43話 ダンジョンは危険なので警備隊を派遣しました
リンドから派遣された兵士は合計で30名。それぞれが高レベルの魔物が進化した魔人や獣人たちで正直、グラムに挑んだヒュウ以外の冒険者達より強いんじゃないか?と思うくらい覇気を感じた。
そしてその中でも特に飛びぬけている3人が隊長格として俺の前に現れる。
「41階層出身、有鱗族・氷結龍種のソウキです!」
「42階層出身、有鱗族・剣闘龍種のアイガと申します」
「43階層出身、有鱗族・死霊龍種のカクラです」
リンドの直属の部下が今回、冒険者取締り部隊の幹部にと抜擢された。
「ああ、よろしく。しかしリンドの奴いいのか?直属の部下を俺のところに預けて?」
「ああ、大丈夫ッス・・じゃなくて、です!俺達立場上リンドの部下ってことになっていますが別にあいつの言いなりってわけじゃないし・・・むしろコウキ様に仕えて光栄と思っています!」
元気に返事をしたのはソウキという青髪の青年だ。クールそうな種族の割にはかなり活発な性格をしている。
「そうだな・・・だが、リンドにコウキ様の下で働かせてもらえることには感謝しなくてはな」
武士っぽい黒髪の女性、アイガは目を輝かせながら言う。
「ふふふ・・・コウキ様、我々は今あなたの手足となりました。どうぞ何なりとご命令ください。リンドからもコウキ様からの命令を第一に優先するようにと申されましたので・・・まあ、言われなくても当然そのつもりですが」
そして紫髪で可愛らしい少女は落ち着いた様子で話しかける。
・・・・なんというか、かなりクセのある奴らが来たな。というか、こいつらリンドに対して忠誠心みたいなの欠片も持っていないんじゃないのか?
しかも氷、闘、霊・・・リンドを含めてどこかの四天王みたいじゃないか
「なら、さっそくで悪いがソウキとカクラは2階層、アイガは3階層を頼む。この階層がかなり問題が多くてな、管理側では手が回らなくなっているんだ」
「了解しました!じゃあ俺達はその不良冒険者たちの身包みを剥いで殺せばいいのですね?」
元気に言うソウキの言葉に一瞬引きつるが考えていた内容はその通りだから何も言えない。
「まあ、そんなところだ。だがまず取り押さえてこっちに連絡を入れて欲しい。こちらが確認を取れたら行動に移してくれ・・・あと素性がバレないようにこの仮面を見につけること」
「「「御意!」」」
三人が元気良く返事をした後、タマモに頼んで三人には部隊を編成してもらいダンジョンに転送してもらった。
「さて、リンドの部下の実力はどんなものかな?」
・・・・・・・・・・・・
2階層 C地区
「むぐぐぐ!」
「っち!大人しくしていろ・・・へへ、いい武器を持っているじゃないか。ダンジョンってのはこういう稼ぎ方もあって楽しいよな」
大柄の冒険者・・・むしろ盗賊の頭みたいな男は数人の若手冒険者を簀巻きにして防具を剥ぎ取っていた。
「リーダー、この後どうします?このまま殺しますか?」
「いや、魔物をおびき寄せる餌にする。こいつらに注意が向いている隙に獲物を狩る」
「なるほど、頭いいですね」
高笑いする2人の冒険者達の前に一人の男が現れる。
「ダンジョン法、7条・・・冒険者同士での強奪を禁ずる」
「あん?なんだテメェ?変な仮面を付けやがって。この『熊殺しのヴァンザ』様にたてつこうってのか?」
「エイミィ様からの信託は聞いていないんスか?その行為は明らかに法に反しているッスよ」
「知るか、そんなこと!大体こんなことやっても別に天罰が来るわけじゃ・・むぐ!」
ヴァンザが叫んだ瞬間、彼の口と鼻が氷で覆われた。
「ならその天罰は今下されるッスね・・・こちら、ソウキ強奪冒険者を2人拘束したッス」
『こちらタマモ。はい確認取れました。『犯罪者ステータス』の付与が完了しましたので後はご自由にしてください』
タマモとの連絡が終わり、ソウキは部下に指示を出してヴァンザたちの防具を剥ぎ取る・・・防具を回収した後、2人は剣に突き刺され光の粒子となって消えた。
「ほい、任務完了ッス。えーと、君たちが奪われたのはこの防具であっているかな?」
「は、はい。そうですその通りです」
「よろしい、正直者の君たちにはちゃんと返すことにするッス。ちなみに嘘ついたら全部没収だから嘘ついちゃ駄目ッスよ」
ソウキは若手冒険者たちに防具を返却した後、残りの装備を回収して転送した。
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2階 F地区 採掘場
「この採掘場は我々が占領した!一般冒険者たちはすぐに立ち去りなさい」
どこかの騎士団らしい一段が採掘エリアに柵を立て始め、占領し始めた。
「ふざけるな!何でお前らが勝手に占領しているんだよ!勝手に決めるな!」
「黙れ!このダンジョンの鉱石は非情に上質だ・・・これは我々が国を想ってのこと。誰にも邪魔はさせん!」
騎士団は一糸乱れぬ体勢で採掘エリアを封鎖させた。
「・・・ダンジョン法、3条・・・ダンジョン内で公共エリアの占領を禁ずる」
「誰だ貴様!」
「国を想う心は実に良い・・・だが、そのために公共の場を占拠するとは嘆かわしい。その腐った根性、某が叩きなおしてくれる!」
兵士たちの前に現れたのは仮面をつけたアイガ。腰には身の丈ほどの大太刀を身に着けている。
「某の名は『隊長!名前は駄目です』・・・むぅ、そうだった。我々はこのダンジョンの秩序を守る者・・・貴様らの行い、それはエイミィ様が決めた法に反する行為だ」
「ふん、何が秩序だ!貴様らの方も勝手では『一閃!』・・・な!」
アイガの大太刀によって真っ二つの盾を見て兵士達はポカンとした表情をしていた。もちろん、それを見ていた冒険者達も。
「っちょ!隊長、武具は回収するんですからあまりそういうことは!」
「あ、某としたことが・・すまん」
隊員たちの呆れた声に謝罪するアイガ・・・どこか抜けている様子で愛着がある。
「ば、バケモノめ!全員、あの者を切れ!」
兵士たちが一斉にかかると、カクラは呆れたように隊長格に睨みつける
「貴様らのような奴・・・騎士も武士も名乗る資格は無い!」
アイガの素早い太刀筋で兵士たちが次々と倒されていく
「拘束しろ!・・・冒険者の諸君。騒がせてすまない。君達は引き続きダンジョン攻略を楽しんでいくといい」
そう言い残し、アイガと兵士達は兵士達の身ぐるみを剥ぎ取り、採掘した鉱石も回収して連絡を取る。
「こちら、アイガ。採掘エリアを占拠していた者達を取り押さえた・・・確認を頼む」
『はいはい、こちらタマモ。確認が取れましたので、どうぞご自由に』
「・・・了解した」
その後、兵士達は絶叫と共に光の粒子となって消える
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3階
「きゃああ、やめてよ」
「いいじゃないかよ・・・俺達と一緒に遊ぼうぜ」
どこの不良だよ・・・とツッコミたくなるテンプレ不良冒険者たちが女性冒険者たちに迫っている。
「いやあああ、助けて!」
「ひひ、いいね、叫ぶ声も気持ちいいじゃないか」
「・・・ダンジョン法、2条・・・ダンジョン内での猥褻行為を禁ずる」
「あん?誰だ・・・おお、素顔は分からないがあれは絶対上玉だな」
仮面で素顔を隠したカクラを見たヘンタイ冒険者達は女性冒険者を縛り、彼女を囲んだ。
「嬢ちゃん、いけない子だな。君みたいな子はこんな所にいちゃいけないよ」
「・・・ふふ、実に愚かですね。自分達が置かれている状況を理解していないとは」
「だよな・・・お嬢ちゃん、自分が何されるか分からないだろ?今から教えてやるよ」
不良冒険者が少女の胸を触ろうとした瞬間、黒い影みたいなものが冒険者の腕を切断した。
「え?・・・うぁあああ、俺の腕が!」
「ふふふ・・・本当に愚かですね・・・そして運も悪い」
カクラの素顔は見えなくても、そこかから漂う瘴気のようなものを感じ不良冒険者たちは恐怖に刈り取られた。
「ふむ・・・これからがと思いましたが、既に戦意は無しと・・・タマモさん、こちらカクラです。猥褻行為を行った冒険者たちを捕らえましたので確認をお願いします」
『は、はい・・・もう大丈夫です。後はご自由にしてください』
「・・ふふ、御意」
その後、不良冒険者たちが無事入り口に転送されたのを確認されたが。以後彼らはダンジョンに立ち入ることは無く、修道院で修行すると言い出したそうだ。
この中で一番やばいのはカクラだと、管理室のメンバーはそう思った。
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ダンジョン入り口
真っ先に飛ばされた盗賊冒険者のヴァンザたち。
「くそ!なんだったんだあの仮面の奴らは!チクショー!やっぱりスキルが下がっていやが・・ん?なんだこのステータスは?」
『ダンジョン犯罪者』
このステータスはダンジョンにて犯罪行為を行われた者に付けられます。このステータスが付与された場合、以下の罰則が与えられます。
・半年間ダンジョンに立ち入ることを禁ずる
・ダンジョンで死亡した場合、デスペナルティーが二倍になる
・再犯を犯した場合は永久にダンジョンの立ち入りを禁ずる
なお、このステータスは付与されてから二年後に削除されますがそれ以外の方法では解除出来ません。
「な、なんじゃこりゃ!!」
驚くヴァンザたち・・・そして次々と入り口に転送されていくダンジョン犯罪者たち、それぞれが自分のステータスを確認し、絶望のような表情をしていた。
この噂は瞬く間に広まり、ダンジョン内での犯罪は激減されたという。
ソウキ、アイガ、カクラの登場人物紹介に追加しました。
名前はリンドを含め喜怒哀楽と龍の身体の一部から取りました。属性も某ゲームに登場する四天王からネタです。
爪喜、鱗怒、哀牙、角楽




