61話 別荘に帰ったので楽しみました2
別荘 キッチン
「ジョージさん、こっちの仕込みは終わりました」
「速いな・・・よし、まだ時間があるし新しい料理を教えてやる」
「うっす!よろしくお願いします!」
ランカはジョージから様々な料理を教わっていた。もちろんジョージも夕食の支度や明日の仕込みなどもあるため時間は限られている。だからランカはジョージの手伝いをして空いた時間に料理のイロハを教わっていた。
「食材の捌き方はできるな?」
「はい、野営では必須技術ですから」
「よし、なら庭に用意したロック鳥を捌け。今晩のメインディッシュのために仕入れた」
「了解!」
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別荘 ワイトの部屋
「はぁ・・・やっぱりいい輝きだ」
部屋に篭ったワイトは一人で光輝から貰ったヒヒイロカネを見つめていた。見た目は金塊なのに放つ光は虹色、そこに込められた魔力は今まで見てきた魔石の比では無い。何か引き寄せられるその魅惑の光はずっと見ていても飽きない自信があった。
「これを武器にするとなるとやっぱり剣かな・・・でもコウキ様が剣を持った所見たこと無いし・・・確か杖を持っていたけど、あまり詳しくないし・・・」
最高の素材を手に入れた今、最高の武器を作るのは当然。だがどんな武器を作ろうか迷っている。大きさからして100%ヒヒイロカネの武器は不可能。となれば他の素材も必要となる。
「やっぱり、師匠に聞くしかないか・・でも、師匠もこれを見たらほしがるだろうな」
ワイトの師匠、トーマス・ドゥーリーはアルヴラーヴァの伝説の鍛冶師と呼ばれている存在。そのトーマスの数少ない趣味が鉱石集めである。これまで彼のコレクションを見てきたワイトだがヒヒイロカネは彼のコレクションの中で見たことが無い。つまり、トーマスも持っていない鉱石を今ワイトが手にしているということだ。
「ああ・・・悩む!悩むけど凄く楽しい!」
どんな武器が誕生するのか、それをいつか自分の手で生み出すことをワイトは心から楽しみにしいていた。今の彼の魂はまさにヒヒイロカネは放つ色のように虹い色に変色していた。
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トレスアール邸
「こんにちは、オバチャンいますか?」
オッチャンがぎっくり腰となったことを知り、見舞いとしてトレスアール邸にやってきた俺達。手にはダンジョンで採れた果物を入れてた籠を用意・・・もちろん『マナの実』は無い。
ベルを鳴らし出てきたのはいつものように笑顔のオバチャン、シャーリー・トレスアール。
「あら、コウキちゃんいらっしゃい。可愛いペットを連れているわね。後ろの男性はギルド登録しに来たのかしら?」
オバチャンはすぐに俺の後ろにいたグンナルとオウカを見て言った。
「あ、彼はグンナルで、こっちがオウカ、俺の仲間です」
仲間と言った瞬間グンナルとオウカが少し慌てた様子で俺を見たが俺が『しー』と言って黙らせる。
「そうなの、私はシャーリー・トレスアール。この町の町長を務めているわ。よろしくね、グンナルちゃん、オウカちゃん」
ちゃん付けに慣れていないせいか二人(?)共恥ずかしそうな顔をしている。
「オッチャンがぎっくり腰になったって聞いたけど大丈夫ですか?」
「ええ・・旦那ったら無茶してアイアンバイソンを持ち上げたらポッキリとね。年を考えなさいよまったく」
ハハハ・・・あのオッチャンらしいや。
「あ、これウチで採れた果実です。どうぞ」
「あら、ありがとう。いい果実ね、旦那に見せたら仕入れたいとか言いそう」
「ありがとうございます」
「そういえば、ヒュウちゃんやサイちゃんたちが来ているのだけ知っている?」
「あ、知っています。明日会う予定なので・・・そういえばオバチャンこの町の人の居場所分かるんだよね。それってやっぱり町長だから?」
俺がふと疑問に思い質問してみた。ワイトの時もモニターを使って探しだしてくれたし。
「ええ、調べられるのは町限定だけど誰が入ってきたのかとか、どこに誰がいるのかとかは分かるわよ。まあ覗き見しているみたいだから極力使わないようにしているけど、たまにコウキちゃんの時みたいに行方不明になる子とかいるからそういう時に使うことにしているの」
なるほど、町長特権の能力ということか。そういえば俺もダンジョンの中ではどこに誰がいるのか調べられるからそれと似たようなものか。
「じゃあ、もし俺の別荘に転移門を用意したらオバチャンには知られるってことか」
「あら?もしかして転移魔法が使えるの?イケないこと?」
俺がボソッとこぼした言葉をオバチャンはしっかりと拾い、意地悪そうな眼をした。
「あ、いや。そういう意味じゃないです。ただ、森からここまで距離があるから住民を連れてくるのが面倒だなって思って。別荘につなげれば楽だなって思ってね」
「ああ、そういうことね。いいわよコウキちゃんのお友達なら大歓迎」
あっさりと転移門の設置を許可してくれた。いいのか町長!
「え、いいの?」
「いいわよ、皆ギルドので働くヒトか買い物とかが目的なのでしょ?」
まあ、そのとおりなのだが
「それに今の果物もちゃんと流通が確保できるわけだし町のためにもなるわ。コウキちゃん、一応Cランク商人ギルドメンバーだし」
そういえばそうだった。
「分かりました、色々と準備は必要ですがなるべく早く食料などを輸入できるようにします」
「楽しみにしているわ」
こうして俺は町長から転移門の設置の許可を得た。
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夕方
「ただいま・・・・うわ!なんだこのデカイ丸焼きは!」
別荘に戻るとダイニングのテーブルの上には巨大な鳥の丸焼きがドンと置いてある
「おかえりなさい、コウキ様。今日はランカにロック鳥の丸焼きの調理を教えたので今日の晩御飯にと」
「中まで味がしっかり染み込んでいるので味は自信があります」
自信満々にいうランカの言う通り丸焼きからは照り焼きのような甘い匂いが漂ってくる。やばい、これはがぶりつきたくなる。
「そうか、皆は?」
「テスラたちももう直戻ってくると連絡がありました。ワイトも部屋にいますから呼べばすぐにやってくるでしょう」
そう言ってジョージとランカはキッチンに戻り他の料理の仕上げに入る・・・なんと言うか一般家庭の領域を完全に超えたクオリティになっている。
その後、テスラたちも戻り夕飯のロック鳥の丸焼きを楽しんだ。
ちなみに感想:メッチャ美味かった




