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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第六章 ダンジョン観光編
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58話 正体を知っても扱いは変わりませんでした

「は?アルラがセフィロト?」


シンの衝撃発言に俺は頭の中が真っ白になりかけた。俺はエイミィを見ると彼女も頷いており事実のようだ。


「光輝様、内緒にしていて申し訳ございません。ですが、出来ればこの事実は永遠に知られることが無いことを望んでいました」


謝罪するアルラに俺は一瞬戸惑ったが、落ち着いて彼女の話を聞いた。


「たしかに私は以前、生命の神・セフィロトと呼ばれこのアルヴラーヴァを守ってきました。しかしそれは過去の話。大昔邪神を封印し、肉体を失った私は『神核』になったのです」

「エイミィ神核って?」

「私達、神は不老不死の存在なんだけど神の力を使いすぎると『神核』って呼ばれている石になってしまうの。簡単に言うと神様の活動停止スリープ状態ね、力が戻るまで石の姿になって眠りにつくわ、その間は石の状態で役割を自動的に行われるようになるの、私の場合は『人々に恩恵を与えること』、シンは『世界の調和』、メリアスは『命の恵み』」


そう説明すると、アルラが頷く


「はい・・・その後、神核となった私はエイミィに保護され眠りつきました。神としての力は殆ど使い切りましたから目覚めるには相当な時間が費やされると思っていました。ですがエイミィと光輝様がダンジョンを生み出したおかげで私はアルラという植人族として目を覚ますことが出来ました」


つまり神としての能力はまだ完全に取り戻せていなかったけど、肉体を得たことでダンジョンの住民として早めに目覚めたわけか。


「じゃあ、俺の【ゴッドスキル:リンク】を与えたのも・・・」

「はい、勝手ですがエイミィが住民に祝福を与えた時に私がこっそり光輝様に与えました」


なるほどね、このスキルをエイミィに見せたときかなり驚いていたから、彼女ではないなとは思っていたが・・・・


「まあ、実際このスキルで何度も助かったし。邪神もこれのおかげで倒せたから、感謝しているよ。ありがとうなアルラ」


つい癖で彼女の頭を撫でたが、これはまずかったか?


「光輝さま。私が元神だと知ってもそうやって接してくれるのですね」

「嫌だったか?」

「いえ・・・ただ嬉しいと思いました。エイミィがいなかったら狙っていたかもしれません」

「っちょ!」


狙うって何をだ?そしてエイミィはなんかさっきから顔が真っ赤になっているぞ?


「それじゃあ、メリアスはセフィロトとは関係ないということか?」

「ええ・・・もしかして彼女がセフィロトだと思ったのですか?」


なんというミスリード・・・それもこれも彼女がエイミィ以上に神々しいオーラとハイスペックを持っているせいだ。


「当たらずとも遠からず、彼女には私が残したセフィロトとしての能力データが一部取り込まれていますから、多少昔の私と面影が重なる部分があります。いうなればセフィロトの分身とでもいいますか・・・もっと、誰かさんたちが無断で使用したみたいですが」


そういってアルラがジト目でエイミィとシンを見る・・・こいつらかなり勝手なことやっているな。


「ちなみに他のフロアボス達はアルラやメリアスの正体を知っているのか?」

「いえ、彼らは知りません。ですからこのことは内密にお願いします・・・彼らには余計な混乱をさせたくないので」


まあ、同じフロアボスの部下が元神様なんて知ったら混乱するだろうな。


「それにこういう立場で働くのも結構楽しいのですよ。家畜の世話をしたり、畑の調査をしたり・・・以前だったら体験できないことばかりなので」


まあ、神様が農作業とかしないだろうな。むしろ、魔法とか使って無理やり育てていそう。


「ですから今後とも地下44階層フロアボス・メリアスとその部下アルラとして接してください」


二人が頭を下げるが俺としては今更、神様だからといって態度は変えるつもりはないし・・・


「分かった、ならこれまで通り頼むな。アルラ、メリアス」

「「御意!」」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『では、僕はこれで失礼します。才君にも色々と伝えないといけないことがありますから』

「ああ・・『サブアカウント』の件ありがとうな。おかげで問題はだいぶ解決できた」

『いえ、むしろ僕達の問題に巻き込んでしまって申し訳ないと思っています・・・何か困ったことがありましたら連絡をください。一応光輝君の連絡先に登録しましたからいつでも連絡が取れますよ』


モニターを開くとたしかに『SHIN』という名前が連絡先に登録されていた。


「ああ・・・ありがとう」

『エイミィさんのことよろしくお願いします・・・色んな意味で』

「っちょ!それどういう意味よ!」

『もちろん、色んな意味です・・・それとエイミィさん、いいのですか?そろそろ切れるのでは?』


何のことを話しているのか分からないがシンが少し笑うとエイミィは何かに気付いたかのように急いで部屋から出て行った。


「・・・どうしたんだあいつ?」

『相変わらず面白い反応ですね・・・光輝君、エイミィさんはああいう性格です。彼女の我儘に振り回されるかもしれませんがそれが信頼の証でもあります・・・才も似たような状況ですし』


クスリと笑いながらシンのモニターは消える。残されたのは俺とアルラとメリアス。


「では、私達も仕事に戻ります・・・お疲れ様でした」


アルラとメリアスも一度お辞儀をして自分達の仕事場に戻る・・・部屋に残された俺は今までの疲れがドッときた気分でベッドに倒れこむ。


「なんか色々とありすぎて頭が混乱してきた・・・一度寝よう・・・」



・・・・・・・・・・・・・

エイミィの部屋


光輝の部屋から戻ったエイミィはまるで芋虫のように毛布に包まり何かもだえていた。


「あ・・・危なかった。シン、あいつ絶対切れる直前に言ったわね!」


光輝とキスをした事実を知って以降、彼女はまともに彼の顔を見ることが出来なくなっていた。身体は燃えるように熱く、顔も熟れたてトマトのように真っ赤、鼓動もさっきから激しく打ち鳴らして止まる気配が無い。


今回は【精神魔法:沈静化】、【精神安定化ポーション】、【氷属性魔法:クールボディ】を駆使して何とか光輝の前で気付かれること無く、あの出来事はお酒のせいだと伝えることができた。しかし薬などの効果が切れ、現在彼女の鼓動はレッツパーリィ!状態になっていた。


「・・・・うぅ・・・もうしばらくこれに頼る必要があるわね」


大量のポーションが積まれた棚を見上げながらエイミィはそう呟いた。


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