53話 宴をしたら褒美をもらいました
集落の事件が解決した後、全ての集落はダンジョンの街に移住することが決定した。
それぞれの長達も一度自分達の集落に戻り引越しの準備に取り掛かるそうだ。エドワードに集落の座標を教えてもらい準備が整ったらエドの『転移門』でこっちに来るようにした。
「さて・・・忘れ物はないな?」
北の集落の亜人達に確認を取り俺はエドに集落を吹き飛ばすように指示した。
ルヌプの兵士達は集落で刻印魔法の暴走事故で亜人達と共に死んだと見せかけるようにした。これで少なからずルヌプが亜人たちを追いかけようとはしないだろう。
「よし、帰るかダンジョンに」
・・・・・・・・・・・・・・
地下45階層
転移門でダンジョンに戻ると目の前にはエイミィとフロアボス、そして街の住民達も一緒に出迎えに来てくれていた。
「これは・・いったい?」
亜人達もビックリした様子で混乱している。
「エイミィこれはいったいどういうことだ?」
「おかえり、光輝。新しい住民が来たのです。当然歓迎のために集ったのですよ」
ああ、なるほど・・・よく見たら後ろのほうに既に宴会の準備とかしている。どんだけ騒ぐのがすきなんだよウチの住民。
「おお・・・エイミィ様・・・本物のエイミィ様だ!」
長が生のエイミィを見ると声を上げてまたひれ伏すように頭を下げる・・・0.3秒、記録更新だ。
「この度は、我々をお救い頂いて真に感謝します」
同じように頭を下げる亜人達を見ると、エイミィは俺にしか見えないようにドヤ顔をする・・・ああ、はいはい分かりました、凄いですね。
「亜人の皆さん、今日からここがあなた達の家です・・・これからよろしくお願いします」
うん、本当コイツ誰?と思いたくなるくらい女神フェイスのエイミィを見て少し呆れる。
その後、次々とつれてこられる他の集落の亜人達もエドの転移門によって送られて来ると全く同じ反応を見せエイミィはかなり上機嫌になった。
集落の亜人、合計で約400名が住民として加わりさらに賑やかになった街はもうお祭騒ぎだった。
初めての宴の時はダンジョンで集めた果実や焼肉だったが、今では様々な料理が並べられている。食器もデカイ葉っぱの皿じゃなくて、しっかりとした陶器の皿でフォークやナイフなども用意されている。一年近くでここまで進歩したのを感じるとなんか感慨深くなってきた。
集落の亜人達も始めは遠慮とかしていたが、マリーやランカたちが間に入って架け橋になってくれている。特にエドなんか子供達に物凄い人気を見せていた。
どうやら、ナギとナミがエドの武勇伝を語ってヒーローになってしまったようだ。いつの間にか亜人だけでなく住民の子供達もエドに寄って来るのが見える。
まあ住民とあまり接することもないし、良い機会だと思った。
「そういや、コウキさん。マリーから聞いたんやけど。ナギって少年刻印魔法の書き換えが出来るそうですね。それに他の亜人達も刻印魔法の技術を持っているそうで・・・」
興味深く話しかけてきたのはゾアだった。技術開発部門も最近刻印魔法の家具とかの製作で忙しいみたいだから人手が欲しいのだろう。
「一応、彼らの意思を尊重しな・・・引き入れるのはそこからだ」
「了解したで」
新しい人員確保が出来たと重い、ゾアもかなり嬉しそうだった。よく見ると、さっそくマリーや技術開発部門のメンバーが亜人達の勧誘をしているのが見える。まあ、あの様子だとかなりの人数は確保できそうだな。
「主様、今よろしいでしょうか?」
次にやってきたのはカルラだった。おそらく自分の部下達がしっかり護衛できていたか気になっているのだろう。さっきから、チラチラとランカたちを見ている。
「どうした?カルラ?」
「いえ、その・・・今回、私の部下が色々とご迷惑をおかけしたのではないかと少し気になりまして・・・ランカたちからの報告では殆どエドワードの活躍でコウキ様をお守りしていたと聞きましたので」
ああ、確かに今回の事件はエドに色々と助けられた場面が多かったな。本人達は特に活躍できなかったと気にしているのだろう・・・
「そんなことは無いさ。グンナルも、ランカもオウカもいたから俺達は集落の皆を助けることが出来た。あいつらは胸を張って護衛をしたと言っていいぞ・・・それに今後も彼らに護衛を頼むつもりだ」
俺がそう説明するとカルラの顔色はパァと明るくなった。
「そう言ってくれると、嬉しいです。ランカたちにもそう伝えます」
上機嫌になったカルラはそのまま肉が積まれているテーブルへ直行した。
「光輝、随分とフォローが上手くなったんじゃない?」
振り向くと右手には空になったグラスを持ったエイミィの姿・・・思いっきり祭を満喫しているようにしか見えない。
「そうか?・・・あんまり自覚無いが。俺なんてまだまだな気がするよ」
「まあ、別にいいんじゃない・・・それに長たちから聞いたわよ。光輝、救世主の仲間なんだって?そして救世主はあのエドワード」
ニヤニヤした顔で見るエイミィは正直ウザいと思った・・・ってか今日のエイミィ、ずいぶんと絡んでくるな。顔も普段よなり赤いし、凄く近くて甘い匂いがする・・・
「・・・ねぇ、光輝ありがとうね・・大好き」
・・・不意打ちだった。何が起きたのかよくわからい・・・ただ俺の目の前にはエイミィ。そしてお互いの唇が重なっていた。
「・・・・え?」




