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ダンジョン作ったら無理ゲーになりました(旧)  作者: 緑葉
第四章 ダンジョン侵略編
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41話 助けたら神獣が誕生しました

地下45階層、農場エリア。


フロアの3分の1の土地を占めるこの場所ではダンジョンに生息する魔物の他、外から連れてきた動物などが飼育されている。


主な目的は食料としての品種改良の実験であるが生態調査も兼ねている。


・・・・・・・・・・・・・・


『それじゃ、今日はカルラの部隊が外から動物を連れてくるんだな?』

「はい、ミーシャが担当する医療部門とも協力して魔素による受肉実験を行うのでそのデータを取る予定です」

『正直整体実験とか良い気分はしないが、知っておかないといけないことだし。仕事を増やして申し訳ないが調査の方を頼む』

「かしこまりました。コウキ様から授かったこの使命必ず成し遂げてみせます」

『いや、そんな張り切らなくても・・・まあ良い結果を楽しみにしているよ』


ここは地下44階、ダンジョン本来の最下層であり最強のフロアボスが守るフロア。

最強のフロアボスにして本来のダンジョンマスターであるメリアスは主である光輝から新しい仕事を託された。


44階層はまさに幻想の世界と言える大自然に囲まえたフロア。辺りには名も無い美しい花や光り輝く実をつけた樹などが植えられている。


『マナの実』、『ユグドラシルの樹』、『月英花』、『精霊の雫』その他もろもろ

ゲームでは終盤などに登場しそうな貴重な植物、この世界にとっては幻とも言われていようなものがここではごく自然と育っている。


「さてと、アルラ今いいでしょうか?」

『はい、メリアス様何かありましたか?』


メリアスがモニターを開き部下のアルラと連絡を取る。


「以前から計画していた魔物化の実験ですがそちらの準備は整っていますか?」

『はい、指定された実験所に結界を貼り、魔素の濃度も上げてあります』

「よろしい、もう少ししたらカルラの部隊が動物を連れてきますのでよろしくお願いします」

『かしこまりました』


そう言い残しアルラとの連絡を切る。

「さて、どんな結果が生まれるのか・・・・三大神でも予想出来ない結果が出ることを期待しますか」


・・・・・・・・・・・・・・

牧場エリア


「ちわーっす!生活部門・調達部隊ただいま到着しました!」


どこかの配達員のように元気に挨拶をしてきたのは若い獣人の青年だった。後ろには檻などに入れられた大量の動物たちが次々と運ばれてきている。


「こちらが捕獲した動物のリストです・・・後で確認をお願いします」

「ありがとうございます。それでは後は私が運びます」

「え?しかしかなりの数ですよ牧場の中まで運んだほうが・・・」


しかし青年が言い終える前にアルラは魔法で大量の動物を檻ごと持ち上げる。外見は小さな子供でも彼女はメリアスの部下・・・最高難易度に出現する魔物から進化した彼女の実力はフロアボスに次ぐほどである。


調達部隊は目を丸くさせ宙に浮かぶ檻を見上げた。


「ここから先は魔素の濃度が非常に濃いので一般の方は危険です。ご苦労様でした・・・」


そう言って彼女は調達部隊を残し動物と共に結界の中へと入る


・・・・・・・・・・・・・・

研究所


「あら、アルラ・・・調達部隊の方たちは入ってこなかったの?」


研究所に入ると普段のお姫様ドレスとは一転し白衣の姿をした地下11階層のフロアボス、ミーシャの姿があった。


「はい、この魔素濃度では危険だと判断したので入り口で引き取りました。動物たちは手はず通りに連れています」

「そう、さすがメリアスさんの部下ね。この魔素の濃度でも平然としていられるんだから。私の部下も何人かは気分が悪くなったとか言っていたのに」


興味津々にアルラをジロジロ見るミーシャだったが、少し嫌がる素振りを見るとすぐに切り替えた。


「それで、これからどうするのですか?」

「そうね・・・アルラこの魔素濃度ってどれくらい濃いか分かる?」

「え?・・・うーん、メリアス様の部屋と比べたら少し薄いくらいかと」

「・・・そ、そう。簡単にいうと1階層の50倍の魔素がここの結界の中で貯まっているの。普通の動物だったらおそらく3日ぐらいで魔物化が始まるわ」


平然と話すアルラに少し驚いたミーシャだったが、アルラに色々と説明をする。

元々ダンジョンには空気中に存在する魔素を吸収して薄める機能が備わっている。これは魔力を貯める目的と同時にダンジョンの中にいる生物に悪影響を出さないためである。


魔素の濃度が高い場合、発動する魔法の威力が上昇するメリットを持つが体内に取り込みすぎると害を及ぼすリスクを持つ。また魔に対する抗体を持たない動物、昆虫、植物などはこの魔素を貯めこむことで『魔物化』を引き起こす。


この世界で魔物が絶えず出没するのはこれが原因でもある。


「では、もう少し濃度を上げればもっと速く魔物化が進むのでは?」

「そうしたいのは山々だけど、大量の魔素を急激に与えると魔物化する前に死んでしまうのよ。だから少し時間をかけて実験することにしているわ。コウキ様もそういうのは望まれていないだろうし」


なるほどという風にアルラは関心しながらミーシャの話を聞いた。


「それじゃあさっそく動物たちの健康チェックをしますか」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


動物が運ばれてきた部屋に入るとメリアスの部下とミーシャの部下が白衣を着た姿で動物たちの健康状態をチェックしていた。アルラと同じ植人族もいれば、魔人族や天人族の姿もいる。


調査メンバーのリーダーらしき人物がミーシャに気づくと一礼して報告してきた。


「ミーシャ様、リストに載っていた動物全てチェックが完了しました。すでに魔物化の前兆が見られる個体がいくつかありましたが」

「そう、その動物たちは?」

「は、睡眠薬を投与して指定の飼育場に連れています」


ご苦労様という風にミーシャが微笑み、リーダーの顔は少し緩みだす。


「アルラ、せっかくだからその動物を見て行きましょうか」

「は、はい!」


ミーシャについていくように隣の建物に入ると何頭かの馬や兎などが横たわって寝ていた。


「ふむ・・・魔素の巡回は上手く行っているようね・・この様子だと早く魔物化が進みそう」

「分かるのですか?」


そう尋ねると、ミーシャの瞳が金色に輝くのを見てすぐに理解した。


ミーシャの【固有スキル:心眼】はあらゆるものを見通せる能力。体内にめぐる魔力だけでなく、人の考え、感情などを見透かすことが可能。使い方次第では服だけ透かして見ることも、レントゲンのように骨だけを見ることもできる。


ミーシャはこのスキルを活用し、動物たちの健康状態を確認したのだ。


「・・・あら?」


ミーシャは奥で寝ている一頭の馬を見た。まだ生まれて間もないのかその大きさは他の馬と比べてかなり小さかった。


「このこ・・・まずいわね。かなり高い魔素の抗体を持っているみたい」

「抗体がある場合どうなるんのですか?」

「・・・簡単にいうと、ものすごく苦しむ」


簡潔すぎる説明だが大変なことだと理解したアルラ。


本来、動物には魔素への抗体は持たないのだ。しかし特別な訓練、環境の適応や遺伝的な方法で魔素への抗体を持つのも存在し、そういった動物は魔素の濃度が高い場所でも魔物化せず生活できるようになる。


だが、ここの魔素の濃度は非常に高いせいで抗体と魔物化が均衡した状態になってしまい、身体に大きな負担をかけてしまっているのだ。


「このままだと、魔物化する前に息絶えるわね」

「あの、どうすれば・・・魔素の濃度を下げればいいのでは?」

「もう遅いわね・・・この状態になったのならすぐに魔物化させるほうがいいわ・・・均衡を崩すくらいの膨大な魔力を一気に与えればすぐに魔物化できるけど・・・」

「では、進化みたいに直接ミーシャ様が魔力を与えるのですか?」

「いえ、魔物相手ならそれは可能ですが普通の動物では耐え切れません。それよりも効果的な方法があります。アルラ、たしか生産部門の管理倉庫に『マナの実』がありましたよね、あれを一つ持ってきてもらえませんか?」

「は、はい!」


ミーシャの指示にしたがってアルラは急いで『マナの実』を取りに向かった。


「はい、『マナの実』です。これで大丈夫なのですか?」

「ええ、『マナの実』は純粋な魔力が凝縮された果実。これを与えれば魔物化が・・・」


ミーシャが光る果実を馬に食べさせた瞬間、馬は青白く輝き出し二人の頭に声が響いた


魔物化に成功

レノ・ユニコーンが誕生しました


「レノ・・・古代言語で『神』を持つ馬・・・」


ビックリした様子でミーシャは白銀のたてがみを持つ馬を見た。さっきまでやせ細った姿は見る影もなく、大きさは普通の馬の二倍くらいになっている。体内の魔素を確認すると異常は無く、むしろ溢れ出る魔力でその実力を示している。


「良かった・・・これで魔物化は成功しましたね」

「え、ええ・・・ところでアルラ。あなたが持ってきた『マナの実』って本当に管理倉庫から取ってきたものですか?」

「え?いえ、もっと効果のある『マナの実』を知っていましたので、メリアス様から許可を貰って部屋に成っているのを持ってきました」


それを聞いた瞬間、ミーシャはやっちまったZEという風に頭は抑えた。


「・・・まさかメリアスさん直々に育てた『改良版マナの実』を与えるとは」


『改良版マナの実』、それはメリアスが何度も品種改良を行って栽培した『マナの実』である。その効果は普通の『マナの実』の比ではなく、果実数滴で伝説の霊薬エリクシールと同等の効果を持つのだ。当然蓄えられた魔力も膨大でどんな魔素の抗体でも無に等しくなるのだ。


だが、だからこそレノ・ユニコーンが誕生したことにある意味納得したミーシャだった。


「ああ、これコウキ様になんて報告しよう・・・絶対面倒なことになりそう」


元気になった、レノ・ユニコーンは嬉しそうにアルラにすすり、アルラも優しく撫でていた。


「まあ、いいわ。メリアスさんに任せるか・・・あの人が報告すれば難なく受け入れて貰えそうだし」


面倒事を他者に押し付けようと計画するミーシャ。彼女は知っていた、この魔物はフロアボスに匹敵するほどの強さをいずれ身に付けるということに。

今回はアルラとミーシャのお話でした。

そして、また新しい強キャラ(魔物)が登場しました。

ますますダンジョンの戦力は拡大していきます。

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