37話 攻略されそうなのでモンスターが頭を使いました
7階層
7階層に到着したヒュウ一行は現在、青い肌を持ったオーガ、見た目通りブルーオーガと呼ばれる魔物との戦闘に入っていた。
「ニック!セレス!先制攻撃だ!」
「「了解!」」
ヒュウの指示に従い二人の冒険者が急加速でブルーオーガの角に斬りかかる。かつてたった数体でとある街を半壊まで追い詰めたと言われているブルーオーガ。強靭な肉体は体当たりで城壁を破壊したと言われている。しかし、そんなブルーオーガにも『角』という弱点を持っていた。
切りつけられた角は折れることも無く傷一つつかなかったが、衝撃を与えたことでブルーオーガはよろめきだず。ブルーオーガの弱点、それは角に衝撃を与えることで脳震盪を起こす。
「よし、たたみかけろ」
ヒュウの号令と共に残りの冒険者たちが一斉に襲いかかる。さすがのブルーオーガも実力ある冒険者が束になってかかればひとたまりもない。
力尽きたブルーオーガはそのままドロップアイテムを残して光の粒子となって消えた。
「気を抜くな、援軍が無いかを確認しろ!」
冒険者たちが歓声をあげるもの、ヒュウの叫びで警戒心を最大限まで高めあたりを見始めた。
「前方、敵はありません!」
「後方も同じです!」
索敵スキルに優れた冒険者からの確認を取った後、ようやく警戒を解きドロップアイテムを確認した。
「ヒュウ様、ドロップアイテムは鑑定の結果宝石類でした」
「分かった・・・じゃあ金は安全エリアで分配をするぞ」
ヒュウは冒険者同士が組むことになった時あるルールを決めた。それはドロップアイテムが宝石類や換金用の物だった時、安全エリアでヒュウが買い取りそのお金を全員に分配することだった。
もちろんその宝石が欲しいという冒険者もいた場合は交渉などが認められるが、武器や貴重な物では無い限りお金がすぐ手に入るのならそちらの方が揉め事は少ないと理解していた。
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管理室
「だいぶ、冒険者たちの動きが良くなってきましたね。あのブルーオーガを脱落者無しで仕留めるとは」
「ブルーオーガの弱点を知っていたのが大きなポイントだね。ヒュウはそれを知っていたから一番俊敏な冒険者たちに先制攻撃を仕掛けたんだ」
いつものように管理室には大量のモニターでダンジョンにいる冒険者たちを監視していたがここ最近はヒュウたち、最前線組の動きに注目していた。俺は司令官のような少し立派な椅子に腰掛けながら隣にいるエイミィと話し合っていた。
「しかし、宝石とか全部買い取るとか、ヒュウって結構金持ちなんだな」
「王国騎士団の団長というのもありますが。この世界では銀行というものは存在しませんからね。自分の貯金全てがあのモニターに入っています」
この世界のお金の貸し借りがどうなっているのかは知らないけど、モニターに入っているお金は絶対に盗まれる心配は無いからね。それのおかげで脱落した冒険者たちから吸い取るお金も結構バカにならないのだ。もし銀行とか作られたらその時はまた別の対策を考えるまでだけど。
「最前線組、もうすぐで安全エリアに到着します」
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7階層
「や、やっとたどり着いた」
「ブルーオーガに遭遇した時は終わりかと思ったが意外と何とかなったな」
安全エリアに到着すると冒険者たちは駆け足で指定されたエリアに入り安堵の表情を見せて力が抜けたように座り込んだ。
安全エリアはダンジョンの中にあるモンスター不可侵エリア。壁の色がダンジョンと異なるため一目瞭然なのだ。更に目印としてダンジョンの入り口まで転送できる魔法陣が描かれている。
「よーし、今日の攻略はここまでにしよう。それじゃあ今日の戦利品を取り出すぞ」
ヒュウは鞄から今日の戦利品を一つずつ取り出した。大半は鉱石だったが中には拳サイズの原石、武器や鎧などもある。
マジックアイテム:マジックバッグ
異空間とつながっている魔法の鞄。サイズによって収納できる容量が変わる。その他、温度調整機能、時間停止機能などもついたのも存在する。
「相変わらず、便利なバッグですねどれくらい入るのですか?」
「そうだな。大型コンテナ船並の容量はあるな」
「コンテナ?」
何のことか分からないが、とにかくかなりの容量が入るのは理解できたみたいだ。
宝石類を全てお金に変えた後、ヒュウは平均にして全員にお金を支払い、武器などはお互いに話し合って誰が装備するかを決めていた。
「しかし、ヒュウさんがいて本当に助かりましたよ。俺達これまで何度もここに来ているんですが、いつも3階辺りで負けてしまうんですよね」
「そうそう、初めて挑んだ時は刀を持ったオーガにやられてな・・あれはかなり驚いたよ」
ヒュウと同行している二人組の冒険者、ニックとセレス。このダンジョンが開催された時から挑んでいる冒険者でこれまでも敗北はしているが、戦利品も手に入れてなんとか利益を出している。
実力もレベル20台後半、騎士団などに所属していないでこのレベルはかなりの実力者に分類できる。もちろん、レベル50を超えているヒュウにとっては赤子同然ではあるが。彼らを含めヒュウに同行している冒険者は平均にして30前後、連携すればなんとかレアモンスターも倒せるくらいの実力だ。
「このダンジョンに生息するモンスターの強さは明らかに冒険者より上だ。だが、戦い方次第ではブルーオーガの時のように格上にも勝てる。要は戦術が鍵を握るんだ。今までの冒険者が脱落しているのはそういうところが欠落しているからだ。しっかりと連携が取れるようになれればもっと上の階にいけるだろう」
ヒュウのダンジョン講義はその後も続くのであった
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管理室
「この様子だと7層も突破されそうだね」
「そうですね。あのヒュウが中心となって冒険者たちが上手く統率できているみたいですね。堕天しても英雄の仲間だけはありますね」
お互い感想を述べながらこれからの彼らの攻略を楽しみにしていた。
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7層 翌日
「さて、朝食も済ませたし攻略を再開するか」
朝食はドロップアイテムの肉から作った簡単なハムサンド。火属性魔法を使って軽く炙った肉を挟んだかでの物だが、意外と美味い。
警戒をしながら進んでいくと巨大なカマキリモンスターがやってくる
ジャイアント マンティス レベル45
ジャイアント マンティス レベル45
ポイズン G. マンティス レベル47
「ジャイアントマンティス・・・数は3。やつのカマと牙に気をつけろ!特に赤いやつは致死性の猛毒を持っている!」
「よっしゃ!なら先にアイツを潰すぞ」
気合の入った冒険者が手に持った大鎚でジャイアントマンティスに殴りかかる。
バランスを崩しジャイアントマンティスが倒れ数人の冒険者たちが攻めるが、ジャイアントマンティスが倒れた真上・・・つまり天井に魔法陣トラップが仕掛けられているのを見つけたヒュウは慌てて叫ぶ
「やばい!下がれ!」
だがすでに遅い、ポイズン G. マンティスが倒れた真上から鋭い岩が落下してきた。
土属性魔法:シャープロックブラスト
鋭い岩はポイズン G. マンティスを貫く。言葉でいえばトラップがモンスターごと巻き込んだかのように言えるが最悪なのはここからだった。
「うぉ・・危な・・・(ぷじゅう)・・・え?」
ポイズン G. マンティスが持つ毒袋、それが岩によって破裂したのだ。毒は血と共に冒険者たちに降り注いだ。
一滴でも肌に触れれば大火傷、それを身体全体に浴びてしまってはもう助からない。トラップを避けた冒険者達も返り血までは防げず数名が光の粒子となって消えてしまった。
「こんなトラップもありかよ・・・くそ!全員!地面の血に気をつけて残りを撃破だ!」
ヒュウの言葉に集中力を高める冒険者。なんとかジャイアントマンティスを撃破に成功するヒュウ一行。
だが彼らが本当の地獄を見るのはこれからだった。
第7層の生存冒険者数:16名 (寄生プレイヤー全滅)




