35話 合宿が終わったら分かれました
ギルドとの話し合いが終わった後、俺達は別荘に戻り会議を行った。
第5回ダンジョン合宿メンバー 会議
アイテムポーチからホワイトボードを取り出し、いつものみたいに会議を行う。
「それじゃあ、これから合宿メンバーの会議を行う。皆、この3週間でそれぞれの成果を教えてくれ」
合宿が行われてから既に3週間・・・かなり長くここに滞在したなという気分はあるが、実に有意義な日々だったと思う。
「では、まず自分から。自分は今回の合宿で【料理スキル】がレベル4まで上がりました。特にゴリランチで働いたことでスキルとは別に様々な料理を作れるようになりました」
そうだ、ジョージは当初と比べて料理の品質が桁違いに上がっていた。パワーレべリングというべきか、現場で学ぶことで独学よりもはるかに良い経験をしたはず。
「そうだな、お前の料理のクォリティが上がっているのは食事をしている俺達がよく分かる。よくここまで上手になったな」
「次は私ですね。市場を見たときから思っていたのですが、やはり家具の奥深さを感じました。特に魔法具を組み合わせたものは素晴らしいと感じました。是非ダンジョンに戻ったら作らせたいと思います」
マリーは合宿の殆ど市場で家具を見ることに時間を費やしていた。時々テスラと一緒にトレスアールさんの自宅に行っては家の内装や構造などを聞いたりするなど勉強熱心だった。
「私も今回の合宿で多くのことを学ばせていただきました。ダンジョンでは家を一から作りましたが、この街に来て自分の視野が広まった気がします。特にあのギルドの建物の構造は実に興味深かったです」
テスラは装飾など細かい技術を身に付けたのが分かる。この別荘もあのオンボロ状態からこんな立派な内装に作り変えたのだ。彼女のきめ細かな作業がよく分かる。
「あたしは【裁縫スキル】がレベル3になりました・・・ここに来て色んな服とか見れたおかげで、もっと作りたいと思いました」
プラムはまじめに低ランクからクエストをコツコツをこなしていった。以前仕立てギルドのクエストを見に行ったことがあるが、クエストの殆どが染色用の素材集めや簡単な作業で正直スキルのレベル上げには向いていなかった。
そんな彼女が何故レベル3まで上がったかというと・・・・
「やっぱあの機織機のおかげかな?」
俺がプラムに買ってあげたやや高い機織機。プラムは別荘に戻ってからも夜な夜な機織機で練習をしていた。そのおかげもあってか、彼女の【裁縫スキル】、【仕立てスキル】の経験値がかなり上がっている。
「プラムも良く頑張った。Cランクに上がったしこれから色んな物が作れるはずだ」
「はい!」
プラムが元気欲返事をして、トリを決めるのが一番の出世頭
「ワイト・・・お前の報告はなんだ?」
ワイトの成長、それはこの場にいるものは誰もが分かっている。でも、彼から直接聞きたい、そう考えていた。
「今回の合宿で、僕はトーマスさんという鍛冶師に弟子入りしました。鍛冶スキルは6に上がって、今はトーマスさんと一緒に武器を作っています」
全員が「おおぉ」という反応をする・・・ワザとらしいが、嬉しいのは確かだ。
伝説の鍛冶師とも呼ばれた人物に認められ弟子入り(半ば無理やり)したワイト。スキル6と言えば職人クラスの中でトップに入る実力。まだ子供なのにこの才能・・・正直羨ましいと思う。
「さて、皆の嬉しい報告を聞いた後だが、ここで本題。これからどうするかだ・・・」
合宿は約1ヶ月と計画をしており、俺は近いうちに戻らないといけない。出来れば合宿メンバーたちも戻って他の住民たちに技術を教える役目を任せたいが、今回ギルドから今後の活躍を期待されるようになった。
ワイトはこのまま別荘に残ってトーマスさんの弟子として働くのが決定しているが、他のメンバー達はどうするかだ。
「・・・コウキ様、自分もここに残ってもいいでしょうか?ここで働いて思ったのですがまだまだここで吸収できるものがあると思ったのです」
「あたしも、もっと色んなのを作りたいと思いました!」
「私もまだまだ色んな技術があると感じました・・・出来ればここに残りたいかと思います。」
ジョージ、プラム、テスラはこのまま残ってさらなる技術向上を目指す方針でいた。
「・・・私は一度コウキ様と一緒にダンジョンに戻ります。ゾア様に今回の魔法具を使った家具を開発できないかを相談したいので。その後、再びここに来ようかと思います」
マリーは一度戻って報告した後に戻る予定だ。魔法具の開発、確かにそのデータは街に持ち帰りたい。
「・・・分かった。テスラ、お前にはこの別荘の管理を任せる。ジョージ、プラム、ワイトもこれからもっと勉強に励め」
「「「はい!」」」
「マリーは戻った後、自分が学んだことを活かして町の発展に繋げてくれ」
「かしこまりました」
さて・・・今回の合宿で思った以上に成果を出したわけだ。思った終わり方ではないが、これはこれでありかと思った。合宿の効果はしっかり出ているのが分かったし、ここを任せられる者もいるからいつでも来れる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜
「エイミィ、俺だ光輝だ。今いいか?」
『やっほー、光輝。久しぶりだね、合宿の方はどんな感じ?』
画面に映るお気楽な神、エイミィが楽しそうに手を振っているのが見える。
「ああ、皆スキルのレベルが上がったり良い結果を残してくれた。殆どがここに残るがデータとかはしっかりと纏めたから住民の役に立つよ」
『へぇ・・・スキルのレベルを上げるのって結構大変なんだけどね。皆優秀なんだろうね』
「ダンジョンの方はどんな感じだ?タマモから定期的に連絡は来ているが、お前の視点から見てどうだ?」
『ダンジョンは平常運転。今やっと5階層目に入った冒険者が現れたところかな?私を狙う者もいるけど全員が返り討ちされている』
ダンジョンがオープンしたから3ヶ月が経とうとしてまだ5階・・・ヒュウが登場すれば多分グラムの初の挑戦者になりそうだ。やはり未だにエイミィを狙う奴がいるみたいだが、今のところ危険は無さそうだな。
「そうか、グラムに伝えておいてくれないか。近いうちに強敵が現れるかもと」
『え?もしかして物凄いヒトが挑んでくるの?そのヒト、私のことを悪用するようなヒト?』
「いや、才の左腕(?)と言われているヒュウ・ガカロってヒトだ・・・褐色肌のスポーツマンタイプのイケメン。見た感じダンジョンで実力を試す感じだったぞ」
『ヒュウ・ガカロ・・・・ああ!あいつじゃん!』
ヒュウの名前を聞いた瞬間、エイミィは嫌そうな顔をした
「エイミィ知り合いなのか?・・・そういえば、お前才の魔王討伐に手を貸していたな。その時の知り合いか?」
『いや、それ以前の知り合い・・・ヒュウは私と同じ3大神の一柱、シンの部下』
・・え?
「は?何で神の部下がここにいるんだよ?!ってか、あの人才の仲間だろ?」
『・・・色々と事情があるのよ・・・こうなったらフロアボス全員でで彼を迎え撃つわよ!』
「やめい!あの人が挑むのはもう少し先だろうから、その前にダンジョンに戻るよ。事情とかは後で聞く。フロアボスには変な命令を出すなよ」
『分かったわ・・・でもなるべく早く帰ってきてよ』
「あいよ、面白いもの手に入ったしちょっと試したいこともあるからな」
『ふふ、楽しみにしているね』
・・・・・・・・・
数日後、ヒュウがダンジョンに向かったと聞き俺達もダンジョンに帰った。
エドには事前に連絡を入れ、ダンジョンへとつなぐ扉を用意してもらい無事に帰宅。マリーはゾアに纏めたデータを渡すために向かい、俺はすぐに管理室に向かった。
「コウキ様、お帰りなさいませ」
管理室で出迎えてくれたのはタマモだった。以前よりもハキハキした様子でとても嬉しそうな様子だった。
「ただいま、皆。ダンジョンはどんな感じだ?」
「はい、コウキ様から連絡があったとおり、1人だけ異常に強い冒険者が現れました。現在第一階層でオークジェネラルと戦闘しています」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
1階層
「おらおらおら!邪魔だこの豚野郎!」
「ぶもおおおお!」
・・・・・・・・・・・
管理室
映像を見るとヒュウの両腕には巨大なトンファー・・・みたいな盾?でオークジェネラルを殴り飛ばしている。
「オークジェネラルをたった一人で撃破するなんて始めてみました」
「ああいうのをバケモノというのでしょうか?」
管理室のメンバー達はヒュウの戦闘に釘付けにされ、感想を溢している
「テオ王国、第三騎士団の団長、ヒュウ・ガカロだ。あいつのデータは取っているな?」
「はい、もちろんです」
タマモは抜かりなくと言う風に自身持って言った。
本当、優秀な部下だな。
「オークジェネラルが撃破されました・・・ドロップアイテムはオークシミターのようです」
オークジェネラルが持っていた武器が落とされたか。しかし、あのオークジェネラルを倒して疲れを見せていないとか・・・これは面白そうだ。
その後、ヒュウの快進撃は続く。一日で2階層がやっとだったダンジョンを彼は最短記録で3階まで昇り、安全エリアで休息を取る。多分、今日の彼の戦利品は過去の冒険者の中で最高だと思う。
「なんというかあいつこのダンジョンの戦い方に馴れていないか?」
「コウキ様もそう思わられますか?確かに彼の行動は行き当たりばったりの感じはしませんでした。まるで、ダンジョンで何年も戦ってきたかの『ダンジョンの戦い方を知っていて当然です』・・・エイミィ様?」
振り向くと涼しげな顔・・・女神モードで映像を見ていた。
「知っているってどういう意味だ?」
「ヒュウはかつてコウキがいた世界で暮らしていたことがあります・・・本来神の使いである天使が異世界の人間界に長くいることは禁じられているのですが、娯楽にハマッてしまい堕落した生活を送り文字通り堕天した過去があります。おそらくその時の娯楽の知識を活かしているのかと思います」
何その駄天使?つまり、遊びすぎて堕天した天使ってこと?一気にあの人の株が下がったな。
「ってことは、あの人はゲームのノウハウを熟知しているってことか?」
「そういうことになります」
こりゃ、思った以上に強敵になりそうだ・・・・




