんだが。俺は『大地の巨人・グラム』としてフロアボスを任せたいんだ。その意味は分かるな?」


それを言った瞬間、グラムはハッとした表情で俺を見た。


「・・・力を得たことに浮かれていました、このグラム・・・コウキ様の意図をしっかり理解できなかったことに不甲斐ないとしかいえません」


いや、そこまで落ち込まないでくれ・・・他の皆もなんか感心したように納得した様子だし・・・エドやゾアなんか目を輝かせて俺を見ているぞ。


「・・・まあ、理解してくれたならいい。グラム、お前が戦いを楽しみたいのは分かる・・・だけど戦うからには礼儀を持って全力であたれ・・・お前は力だけの漢じゃないってことはよく知っている。だから今後の戦いでは皆を驚かせるような戦いを見せてくれ」


「・・・御意!儂『大地の巨人・グラム』はコウキ様の期待に応えられるよう獅子奮迅の努力をいたします!」


なんか思った以上に気合が入っているがまあ、これで気持ちも切り替わっただろう。冒険者たちには悪いがフロアボス達が怠惰な方向へ向かわせないためにも気合を入れさせてもらう。


「皆もそうだ。『神格化』があるとか格下だとか思ってなめた戦いは俺は許さないからな」

『御意!』


さて・・・みんなの気持ちもこれで引き締まったみたいだし次の議題に入るか。


「さて・・・話は戻るが、グラム。ヒュウと戦って感想はあるか?」


俺が質問するとフロアボス・・・特に戦闘大好きコンビのリンドとカルラが興味津々に耳を傾けている。


「ええ、以前戦った時よりかなり力を増していました。鎖を使わない時の動きは殆ど見透かされていたように攻撃をかわしていましたし、魔法攻撃を中心に攻撃を仕掛けていました」


ヒュウの戦いに高く評価するグラム、それを羨ましそうにリンドとカルラが見ている・・・ガキかお前ら。


「魔人たちとの連携も見事でしたしあの短時間で作戦を思いつく頭の回転も見事でした。そして儂ですら危険と感じたのは最後の一撃・・・あれには儂も肝が冷えました、氷付けされただけに」


笑いどころなんだろうが、正直笑っている余裕は無いぞ。


「・・・失礼。ですが今ならあの攻撃をしっかりと攻略できます」


自信満々にいうグラムを見て頼もしいと思った。


「そうか・・・流石のあの威力を連発してくることは無いだろうが要注意だな。魔人たちはどうだった?」


「ええ、彼女達もなかなかの実力者だと思いました。少なくとも今回挑んできた30名の中では群を抜いています」


まあ、確かに唯一怒らせたグラムに立ち向かったのはあいつらだけだったし、ダメージも与えた。冒険者としての実力はかなり高いだろう。


「アッシュという影使いの攻撃にも驚きましたが、やはりあのフィロメールという少女の一撃・・・あれが一番印象的に残っています」


あの一撃か。グラムが吹き飛ばされたのを見たときは目を疑ったぞ。


「もろに受けたら吹き飛ばされますが、もう今後はそのようなことは起こさせません」


気合の入った一言・・・フィロメールさん、なんかゴメンなさい。

その後、これからのことを話し合い会議は終わる。


・・・・・・・・・・・・・

地下45階


広場に戻るとすでに宴の準備が整っていた。テーブルの上には大量の料理が並べられており、皆の手にはジュースや酒が注がれたコップがある。


一応今回のメインゲストは才達なのだがなんかヒュウやフィロメールの周りだけ凄く賑やかになっている。


「よ、戻ったか。うたげの 準備はあっという間に済まされたぞ」

「そうか・・・ヒュウたち凄い人気だな。フィロメールはなんか顔が真っ赤だが酒でも飲んだか?」

「いや、なんか女性達にヒュウとの関係を問い詰められているらしい」


マジか・・・ウチの女性陣ってこういう話凄く好きだからな。多分、しばらくは話のネタを搾り取られそうだ。


俺に気が付いたフィロメールは真っ直ぐこっちへ歩いてきて挨拶をしてきた。


「さっきはテンパッていてちゃんと挨拶が出来なかったことゴメンなさい。あたしは魔国ゼノの第一王女、フィロメール・ヴォルフ。今回この街に招待してくれたことを感謝します。話は大体セレナたちから聞きました」


なんか少しぎこちないしゃべり方をするフィロメール。


「あ、フィロメール『フィロでいいよ』・・・フィロ、一応俺はこの街の代表だけどそんな硬くならなくていいよ。普通に接してくれたらこちらもありがたいし」

「あ、よかった。こういうしゃべり方慣れていないからあんまり自信なかったんだよね」


普通に話していいよと言った途端彼女は少し落ち着いた雰囲気で話し出す。なんというかおてんば娘というイメージがピッタリだ。ちょっと面倒見てあげたい気持ちにさせられる。


「まあ、まだ色々と考えたいことがあると思うけどこれから君達や才たちの歓迎パーティを開く予定だからさ楽しんでいってよ」

「ありがとう、外にいる部下達に連絡を入れたいのだけど。ここダンジョンなのよね?連絡するにはどうしたらいい?」


ダンジョンには外との連絡を遮断する魔法が施されている。だから彼女はここでは部下に連絡を入れられないと思っているのだろう。


「ああ、大丈夫。ここではモニターで外との連絡が取れるから自由に連絡していいよ・・・せっかくだし彼らもここに呼ぼうか?転移門は出してあげるし人目の付かない場所まで移動してもらえれば呼べるよ」

「本当?じゃあお願いするわ・・・彼らにはあたしが伝えておくから」


フィロは嬉しそうにモニターを開き、外にいる部下達と連絡を取る。そして、フィロが少し離れたところで今度は部下のアッシュが挨拶をしてきた。


「コウキ殿。この度は我々をご招待していただき真にありがとうございます」

「あ、いや。招待したのはグラムだし・・・なんか、あいつがいろいろとやらかしてすみません」


本当ならグラムは仕事を全うしたに過ぎないのだが、少々やりすぎではないかと感じた。


「いえいえ、エイミィ様をお守りする方と対戦できた事はとても貴重な体験でした。それに私もまだまだ未熟だと痛感しました」


なんというか、凄くまじめな人だな。こういう人だからフィロのそばにいられるのだろうけど。


「そう言ってくれると助かります。今日は皆さんを歓迎するために盛大にやらせていただきます。どうか寛いでいてください」


その後、フィロの指示に従った部下達を回収し、合計13名の客人を迎え入れ盛大なパーティが開かれた。


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