45話 噂が広まったら世界中が動き出しました
聖・メゾン王国
「ほう、あの『紅吹雪』がダンジョンに挑んだと?」
「は、どうやら11階層まで到着したらしいのですが、フロアボスと名乗る巨人に敗北したらしいとの報告がきています」
「ふむ・・・テオ王国がとうとう本格的に動き出したわけか。なら遅れをとってはならんな。なんとして他の国よりも先に神・エイミィを手に入れるのだ」
「っは!」
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魔国・ゼノ
「魔王様、報告があります!」
「ふむ、申せ」
「同盟国であるテオ王国のヒュウが神・エイミィのダンジョンに挑み敗北したとのことです」
「ほぉ、あのヒュウ殿が敗北するとは。神・エイミィのダンジョンとはかなり難易度が高そうだな・・・先ほど才殿とテオプア王国の姫君から連絡があって『待機命令は解除してよし』と告げられた」
「では」
「ゼノの国民に告げよ!己の実力を試したい者はダンジョンに向かえと!本日をもってダンジョンに行くことを許可する!」
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天国 ハルモニア
「ほほう、あの堕天使が負けたとは・・・いい気味じゃ」
「しかしあの者が敗北したとなると、エイミィ様をここにお連れするのは厳しいのではないでしょうか?」
「何、我々には神のご加護がある・・・必ずエイミィ様をこの聖地・ハルモニアへとお連れするのじゃ!」
「っは!」
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奴隷国家 トジュオ
「・・・あのヒュウが敗北しただと?」
「・・・情報によりますと11階層の巨人に敗北したとのことです」
「ダンジョンに向かったのはヒュウのみか?サイは動いていないのか?」
「はい、報告ではグランドマスターを含め、他の幹部達は挑んでいないそうです」
「ふふ・・・そういう魂胆か・・・面白い」
「陛下?」
「なら望み通り動いてやるか・・・サイ・・・今度こそお前を・・・」
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テオプア王国
「姫・・・聖・メゾン王国、魔国ゼノ、天国ハルモニア、奴隷国家トジュオから神・エイミィのダンジョンに向けて多くの冒険者を送ったとの情報が届いています」
「そうですか・・・トジュオは私の考えをお見通しだと思いますが今はそれでいいのです」
「テオ王国からも有能な冒険者たちが次々とギルドに集結しているそうです」
「ふふ・・・これから楽しくなりそうですわね」
アルヴラーヴァ五大国、ヒュウのダンジョン攻略をきっかけに彼らはそれぞれの思惑を秘めてダンジョン攻略へと向かうのであった。
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ダンジョン 作業部屋
『そういうわけで、五大国を含めアルヴラーヴァ中の冒険者や実力者たちが今ダンジョンに挑む準備をしている。これまでの冒険者とは一味違うから・・・まあ、ヒュウから話を聞いているからそっちは大丈夫だと思うが』
「外ではそうなっているんだ」
俺は久々に才とお互いの現状を報告しあっていた。
『そういえば俺が渡した本は役に立っているか?』
「ああ、ありがとうな。おかげでダンジョンの新しいコンテンツが出来たんだ」
『そうか、有効に活用してくれているのなら渡しがいがあるな。近いうちにまたトレスアールに寄る予定だからもしかしたらダンジョンに立ち寄るかもしれない』
「そうか、じゃあしっかりとお持てなしをしないとな。こっちも街とか作って結構良い感じになっているし」
『もし完成したらテオ王国と交易を結びたいものだ・・・そろそろ仕事に戻らないといけないからこれで失礼する・・・またな』
「ああ、わざわざありがとうな」
才との通信が終わり俺も仕事に戻ろうとした時タマモから連絡が入った
『コウキ様、今よろしいでしょうか?』
「タマモか?何かあったのか?」
『実は回収班が何か怪しいものを発見したらしく見てもらいたいのです』
「分かった、すぐに向かう」
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管理室
管理室に向かうとタマモたちの目の前に怪しげな刻印が刻まれた大きめの箱が置かれていた。
「コウキ様、これです・・・鑑定したのですが。何か阻害される魔法がかけられていまして。上手く見ることが出来ないのです」
「わかった、ちょっと待って?」
俺はモニターを操作して目の前にある箱を『スキャン』した。たとえ阻害系魔法が施されていても【ゴッドスキル】にかかればすぐに分析が可能だ。
爆弾箱
爆裂魔法の刻印が刻まれた爆弾。強い衝撃を与えることで半径50mまで炎属性の衝撃波を放つ。
・・・・うんヤバイな。なんちゅーものが置いてあるんだよ!
「爆弾だ・・・これをいったいどこで拾ったんだ?」
「はい、2階層で回収班が偶然見つけたそうなのです。戦闘の痕跡が無かったので冒険者のドロップアイテムではないのは間違いないのですが・・・もしかして、対グラム様ようの兵器だったのでは?」
・・・スキャンした情報からかなり高度な魔法が施されているし。これが巨人用の武器といったら納得できる・・・だが
「・・・・回収班や警備隊には気をつけるように伝えてくれ。それと今後も鑑定できないドロップアイテムは全て俺に回してくれ・・・くれぐれも衝撃とか与えるなよ!」
「かしこまりました」
俺は爆弾箱を持ち、エドのいる地下33階層に向かった
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地下33階層
地下33階は簡単に言うと超巨大な図書館だ。戦うステージの壁側には大量の本が敷き詰められ、床にも何冊もの本が山積みされている。天井からは常に大量の本が滝のように流れており、ところどころ本の海となっているところもある。積み上げられた本は次々と白い玉のような妖精たちがせっせと上へ運び本棚に並べている。
本来はこの本も妖精たちも背景のオブジェクトという設定で作っていたのだが、ダンジョンが誕生したことで本物となってしまったのだ。今はエドの使い魔としてこの部屋の管理を手伝っている。
奥へ進んでいくと俺は大量に積まれた本の上で黙々と読書をしている男を発見した。
地下33階のフロアボス、原初の魔術師・エドワード。ダンジョンを作った時、唯一外見設定がされていなかった人物で、俺のアイディアをぶち込んで作った最強の魔術師。正直俺の黒歴史が人の形をして存在しているようなものだ。しかも、俺のミドルネームを付けたせいでなお恥ずかしい。
本当俺がデザインした外見とはいえ、むかつくほどのイケメンだ。しかも読書をしている姿とかどこの乙女ゲーの優等生キャラだよ。
「おーい、エド今いいか?」
俺に気付いたエドは少し慌てた様子で本の山から飛び降りた。
「これはコウキ様、わざわざここに来なくてもお呼びしてもらえれば我がすぐに駆けつけましたのに」
「いや、そこまで手間じゃないし。用事があるのは俺の方だったからな・・・それよりちょっと見てもらい物があるんだ」
俺がエドに爆弾箱を見せると彼は真剣な表情で箱を見た。
「これは、爆裂魔法の刻印・・・しかも、阻害魔法の刻印も刻まれていますね」
「魔法のことはお前に聞くのが良いと思ってな・・・これを見て何か思うことはあるか?」
「阻害魔法が施されている以上、明らかにこれは罠として作られたものですね・・・目の前の敵に投げつけるのであれば阻害魔法は必要ありませんし」
やっぱり、エドも俺と似たような考えをしていた。タマモは対グラム用の武器と見ているが俺達は別の誰かを狙ったものだと考えていた。
「冒険者を狙ったものか・・・・あるいは回収班、ダンジョンの者を狙ったか」
「その可能性は無いわけじゃない。だがまだ確証が取れないんだ。だからすまないがその辺の調査を頼んでいいか?」
「御意!我はコウキ様の影。このエドワード必ず暗雲に潜む真実を我が手中に!」
うん、言いたいことは分かった。だからその中二病のポーズ取りながら言うのやめてくれないか?最近はまともな話し方をするようになってきたと思っていたが油断するとこういうカッコ付けポーズや痛い言葉を言う。
「あと、この箱の解除法って分かるか?正直このままにしておくのは危ないし、回収班にも解除方を伝えておきたいからな」
「それなら簡単です。我の脳に封印されている解魔の魔法でなくても誰でも解除は可能です。ここに魔力を込めた武器を使って核に傷を刻めば・・・」
そう言ってエドは一本のナイフを取り出し、魔力を込めながら中心部分に傷を刻む・・・というか脳に封印したとか、それただ知っているだけだろ。
「刻印の中心部分に適当な線を刻めば発動は無効化させることが可能です・・・ここが刻印の中核なのでそこさえ無効化させれば爆裂魔法は無効化されます」
まるで、プログラムの文字を一文字変えてバグを起こすような感じだな。
エドは実証するかのように軽く爆弾箱を投げつけるが不発となった・・・・頼むからそういうのやめてくれ!心臓に悪い!
「では我はこれより真実を探しますので失礼します」
まるで影に吸い込まれるかのように消えたエドを見送り俺はタマモに連絡して刻印魔法対策を伝えた。




