51話 邪神にエンカウントしたら戦闘になりました
ルヌプの兵士の叫びは轟音を立てる火柱によってかき消される。
そして一瞬にして兵士達を灰へと変える。
本当ならそれを見て叫び、逃げ出したくなるがそれ以上に火柱を起こした犯人・・・ザズムフの存在に恐怖で動くことも叫ぶことも出来ない状態だった。
「やれやれ・・・せっかくの俺の登場だっていうのにだんまりか。まあ、それが普通の反応かな?」
呆れたような顔で亜人達を見ると、手のひらから炎の弾を作り出し亜人達へ放つ。だが、すぐにエドの結界によって全て防ぐと少し驚いたように嬉しそうな顔をした。
「ほぉ、只者ではないとは思っていたが。なかなかやるな」
「ザズムフさん・・・どうして?あんなに優しかったのに・・・あたし達に刻印魔法教えてくれたのに!」
やっと声が出せるようになったナミは泣き顔でザズムフを見た。
「ナミ・・・お前とナギはこの集落で特に優秀だったな。だが残念だ。もしお前達に神を恨む心があれば我々の同志になれたかもしれないのに・・・」
言っている意味が分からない・・・神を恨む?
「ダンジョンに爆弾を仕掛けたのはお前か!」
「そうだ!まあ、正確にはおれが操った兵士が仕掛けたんだが。本当なら爆発させる予定だったが仕掛けた後、少し離れたら魔物に襲われてあっさり脱落・・・あれは滑稽だったな」
自分の失敗を笑っているザズムフ。だがこれで納得がいく。基本、回収班は冒険者が脱落した場所に向かってドロップアイテムを回収する。だが仕掛けた場所から離れたところで脱落したのなら回収班が見つけられなかった謎も分かった。
残る謎は・・・
「エド、お前は最初から知っていたのか?集落のことも、奴のことも!」
「・・・いえ。邪神のことは知りませんでした。ですが善からぬ気配が集落にあるのは感じました。なのでオウカたちには荷が重いと感じ我も同行したのです」
なるほど、はじめは俺を行かせたくなかった様子だったのはこれが理由だったのか。そして俺が行くと決めるとあいつも護衛として同行すると言い出した。
「ほぉ・・・気配は隠していたつもりだったが若干漏れていたか?」
ザズムフが関心したように言うと、全身から真っ黒なオーラを放った・・・これが邪神?
ザズムフの辺りを見ると草木は枯れ、土も腐ったかのような悪臭を放った。
「畑は不作にし、食料問題を起こしてもこいつらは神を恨まない。偶然この集落を見つけたあの兵士達に欲望の呪詛をかけて亜人たちに恐怖を植えつけてもあいつらは手を差し伸べない神を恨まなかった・・・本当に反吐がでるぜ」
「貴様・・・その魔法は【呪属性】か?」
「正解。お前かなり優秀な魔術師だな・・・実に残念・・・だ!」
狂喜の笑みを見せながらザズムフはエドの結界に突進して破壊しようとする。
「っぐ!」
「おら!どうした?!しっかり守りなよ!大切な足手まといちゃんたちを!」
ザズムフの腕が黒く染まると黒い魔力を上へ打ち上げる
「『呪詛魔法:死之雨』」
次の瞬間。黒い魔弾の雨が亜人達の周りに降り注いだ。
「貴様!」
エドが急いで亜人達の周りに結界を張った瞬間、一瞬・・・本当に一瞬の隙を突いて、ザズムフの攻撃がエドに直撃さた。
「っぐ!」
「『呪詛魔法:心蝕刺青』」
攻撃をくらった肩から徐々に黒い茨のような刺青が広がり始めるのが見える。
「どうだ?・・・俺の呪詛魔法は?その刺青が貴様の心臓に達した時お前の命は!」
ニヤリと笑うザズムフ。
だが呪魔法が直撃した瞬間俺はモニターを開き、【ゴッドスキル:リンク】を発動させた。
エドに【呪無効化】、【状態異常無効】、【自然回復レベル8】を追加
耐性スキルが付与された瞬間エドの身体を侵食していた刺青が消えていく。
「な!何が起きて」
「コウキ様、感謝します!」
何が起きたのか分からないザズムフは再び呪詛魔法をエドに放つ。だが、今のエドに呪魔法は無効化される。さらに自然回復も追加しているから攻撃を受けてもすぐに回復。
もうはや避ける必要も無くなったエドはザズムフの周りに封印魔法が付与された結界を張る。これで奴の逃げ場はなくなる。そして、結界の中にはエドが仕掛けた『原初魔法』の魔法陣が複数浮かび上がっている。
「ダンジョンに手を出したことを後悔するがいい!・・・『圧縮光線』!」
まるで巨大なレーザー砲の如く大量の光線はザズムフを貫く。
「がは・・・テメェ・・・ナハナンダ」
「エドワード・・・原初の魔術師・エドワードだ!」
「・・・ソノナ・・オボエタゾ」
最後の力を振り絞って聞いたザズムフはその後塵となって消える。
「・・・倒した?・・・あの邪神を?」
一人の亜人はポツリと言葉を溢すと亜人達は一気に歓声を上げた
「うぉおおおおお!あの邪神を倒したぞ!」
「奇跡だ!奇跡が起きたんだ!」
邪神を退いたことに喜ぶ亜人達・・・その姿を見てホッとしたエドワードはそのまま力尽きるように倒れた。
「おい、エド!しっかりしろ!」
「・・・コウキ様、申し訳ございません。少々魔力を使いすぎました。我はしばし眠りにつかせて貰います」
一瞬、呪いが残っているのかと思ったがステータスを確認しても呪い状態にはなっておらず、【魔力不足】と表示されているだけだった。
「はは、そうか・・・エドお疲れ様。安らかに眠りな」
「・・・我を殺さないでもらいたい」
そう言ってクスリと笑った。




